73-20 その光景は信じがたく
『A』と『B』が見た光景。
それは、徹底的に破壊された『統括管理魔導頭脳』であった。
2体は室内に足を踏み入れ、周囲を観察した。
〔……いったい誰が、なぜ?〕
〔……ここまでの破壊をできる相手とは……?〕
もちろん、警護のゴーレムもいたわけで、その残骸も部屋のあちこちに転がっている。
その全てが、原型を留めないほどに破壊されていた。
〔10体以上あるな〕
〔正確には11体が破壊されている。うち1体は少しましな壊れ方のようだ〕
〔……制御核が無事なら、何があったかわかるのだが〕
だが、その望みは潰えた。
制御核のある胸部はぐしゃぐしゃに潰れていたのである。
〔相当な性能差がないとできない破壊だな〕
〔うむ。……少なくとも3倍……いや5倍はないと無理だろう〕
そのようなゴーレムが作れるのだろうか、と『A』『B』は疑問に思ったのだが、
〔……いや、『オエステ2』に来たあの小さな自動人形ならできるだろう〕
〔それは確かに〕
という結論に。
〔だが、これをなしたのはあの自動人形ではない〕
〔それはそうだろうな。この部屋は我々が来るまで、少なくとも数ヵ月は誰も入っていなかったようだからな〕
空調が戦闘の余波で壊れていたため、床に埃が積もっているのだ。
その量から推測したのであった。
〔……だが、だとすれば、この破壊行為があったのは数ヵ月前ということになるぞ〕
〔確かにな〕
それはある意味、大きな危険が存在することを示唆している。
* * *
幸いにも『魔法障壁』は張られていないので通信は問題なくできる。
『オエステ2』の『ルゥカー』に入った連絡を、仁D経由で受け取った老君は、この事態を重く受け止めた。
『正体不明の何かがいるということですね。しかもかなりの力を持った……』
それが『オエステ3』を襲ったことにまず間違いはない。
『もう少し情報がほしいですね……』
そこで老君は、『覗き見望遠鏡』で周辺を探ることにした。
それこそ偶然が重ならない限り、有益な手掛かりは得られないであろうが、可能性は0ではない。
そして何もしなければ手掛かりが見つかることはないのだから。
* * *
『A』と『B』もまた、この事態を重要視していた。
いつなんどき、『オエステ2』が襲撃されてもおかしくないからだ。
〔基地に戻り、転移魔法陣を壊してしまう、という手もあるが……〕
〔悪いとは言わないが、問題の解決にはならないな〕
〔それは確かにな〕
しかも、『オエステ3』へ行く手段が失われてしまうのだ。
〔だが、放置もできまい?〕
〔それはそうだ。このままだと攻め込まれても防ぎようがない〕
2体は打開策を検討するが、そうそういい案が出るはずもない。
〔まずは、もう少し情報を集めよう〕
〔それがよさそうだ〕
2体は、まずそのフロアを隅から隅まで調査することにした。
見落としているものがないか、あるいは何か情報を得られる痕跡でもないか、と。
そして。
〔『A』よ、あれを見てくれ〕
何かを見つけたらしい『B』が『A』に声を掛けた。
〔どうした?〕
〔あの傷だ。あれは、未知の敵の武器によるものだろうと思うのだが〕
〔確かにな。あのような場所に傷をつけているということは……〕
それはフロアの天井に、一文字に付いた傷である。
〔剣や槍……刃物ではないな〕
〔うむ。それならもっと深く、切り込むような傷になるはずだ〕
その傷は浅い『擦過傷』と言えるような傷であった。
〔メイス……でもないな〕
〔うむ。……そうか、『鞭』に違いない〕
〔おお、なるほど、そうだな〕
つまり敵は『鞭』を使うことがわかる。もちろん武器がそれだけということはないであろうが。
〔この穴はなんだ?〕
そして『A』もまた、床に空いた穴に気が付いた。
それは細かいピッチで無数に付いている。1つの穴の直径は2ミリくらい、深さは3ミリくらいだ。
鋼鉄製の床にこれだけの穴を空ける手段について、『A』も『B』も心当たりはなかった。
〔……これは保留にしよう〕
〔それしかないな〕
そして、このフロアではこれ以上の収穫はないだろうということで『A』と『B』の意見は一致した。
破壊されたゴーレムの残骸も全て確認したのだが、無事な制御核は見つからなかったのである。
〔左右の部屋を確認してみよう〕
〔そうだな〕
『A』と『B』は『統括管理魔導頭脳』があった部屋の右側の扉を開けた。
〔ここはゴーレム倉庫だったようだが……〕
〔全滅だな〕
原型を留めないどころか、溶けた金属塊と砕けた魔結晶が散らばっているだけであった。
〔徹底しているな〕
〔うむ。だがこれで、敵は熱系の攻撃手段も持っていることがわかった〕
〔あまり慰めにはならんな〕
そして2体は、今度は左側の扉を開ける。
〔ここは……〕
〔雑用ゴーレム置き場……だったのだろうな〕
そこもまた、金属塊と魔結晶の破片だらけだったのである。
〔ひどいな〕
〔まったくだ〕
そんなことを言い合いながらも、2体は部屋の中を観察し、捜索し、分析を行っていく。
だがやはりというか、その甲斐もなく、ほとんど情報は得られなかったのだった。
〔……1体でも残っていてくれればな〕
〔それは無理というものだ。この相手は只者ではない〕
〔それはわかっているのだがな〕
〔1つ上の階層へ行ってみるか?〕
〔いや、鉱山区画へいってみよう。そちらの方が近いこともあるが、基地内とは環境が異なるから、何か別の手掛かりが残っているかもしれん〕
〔なるほど、わかった。そうしよう〕
そして『A』と『B』は通路の奥にあるハッチを開け、坑道へと向かうのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
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その間レスできませんのでご了承ください。
20201018 修正
(旧)〔『A』よ、これを見てくれ〕
(新)〔『A』よ、あれを見てくれ〕
(旧)〔あの傷を見てくれ。これは、未知の敵の武器によるものだろうと思うのだが〕
〔確かにな。このような場所に傷をつけているということは……〕
(新)〔あの傷だ。あれは、未知の敵の武器によるものだろうと思うのだが〕
〔確かにな。あのような場所に傷をつけているということは……〕
(誤)解けた金属塊と砕けた魔結晶が散らばっているだけであった。
(正)溶けた金属塊と砕けた魔結晶が散らばっているだけであった。




