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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
73 メメンタス調査篇
2756/4397

73-22 いよいよ彼らの出番となる

 最も左の坑道。そこは最も規模の大きい坑道でもあった。

 ゆえに坑道も長く、入り組んでいる。

 2体は奥へ、奥へ。


〔む? ここは……〕

〔何か聞こえるぞ〕


 奥からかすかに物音がするのだ。

 ゴーレムの聴覚でやっと聞こえるほどのかすかな音。

 かなり小さい音か、あるいは遠く離れているのか……。

 『A』と『B』は身構え、慎重に進んでいった。


〔おお、これは……〕

〔……鉱夫ゴーレムか〕


 その坑道奥では、十数体の鉱夫ゴーレムがせっせと採掘を行っていたのである。

 採掘しているのは軽銀が主で、まれにアダマンタイトが採れているようだ。

 採掘した鉱石は転移魔法陣で運ばれていく。

 一見、おかしなところはない……ようだったが、『A』が異常に気付いた。


〔あの転移魔法陣の行き先は、この基地内ではないぞ?〕

〔何? ……むう、そのとおりだ。いったいどこへ……〕

〔……ここを荒らした敵の本拠地ではないのか?〕

〔そう考えるのが自然だな〕


 だが、それを確かめるすべはない。

 より正確に言うと、敵に気付かれずに確かめる術はない。


〔……せっかくの手掛かりなのだがな〕

〔致し方ない。ここはしばらくこのままにしておくとしよう〕


*   *   *


 『A』と『B』には敵に気付かれずに確かめる術はなかったが、蓬莱島では違う。


 『ここは、いよいよ『しのび部隊』を送り込みますか』

 鉱石の影に隠れ、謎の敵の本拠地に潜り込むことができるだろう、と老君は考えた。

 『オエステ基地』調査で活躍した彼らは今、現地付近で待機中の『ペガサス2』にいる。

 老君の要請に従い、彼らは『ペガサス2』に搭載された『転移門(ワープゲート)』を使い、蓬莱島に帰還した。


『新たな使命があります』


 老君は彼らに説明を行った。

 口頭ではなく『知識転写(トランスインフォ)』を使ったので一瞬で済む。


『……そういうわけです。無理はせず、調査を行ってください』

「了解」


 今回送り出されるのは『しのびいち』以下、までの5体。ろくからじゅうまでの5体は待機である。


『それでは、気を付けて』

「行ってまいります」


 『転送機』を使い、老君は『しのび部隊』を『オエステ3』地下の鉱山へと送り込んだのである。


*   *   *


〈ここが『オエステ3』地下だな〉

〈確かに鉱石が山と積まれていますね〉


 しのびいちたちは、少し離れたところから、採掘の様子を観察していた。


〈ふむ、一定量の鉱石が溜まったら転移魔法陣上に運ぶ。運んだゴーレムが転移魔法陣の外へ出たら、トリガーの魔力を与え、魔法陣を起動して鉱石を転送する。……こんな手順の繰り返しだな〉


 しのびいちは観察の末、結論を出す。


〈鉱石の搬入と転送の間に、4秒ほどのタイムラグがある。紛れ込むには十分だ〉

〈了解です〉


 しのびいちはそんな打ち合わせを行った。


〈よし、次のタイミングで鉱石に紛れるぞ。『不可視化(インビジブル)』は作動させておけ。それから『物理障壁(ソリッドバリア)』もだ〉

〈了解!〉


 簡単な打ち合わせ後、タイミングを見計らい、5体は鉱石と共に転移魔法陣に乗ったのであった。


*   *   *


 一瞬で視界が切り替わり、『しのび部隊』5体は、鉱石と共に広い倉庫内にいた。

 鉱石ごと運ばれてしまう前にその場を去り、壁際へ。

 壁際では観察しづらいが、ここは敵地である。まずは十分注意しながらそこで観察を行うことにした。


〈……転送されてきた鉱石を、ゴーレムが運んでいって仕分けする……か。普通の光景だな〉

〈ですが、そのゴーレム、4本腕ではないですよ〉

〈そのとおりだな。つまりここのゴーレムは、少なくとも『始祖(オリジン)』の『侵略派』ではないということになるな〉

〈設計者が違うという可能性もあります〉

〈そうだな。今から決めつけるのはよくないな〉


 そして『しのび部隊』は、位置を変えることにした。

 壁伝いに移動し、倉庫の反対側からの観察だ。


 それでも特に変わったものは確認されなかった。


〈よし、この倉庫を出よう。目指すは鉱石の運ばれていく先だ〉

〈おそらくは精錬場ですね〉

〈そうだ。そこからは精錬された金属が、貯蔵庫や加工場に運ばれていくだろう。その加工場を見つけるのだ〉

〈了解!〉


 鉱石を運んでいくゴーレムの後をつける『しのび部隊』は壁伝いに進んでいく。


〈ふむ、ここの通路は壁と天井が『白っぽい』な……〉

〈やはり『始祖(オリジン)』の『第1世代』が?〉

〈おそらくは……いやそれは、まだわからん〉


 結論を出すのはまだ早いと、しのびいちは己をいましめた。

 『白っぽい』だけで、『白い』というわけではないのだから。


*   *   *


「ふうん、『白っぽい』……か。なんとも判断に困る色だな」

『そうですね、御主人様(マイロード)


 実際に使われている色はやや灰色がかった白とつや消しの黒、それに銀灰色。

 全体的に見ると白っぽく見えるだけで、意図したものではないような気がする仁である。


「白っぽいほうが、照明効果が高いしな」


 自動車道路のトンネル内の壁も、白い方が明るく見えるのと同じだ。


「いずれにしても、『始祖(オリジン)』の様式のようでもあり、そうでもないようにも見えるな」

「……うむ、ジン殿に同感だ」


 『しのびいち』から送られてきた正体不明の敵の拠点内の画像を見た『長老』ターレスも、仁に同意した。


われが思うに、この様式は『始祖(オリジン)』の技術と文化を受けながら、それを発展、応用したものではないか」

「ははあ、なるほど」

『先入観なしに観察、分析するとそういう結論が出ますね』


 老君もまた、『長老』ターレスの意見に賛成した。


「子孫、弟子……みたいなものか」

「うむ、そう言ってもいいだろうな」

「その正体は……なんでしょう?」

「まだ情報が少なすぎてなんとも言えぬな」

「ですね……」


 仁たちは、もう少し様子を見ることにした……。


*   *   *


 『しのび部隊』が最初に辿り着いたのは資材の貯蔵庫だった。


〈ここはここで、得られる情報があるぞ〉


 未知の相手が、どのような素材を使っているのかを知ることができる、と『しのびいち』は言った。

 そこで、搬入と搬入の合間を利用して調査することになった。

 時間にしておよそ5分間。


〈4分で一旦調査を打ち切って奥の壁際に待避だ。いいな?〉

〈了解〉


 そして5体は倉庫内に散り、素材を調査していった。


 4分後。


〈どうだった? 私のところは鉄鋼系のインゴットばかりだったが〉

〈私のところは軽銀でした〉

〈私が調べたところも軽銀でした〉

〈ミスリル銀とアダマンタイトを確認しました〉

〈銅、錫、亜鉛、鉛を確認しました〉


〈なるほど。あと2回、調査するぞ〉

〈了解〉


 『しのび部隊』の調査は順調である。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20201019 修正

(誤)〈4分で一旦調査を打ち切って奥の壁際に対比だ。いいな?〉

(正)〈4分で一旦調査を打ち切って奥の壁際に待避だ。いいな?〉

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― 新着の感想 ―
[一言] 壱〈どうだった? 私のところは鉄鋼系のインゴットばかりだったが〉 弐〈私のところは軽銀でした〉 参〈私が調べたところも軽銀でした〉 肆〈ゴム製の人形とギャルのパンティーを確認しました〉 伍〈…
[一言] 中途半端な技術者だった第二世代の基地を壊滅させて、自分達の所に物資搬入を変更 最低でも過去のいずれよりも高い技術レベルを持ってますね。何せ、転移魔法陣の書き換えが出来ないといけない訳ですし …
[一言] ようやっと敵の痕跡らしきものは見つかりましたが 鉱夫ゴーレムを奪ってまで資源を持っていっているのなら基地内のゴーレムをそのまま残していった理由がよくわかりませんねえ
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