73-24 またしても、思いも掛けぬものが見つかる
『忍部隊』は、謎の基地における自動人形工場、その筋肉製造ラインを観察することにした。
〈うむ……これは?〉
〈生体素材ですね〉
〈元は何だったのだろう?〉
鉱石は調査済みであったが、生体素材は未調査であった。
とはいえ、最優先事項はこの基地もしくは施設の正体解明である。
〈残念だが、この製造ラインの様子を報告したら、ここを管理する魔導頭脳を探しに行くぞ〉
〈了解〉
そしてしばらく、筋肉組織を『編み上げる』工程と、それを魔法処理する工程、そして骨格に取り付ける工程を観察した『忍部隊』は、そっとその工場を後にしたのであった。
* * *
「……うーん……」
蓬莱島では『忍部隊』が送ってきた映像を見て、仁が唸っていた。
「……ああいう自動人形の作り方もあるのか……」
いや、仁としても『流れ作業』や『分業』は知っている。
そして、ゴーレムを量産するときは礼子や『職人』たちの力を借り、分業で作り上げていく。
だがそれでも、今見た光景ほどには『単なる作業化』はしていないつもりであった。
例えば、爪。
取り付ける際に工学魔法を使い、最適な大きさに加工しながら取り付けていく。
それが自己満足に過ぎないものだったとしても、なにがしかのこだわりは持ち続けたいと思う仁なのであった。
(そう、多忙な漫画家が、アシスタントに様々な作業を任せていたとしても最後のペン入れだけは自分の手で行うように……。ちょっと違うか)
仁が現代日本にいた頃から連載されているとあるマンガ。
作者の都合だか体調だかが原因で、ほぼ毎年のように休載され、いつ完結するのやら……という作品。
そして、その作者が、ペン入れだけは自分の手でやらねばという話を何かで読んだ……気がするのだった。
閑話休題。
「あれは……おそらく男性型の自動人形だな。執事か家宰に使うのかな?」
肉体労働には向かない体型だったので、仁はそう推測したのである。
「なんにせよ、同じ型の自動人形を量産して、何に使うんだろう?」
その呟きには老君が答えた。
『御主人様、以前『ジョナール基地』で、人の営みをゴーレムが模倣していたことがあったではないですか』
今現在マリッカの傘下に入り、『ジョナサン』と呼ばれている『統括管理魔導頭脳』が行っていたことである。
「ああ、そうだったな。……するとこの自動人形も、人の生活を再現するために作られているのだろうか」
『その可能性は高いかと』
「うーん……だとしたら、どこかにそうした『自動人形の町』があるはずだな」
『そういうことになりますね』
それについては『統括管理魔導頭脳』が見つかれば、おそらくはおのずと判明するだろうと老君は言った。
仁たちも賛成し、今しばらく『忍部隊』の活躍を見守ることにしたのである。
* * *
〈……さて、どうやら『統括管理魔導頭脳』はこの階層にはないようだ〉
〈確かに。……老君の『覗き見望遠鏡』では覗けないのでしょうか?〉
〈それは尋ねてみた。ここより下の階層は『魔法障壁』が展開されていて覗けないそうだ。だがそれゆえ、そのどこかに『統括管理魔導頭脳』があるに違いない〉
〈ですね〉
〈そして下へ行く階段の場所は教えてもらえた〉
〈おお、それは時間短縮になりますね〉
そういうわけで『忍部隊』は下の階層へ向かうべく、老君が『覗き見望遠鏡』で調べたこの階層のマップを参考に、階段を目指した。
〈マップがあると楽だな〉
〈だが、ここから下はそうはいかないぞ〉
が、通信手段だけは確保するため、前回礼子が取った方法……ミスリル銀線で『魔法障壁』を貫き、通信経路を確保する……を取ることにした。
蓬莱島から転送機で送られてきた極細のミスリル銀線を、『忍伍』が障壁の外で保持し、反対側つまり障壁の内側では『忍肆』が保持することで、蓬莱島との連絡手段を維持することになる。
そしてこの方法なら、『忍壱』の視覚情報と聴覚情報を『忍肆』に送り、それをミスリル銀線を介して『忍伍』に送る。
『忍伍』はその情報を蓬莱島に送る……これで、『魔法障壁』内の詳細な様子を仁たちへ送ることができるわけだ。
〈では、頼むぞ〉
〈お任せください〉
これで、潜入した『忍部隊』で自由に動けるのは3体。とはいえ、今回の目的には十分だろうという判断から、老君は増援を送ることはしなかった。
もっとも、『魔法障壁』の手前までであれば、転送機によりいつでも増援を送り込めるわけだが。
3体は階段を下っていく。
〈階段の照明にも十分な光量があるところを見ると、普段から使用されているのだろうな〉
ゴーレムといえども、一定の明るさがあったほうが行動がしやすいのだ。
15メートルほど下ると1階層下に着いた。
〈階段はまだ下へと続いているが、どうするかな〉
〈『統括管理魔導頭脳』を目指すなら、下りましょう〉
〈それがよさそうだ〉
簡単な意思決定を行い、3体は更に階段を下っていく。
さらに2つの階層を経て、下りきった場所には扉が1つ。
調べてみるとロックは掛かっていないようだった。
〈だが、我々が開けるとどうなるか、それが問題だ〉
身長5センチの『忍部隊』であるから、扉を開けるには『力場発生器』を使う必要がある。
それを検知されないかという懸念だ。
〈この階段を使うゴーレムはいそうもないしな〉
〈そうですね〉
階段にうっすらとではあるがホコリが積もっていたことからもわかる。
〈扉付近に魔力反応はなし。今なら大丈夫でしょう〉
〈よし〉
先へ進まねば埒が明かないと、『力場発生器』を使って扉を開ける『忍部隊』。
具体的には、扉のノブやロック解除のツマミ位置まで『力場発生器』で浮かび上がり、身体を『力場発生器』で固定して開けるわけだ。
扉の向こう側には誰もいなかった。
〈通路は薄暗いな?〉
〈そうですね〉
これまでの階層と異なり、ここはあまり明るくなかった。
ということは、あまり利用する者がいないのだろうと忍壱は推測した。
〈『統括管理魔導頭脳』がある可能性が高いな〉
〈そうですね〉
3体となった『忍部隊』は、慎重に通路を進んでいく。
静かすぎるほどに、何の動きも感じられない。
〈まずは近場の部屋を見てみよう〉
通路の左右に扉がある。
その内部に魔力反応がないことを確認しつつ、扉の1つを開けてみると……。
〈何だ、ここは……?〉
そこには、異様な眺めが広がっていた。
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