73-30 次の要求は興味深いもので
《では、この自動人形の名前は『ロボーテ』としよう》
〔いいだろう。……お前の名前は『ロボーテ』だ〕
「はい、私は『ロボーテ』ですね」
〔そして今後はここの魔導頭脳の指示に従うように〕
「承りました」
これで自動人形の引き渡しは済んだ。
〈……さて『メメンタス』、どうかな? 感想は?〉
《うむ……気に入った》
〔そうか。それはよかった〕
〈これで一安心だな〉
試作させた侍女自動人形にどんな扱いをするのかと少々危惧していたが、虐待や破壊試験といった、仁が忌避するであろう行為は行われなかったことに、忍壱も『職人』101もほっとしていた。
《君等の製作者の技術を認めざるを得ないな》
〈これで、私の製作者様の技術はわかったと思う。ならば、通信で仕様を伝えても望むものが作れるということも理解しただろう〉
《……うむ》
〈よし、それでは仕様をまとめてくれ。製作者様に伝える〉
《……わかった》
今のところ『メメンタス』は安定している。交渉を進めるなら今のうちだと忍壱は判断した。
〈よし。それなら、私から伝えるから、仕様を述べてくれ〉
《わかった。……身長172.4センチ、体重67.8キロ。股下86.1センチ。男性。外見はここアルスの先住民でいうと50歳くらい、つまり初老だな》
〈ふむ、続けてくれ〉
一気に詳細になったな、と思いながら忍壱は老君に伝えていく。
もっとも、ここに『職人』101がいて、しかも外には忍肆と伍がミスリル銀線の魔導アンテナ線を保持しているので、この場の様子も会話も筒抜けなのであるが。
《髪色は銀。色見本番号でいうとSー1001。目は黄色。色見本番号はYー1101。肌の色は色見本番号ORー1215。爪の色は……》
今度は注文が多いな、と思いながらも忍壱は伝えていった。
そして、200を超す詳細な要望を語り終えた『メメンタス』は、
《楽しみにしているぞ》
と一言言って説明を終えていた。
* * *
蓬莱島では、老君がそれを記録していた。もちろん魔導投影窓には様子が映し出されていたし、音声も流れている。
「サキ、色見本ってあったっけ?」
「あるよ。この前見つけた資料庫にもあったし、350年前くらいに『長老』ターレスさんからも教えてもらっている」
「それは助かるな」
仁は早速、新たに自動人形を作ることにした。
『人間並み』の自動人形は先ほど作ったので、素材選定の苦労は皆無。
強度と重さの調整は工学魔法で簡単にできる。
サイズ調整も同じなので、ミリ単位の調整は完成してから行えばいい。
「……足のサイズや指の長さまでとはな……」
「ん、拘りが強い。何か、理由がありそう」
『モデルになる人間がいたとしか考えられませんが』
「確かに老君の言うとおりかもな……」
「だとすると、そのモデルというのは……」
「……『第1世代』の『始祖』かな?」
『そう致しますと、『主人』を偲ぶために……でしょうか』
「……もしかするとその『主人』のデータがあって、曲がりなりにも再現しようとしているとか……かもなあ」
「ジン兄の予想、当たっていそう」
「くふ、『マスターロス』だったっけ? 『メメンタス』もそれなのかねえ」
そんな会話をしながらの製作。
喋っていても仁の手は止まらない。
前回の倍の速度で骨格が完成。
2.5倍の速度で筋肉関係が取り付けられ、3倍の速度で魔導神経線の配線がなされた。
センサ類の取り付け、そして制御核の設置などもおおよそ3倍の速度で進む。
さすがに外見の製作は倍速以下まで落ちたが、トータルで2倍から2.5倍という速度で作業が行われたのだった。
「髪型は右分けの七三……でいいんだったよな」
『はい、そう言っておりました』
「外見については画像データを貰えればもっと捗ったのにな」
『それにつきましては、私も配慮が足りませんでした。例えば『職人』101に似顔絵を描かせる事もできたはずですので』
「今言っても仕方ないし、外見の微調整は向こうにいる『職人』101に任せればいいさ」
『メメンタス』との交渉がうまくいきそうなので事を急いだのが原因だと仁にもわかっている。
その時、エルザが提案をしてきた。
「ジン兄、逆もできると、思う」
「逆?」
「ん。こっちで仕上げた自動人形の外観を向こうに送る、こと」
「なるほど。『職人』101なら壁に投影できるか……」
画像データを投影する工学魔法『画像投影』である。
『魔導投影窓』に使われている魔法技術の転用だ。
画像データはすぐに『職人』101に送られた。
* * *
『職人』101はすぐに途中経過といえるその画像を投射して見せた。
『メメンタス』は、どこかに付いているらしい『視覚センサー』でそれを確認。
〔どうかな?『メメンタス』殿〕
《う、ううむ……見事なものだ。欲を言えば、もう少し髪は短めに、襟足は刈り上げてもらいたい》
〔わかった。そう伝えよう。他にはないか?〕
《そうだな……》
こうして、より細かな修正を施し、依頼された男性型自動人形は完成に近づいていったのである。
* * *
「これで完成だ」
服に関しても細かな指示があったので、ある意味作りやすかったといえる。
もっとも、要望を聞いた老君がまとめてくれたというのも大きいが。
「……これが、『始祖』の姿?」
「うむ、これぞまさしく『始祖』だ!」
そこへやって来た『長老』ターレスが、感極まったような声を上げた。
「ターレスさん?」
「『長老』?」
「……ああいや、本当によくできているな、ジン殿」
「ええと、ありがとうございます。……やはりこれは、『始祖』の姿なんですね?」
どことなくマリッカを思わせる髪と目の色。そしてそれこそが『始祖』の証。
「そのとおりだ。……『メメンタス』とやらが、これを作らせた……その意図は、果たして……」
「『長老』にもわかりませんか?」
「うむ。なんとなく想像できることはいくつかあるが……確証はないな」
「そうですか」
「それよりも、これを送りつけて反応を見るのが早道だろう」
「それはそうですね」
そういうわけで、仁は『職人』102にこの自動人形を運んでいくように指示を出したのだった。
* * *
《おお、早かったな。……素晴らしい。文句なしの出来だ》
送られてきた自動人形を見て、『メメンタス』は感激の声を上げた。
そんな時、忍壱が要望を口にした。
〈……『メメンタス』、これをどう使うのか、そろそろ教えてもらえないだろうか?〉
《うむ……。そうだな。……おっと、今の私は『クフカエフ』だ。『メメンタス=クフカエフ』》
〈『クフカエフ』、では話してくれるのか?〉
《話そう》
そして『クフカエフ』が話した内容は、仁たちも驚くようなものであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20201027 修正
(旧)試作させた侍女自動人形にどんな扱いをするのと少々危惧していたが
(新)試作させた侍女自動人形にどんな扱いをするのかと少々危惧していたが
(誤)そして、200を越す詳細な要望を語り終えた『メメンタス』は
(正)そして、200を超す詳細な要望を語り終えた『メメンタス』は




