73-23 思いがけないものを見つけてしまった
ちょっとだけグロい表現があるかもしれません
蓬莱島では、『忍部隊』から送られてきた、謎の存在が備蓄している資材の調査結果を検討していた。
『鉄鋼、銅、錫、亜鉛、軽銀、ミスリル銀が多く備蓄されているということです。レア素材としては、金、マンガン、ニッケル、バナジウム、モリブデン、クロム、水銀、アダマンタイトの順です』
「ふむ……銅と錫、それに亜鉛ということは青銅と真鍮用かな?」
「くふ、それに特殊鋼もしくは合金鋼も使っていそうだね」
『はい御主人様、サキさん、そのとおりだと思います。ただ水銀の使い途が少々不明です』
「そうだな。まさかめっきに使うわけでもないだろうし」
ここでエルザが意見を口にした。
「ジン兄、以前使い手がいた『魔水銀』にして使っている可能性は?」
『魔水銀』は水銀の魔力同位元素で、魔力との親和性が高く、『流体変形式動力』にはもってこいの素材である。
『流体変形式動力』は『変形』の魔法を応用したゴーレム動作方式だが、液状化させた素材を用いる。
運用する魔力が少なくて済む利点がある。
「いや、それにしては採掘量と備蓄量が少なすぎる」
「あ、確かに」
「くふ、既に使ってしまった可能性は?」
「ああ、サキの説もありうるか……」
『その辺は今後の情報待ちですね』
「そうなるな。引き続き『忍部隊』には頑張ってもらおう」
* * *
その『忍部隊』は、素材を運んできたゴーレムに付いて倉庫を出、別の部屋へと向かっていた。
〈この倉庫から素材を運び出したということは、工場へ向かう可能性が大だ〉
〈確かにそうですね〉
そういうわけで、期待を抱きつつ、『忍部隊』の5体は素材を運ぶゴーレムに付いて行った。
〈……む? どうやら当たりだな〉
〈そのようですね〉
素材を運ぶゴーレムは、大きな工場と思われる施設に入っていった。
〈……そういえば、ここがどこなのか不明だな〉
〈はい。ですが、老君は掴んでいるのでは?〉
〈それはそうだろう。『魔力探知機』がある。我々の魔力を探し出す時間もたっぷりあったしな〉
* * *
『忍壱』の言葉どおり、老君は『忍部隊』がどこにいるのか、見つけ出していた。
『御主人様、先程判明したことですが、『忍部隊』は今、『オエステ1』『オエステ2』『オエステ3』からさほど遠くない場所にいます』
「そう、か。……パンドール大陸じゃなかったか」
仁としては、パンドール大陸へ移住したという男女が作った基地ではないかと思っていたのだが、違ったようだ。
『はい。おそらくは『始祖』の『第1世代』の基地ではないでしょうか?』
「ああそういえば、子孫が誤った道を選んだときは修正しないといけないとかなんとか言っていたんだっけ?」
『概ねそういうことですね』
『オエステ1』の『統括管理魔導頭脳』の『モースク』と、『オエステ2』の『統括管理魔導頭脳』の『ルゥカー』から得た過去の情報を、老君がまとめた結果を仁たちも聞いたのである。
『そこには『第1世代』が全霊を込めた魔導頭脳があって、『オエステ3』を粛清したのでは』
「……ということは、『オエステ3』は何かまずいことをやったと?」
『はい、そう推測いたします』
「なるほどな。……そうすると『オエステ2』も危ないところだったか?」
『かもしれません』
老君は、『オエステ3』が暴走し、それを止めるために『謎の施設』が介入した、と考えたのである。
『もしかするとそれこそが『メメンタス』なのかもしれません』
「なるほどな」
それも、もう少し情報が集まらないと判断できない。
仁たちは『忍部隊』からの新たな情報を待つのであった。
* * *
素材を運ぶゴーレムの後を付け、工場らしい部屋に忍び込んだ5体。
〈やはり工場だったな〉
〈はい。しかし、何を作っているんでしょうね?〉
そこはたしかに工場であった。だが、期待したようにゴーレムを作っていたのではない。
〈……何の部品だろう?〉
『忍壱』には見当がつかなかった。それほどまでに、作られていたものは予想外だったのである。
その1つは、半透明の材質を使った、角の取れた楕円形とも長方形ともつかない形の板。厚みは0.5ミリほどか。
それはまるで……。
〈……爪?〉
〈みたいだな〉
〈こっちを見てください〉
〈これは……〉
〈……歯でしょうか?〉
人間の爪、そして歯に見えるものが作られていたのである。
〈こちらでは……髪の毛が作られています〉
〈こっちでは眼球らしきものが〉
そこから得られる結論は、もちろん……。
〈ここではおそらく人間そっくりの自動人形を作ろうとしているんだろうな〉
〈間違いないでしょうね〉
〈……しかも、『同じ容姿』だな〉
〈そこがなんとも歪ですね〉
まるで規格品を作るかのように、同じ形状の爪、歯、眼球などが量産されているのだ。
まともな神経をしていたら不気味だと感じるであろう。
〈おおよそ、50体分、か……〉
同じ容姿の自動人形50体。
その使用目的はいったい何か。忍壱にはわからなかった。
〈皮膚や骨格、筋肉はどうだろうか?〉
それを知ることで、自動人形の性能をある程度予測することができるのだ。
〈別の工場のようです。ここには見当たりません〉
〈そうか。組立工場が別にあるのだろうな〉
〈探しますか?〉
〈そうしよう〉
次の探索目標は自動人形の組立工場と決まった。
そこで、一旦素材置場へ戻り、別の工場へ向かうゴーレムを探すことにする。
2度、同じ工場へ向かうゴーレムだったが、3度めの正直というのか、
〈お、今度は違う工場へ向かうようだ〉
〈組立工場だといいですね〉
ということになった。
そして後を付けていくと……。
〈ふむ、ここでは骨格を作っているな〉
〈使われているのは軽銀ですね〉
〈あ、向こうでは筋肉を作っています〉
〈どれ、参考になるかもしれないからじっくり見させてもらおう〉
『忍壱』は仁たちが興味を持つであろうと考え、こういう自動人形に使われる筋肉組織についての情報を集めるべく、現場へ向かったのであった。
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