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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
73 メメンタス調査篇
2754/4397

73-20 その光景は信じがたく

 『A』と『B』が見た光景。

 それは、徹底的に破壊された『統括管理魔導頭脳』であった。


 2体は室内に足を踏み入れ、周囲を観察した。


〔……いったい誰が、なぜ?〕

〔……ここまでの破壊をできる相手とは……?〕


 もちろん、警護のゴーレムもいたわけで、その残骸も部屋のあちこちに転がっている。

 その全てが、原型を留めないほどに破壊されていた。


〔10体以上あるな〕

〔正確には11体が破壊されている。うち1体は少しましな壊れ方のようだ〕

〔……制御核(コントロールコア)が無事なら、何があったかわかるのだが〕


 だが、その望みはついえた。

 制御核(コントロールコア)のある胸部はぐしゃぐしゃに潰れていたのである。


〔相当な性能差がないとできない破壊だな〕

〔うむ。……少なくとも3倍……いや5倍はないと無理だろう〕


 そのようなゴーレムが作れるのだろうか、と『A』『B』は疑問に思ったのだが、


〔……いや、『オエステ2』に来たあの小さな自動人形(オートマタ)ならできるだろう〕

〔それは確かに〕


 という結論に。


〔だが、これをなしたのはあの自動人形(オートマタ)ではない〕

〔それはそうだろうな。この部屋は我々が来るまで、少なくとも数ヵ月は誰も入っていなかったようだからな〕


 空調が戦闘の余波で壊れていたため、床に埃が積もっているのだ。

 その量から推測したのであった。


〔……だが、だとすれば、この破壊行為があったのは数ヵ月前ということになるぞ〕

〔確かにな〕


 それはある意味、大きな危険が存在することを示唆している。


*   *   *


 幸いにも『魔法障壁(マジックバリア)』は張られていないので通信は問題なくできる。

 『オエステ2』の『ルゥカー』に入った連絡を、仁D経由で受け取った老君は、この事態を重く受け止めた。


『正体不明の何かがいるということですね。しかもかなりの力を持った……』


 それが『オエステ3』を襲ったことにまず間違いはない。


『もう少し情報がほしいですね……』


 そこで老君は、『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で周辺を探ることにした。

 それこそ偶然が重ならない限り、有益な手掛かりは得られないであろうが、可能性は0ではない。

 そして何もしなければ手掛かりが見つかることはないのだから。


*   *   *


 『A』と『B』もまた、この事態を重要視していた。

 いつなんどき、『オエステ2』が襲撃されてもおかしくないからだ。


〔基地に戻り、転移魔法陣を壊してしまう、という手もあるが……〕

〔悪いとは言わないが、問題の解決にはならないな〕

〔それは確かにな〕


 しかも、『オエステ3』へ行く手段が失われてしまうのだ。


〔だが、放置もできまい?〕

〔それはそうだ。このままだと攻め込まれても防ぎようがない〕


 2体は打開策を検討するが、そうそういい案が出るはずもない。


〔まずは、もう少し情報を集めよう〕

〔それがよさそうだ〕


 2体は、まずそのフロアを隅から隅まで調査することにした。

 見落としているものがないか、あるいは何か情報を得られる痕跡でもないか、と。

 そして。


〔『A』よ、あれを見てくれ〕


 何かを見つけたらしい『B』が『A』に声を掛けた。


〔どうした?〕

〔あの傷だ。あれは、未知の敵の武器によるものだろうと思うのだが〕

〔確かにな。あのような場所に傷をつけているということは……〕


 それはフロアの天井に、一文字いちもんじに付いた傷である。


〔剣や槍……刃物ではないな〕

〔うむ。それならもっと深く、切り込むような傷になるはずだ〕


 その傷は浅い『擦過傷さっかしょう』と言えるような傷であった。


〔メイス……でもないな〕

〔うむ。……そうか、『むち』に違いない〕

〔おお、なるほど、そうだな〕


 つまり敵は『鞭』を使うことがわかる。もちろん武器がそれだけということはないであろうが。


〔この穴はなんだ?〕


 そして『A』もまた、床に空いた穴に気が付いた。

 それは細かいピッチで無数に付いている。1つの穴の直径は2ミリくらい、深さは3ミリくらいだ。

 鋼鉄製の床にこれだけの穴を空ける手段について、『A』も『B』も心当たりはなかった。


〔……これは保留にしよう〕

〔それしかないな〕


 そして、このフロアではこれ以上の収穫はないだろうということで『A』と『B』の意見は一致した。

 破壊されたゴーレムの残骸も全て確認したのだが、無事な制御核(コントロールコア)は見つからなかったのである。


〔左右の部屋を確認してみよう〕

〔そうだな〕


 『A』と『B』は『統括管理魔導頭脳』があった部屋の右側の扉を開けた。


〔ここはゴーレム倉庫だったようだが……〕

〔全滅だな〕


 原型を留めないどころか、溶けた金属塊と砕けた魔結晶(マギクリスタル)が散らばっているだけであった。


〔徹底しているな〕

〔うむ。だがこれで、敵は熱系の攻撃手段も持っていることがわかった〕

〔あまり慰めにはならんな〕


 そして2体は、今度は左側の扉を開ける。


〔ここは……〕

〔雑用ゴーレム置き場……だったのだろうな〕


 そこもまた、金属塊と魔結晶(マギクリスタル)の破片だらけだったのである。


〔ひどいな〕

〔まったくだ〕


 そんなことを言い合いながらも、2体は部屋の中を観察し、捜索し、分析を行っていく。

 だがやはりというか、その甲斐もなく、ほとんど情報は得られなかったのだった。


〔……1体でも残っていてくれればな〕

〔それは無理というものだ。この相手は只者ではない〕

〔それはわかっているのだがな〕

〔1つ上の階層へ行ってみるか?〕

〔いや、鉱山区画へいってみよう。そちらの方が近いこともあるが、基地内とは環境が異なるから、何か別の手掛かりが残っているかもしれん〕

〔なるほど、わかった。そうしよう〕


 そして『A』と『B』は通路の奥にあるハッチを開け、坑道へと向かうのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。

     https://ncode.syosetu.com/n5250en/

     お楽しみいただけましたら幸いです。


 お知らせ:本日10月17日(土)早朝から18日(日)昼過ぎまで不在となります。

      その間レスできませんのでご了承ください。


 20201018 修正

(旧)〔『A』よ、これを見てくれ〕

(新)〔『A』よ、あれを見てくれ〕

(旧)〔あの傷を見てくれ。これは、未知の敵の武器によるものだろうと思うのだが〕

〔確かにな。このような場所に傷をつけているということは……〕

(新)〔あの傷だ。あれは、未知の敵の武器によるものだろうと思うのだが〕

〔確かにな。あのような場所に傷をつけているということは……〕


(誤)解けた金属塊と砕けた魔結晶(マギクリスタル)が散らばっているだけであった。

(正)溶けた金属塊と砕けた魔結晶(マギクリスタル)が散らばっているだけであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 73-20 その光景は信じがたく 更新ありがとうございます。 [気になる点] 『 それは、徹底的に破壊された『統括管理魔導頭脳』であった。』 それ以外に考えにくいというか。 『襲撃者…
[良い点] 更新お疲れ様です [気になる点] 最初は百足かなにかが暴れたのかとおもってたら・・・ 破壊の形跡から察するに知性のない魔物が無差別にあばれたとかではなく徹底的に破壊されているかんじですよね…
[良い点] >〔……いや、『オエステ2』に来たあの小さな自動人形ならできるだろう〕 やはり、ブラック礼子の……。 [気になる点] しかし、仮に本当にブラック礼子だった場合、その誕生のためには、 礼子が…
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