73-28 仁にも苦手な分野はあるもので
仁と老君は、『メメンタス』の要求である『忍部隊の製作者に会いたい』というものをそのまま認めることはできないので、何か妥協案はないかと考えている。
「……まず、どうしてそこまで自動人形に拘るのかな?」
『はい、御主人様。そこが肝心な点だと思います。ですが、情報がないので判断ができません』
「そうだなあ」
『メメンタス』は、意図してそこをぼかしているようだ、と仁は思っている。
そのため、真の意図が掴めずにいるのだ。
「だが、どうして人間並みの性能に拘るんだろうな?」
『そこも不明な点ですね。……人間社会を再現する、というならあれほど不合格品を大量に出す必要はありませんし』
「うん、そうだよなあ」
人間のサポートをさせるためなら、人間より力や素早さがあっても悪いことはない、と仁は思っている。
「もしかして、『反乱』を恐れている、とか?」
『その可能性はないとは言いませんが、それなら他の手段もあると思います』
「そうだよな。非常停止装置とかな……」
考えても、やはり情報不足のため、これといった結論は出せない仁たちなのであった。
『御主人様、そうしますと、1つ提案があります』
「どんな? 聞かせてくれ」
『はい。……『忍壱』を通じて、『メメンタス』のリクエストを聞き、それに従って自動人形を1体作ってみせるのです』
「なるほどな……」
『御主人様でしたら可能でしょう?』
「それはできると思うが……そうすると、様子がこっちに筒抜けなこともバレるぞ」
『そこはうまくやります』
「そうか。それを提案してみるかな」
このままでは事態が進展しないため、仁としても老君の提案は魅力的であった。
『メメンタス』がどんなスペックを要求してくるのか、興味もあったのだ。
* * *
この作戦は、すぐに忍壱へと伝えられた。
〈……『メメンタス=クフカエフ』、1つ提案があるのだが〉
《聞こう》
〈感謝する。……私の製作者様と連絡を取り、そちらの要求する項目を伝え、自動人形を作ってもらう、というのはどうだろう?〉
《悪くはない。だが、いくつか問題があるぞ。まず、どうやって連絡を取るのだ?》
〈この部屋から地上まで魔導アンテナ線を引ければ可能だ〉
《……ふむ、なるほど。……では、口頭だけで性能について伝えきれるものだろうか?》
〈それはやってみなければわからないが、私の製作者様ならできると信じている〉
《なるほどな》
〈やってみて損はないと思うが?〉
これで乗ってこなければ、また別の作戦を考案しなければならないだろうなと忍壱も老君も思ったが、
《よかろう、やるだけやってみようではないか》
と、『メメンタス=クフカエフ』は承知したのであった。
〈では、まずは魔導アンテナ線だが……〉
《……それなら、ここのアンテナを共用できないか?》
『メメンタス=クフカエフ』は、侍女自動人形に命じ、部屋の一角にある装置を指し示した。
〈これは……通信設備か?〉
《そうとも言える。とにかく、この基地の上、地表まで伸びた魔導ケーブル線が繋がっていることは確かだ》
〈試してもいいのか?〉
《構わない》
そこで忍壱は、弐と参に命じて侍女自動人形を警戒させつつ、その装置を確認してみた。
体格の小ささでかなり苦労したが、間違いなくその装置が通信設備であることは確認できた。
試しに、どうでもいい通信をごく短時間発信したところ、間違いなく老君は傍受できたようなので、
〈確認した。手を加えさせてもらう〉
と一言断って通信設備を調整していく。
およそ15分で改造は完了した。
〈終わった〉
《……ほう、それなりの技術も有するか。ますますもって君の製作者に興味が湧いた》
〈それはこれからの展開次第だ。まずは連絡をとってみよう〉
《それは楽しみだ》
とういうわけで忍壱は、堂々と通信を開始した。
ちなみに『指向性』のある魔力波は使わないこと、ラシール大陸にいる『ペガサス2』を中継基地に使うことで蓬莱島の位置を特定されないようにしている。
「コチラシノビイチ。ロークン、オウトウセヨ」
同時に自前の内蔵魔素通信機でも、『問題がなければ作戦の遂行を行おう』と通信を送る。もちろんこちらのほうが情報量は圧倒的に多い。
『こちら老君。感度良好。状況を説明されたし』
「シノビイチリョウカイ。ゲンザイメメンタスノキョカヲエ…………」
忍壱は、聞こえよがしに老君との通話を行う。内容としては、仁に自動人形を作ってもらえることになった、ということを匂わせておく。
〈……聞いてのとおりだ。要望を伝えてみてくれ〉
《……そうだな。……試作してもらう、ということでいいか?》
〈構わない〉
《よし。……身長は155センチ、中肉中背、外見はアルス先住民でいう20歳程度、性別女性。用途、侍女。……これでまず作ってもらえるかな?》
〈性能的には人間並み、でよいのだな?〉
《そういうことだ》
〈情報が不十分だが、指示されていない部分は適宜補完してよいということか?〉
《そうだ。その補完のレベルも判断材料にしたいと思っている》
〈わかった〉
* * *
『……だ、そうです、御主人様』
「なるほど、本当に腕試し、ということなんだな」
『はい。ここで『メメンタス』を納得させることができれば、以降の交渉が有利になると考えられます』
「わかった。早速作ってみよう」
仁は工房に向かった。
「ええと、身長は155センチ、中肉中背……か」
そこへエルザもやって来る。
「ジン兄、手伝う?」
「そうだな。女性型ということだから、外見の仕上げを手伝ってくれ」
「ん、わかった」
そういうわけで仁とエルザは手分けして自動人形を作ることになった。
「人間並みのスペックって、結構面倒なんだよな」
「ん、わかる」
「以前、マルキタスたちのボディを作ったけど、今ひとつ納得がいかなかったんだ」
「ジン兄は拘るから」
「今回はあれを踏まえて、より『らしく』したいな」
「具体的には?」
「軽銀じゃ強すぎるから、アルミ系かなあ……」
骨格には軽銀ではなくアルミニウム合金を使うことを検討する仁。
ジュラルミン、A2017という番号で呼ばれるもの。硬いがやや脆い性質がある。
銅を含むアルミは、強度は高くなるが塑性加工しづらくなる(例えば、曲げ加工をすると折損しやすい)。
「これで中空の構造にすればいいんじゃないかな?」
「……多分それでも、人間の骨より丈夫になりそう」
「じゃあできるだけ薄く作るか」
「こんどは人間の骨より軽くなると思う」
「そうか……」
ロースペックな自動人形の製作が意外と難しいことを思い知った仁である。
「くふ、ボクの出番かな?」
「あ、サキ姉」
仁が材料の選定で頭を悩ませていると、サキも顔を出した。
「セラミック系の材料を使えばいいさ」
「やっぱりそうなるか……」
仁としては金属系には馴染みがあるが、あまりセラミック(焼結系素材)には馴染みがなかったのである。
「ボクに任せておくれ」
そして、3人での共同製作が始まる。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日10月25日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20201025 修正
(旧)体格の小ささでかなり苦労したが、間違いなくその施設が通信設備であることは確認できた。
(新)体格の小ささでかなり苦労したが、間違いなくその装置が通信設備であることは確認できた。
20220323 修正
(旧)
「人間並みのスペックって、結構面倒なんだよな」
「ん、わかる」
(新)
「人間並みのスペックって、結構面倒なんだよな」
「ん、わかる」
「以前、マルキタスたちのボディを作ったけど、今ひとつ納得がいかなかったんだ」
「ジン兄は拘るから」
「今回はあれを踏まえて、より『らしく』したいな」
「具体的には?」




