73-15 修理はしたものの、まだ問題が残っており
仁Dと礼子は、超特急で『オエステ2』の『統括管理魔導頭脳』の修理を行っている。
「礼子、魔結晶を2個くれ」
「はい、どうぞ」
「ここをちょっと支えていてくれ」
「こうでしょうか」
その修理速度は、傍で見ている4本腕のゴーレムも呆れるほど。
* * *
(……ある程度の感情を持たせることは、行動や判断に自由度が増すだろうが、過剰になると逆に支障を来しそうだな)
仁Dに修理をさせつつ、仁はそんなことを考えていた。
(危機感くらいまでならいいだろうが、恐怖を抱いてしまったら、行動できなくなる可能性もあるし)
『オエステ基地』に関わった『始祖』は、その辺の匙加減を間違っていたんじゃないか、と仁は考えているのである。
(まあ、今は修理に集中しよう)
そしてさらに修理速度は上がっていく……。
* * *
「よし、これでひとまず修理は完了だ」
「おお、感謝するぞ。ジン殿、レーコ殿」
案内してきた4本腕のゴーレムは、完全に脱帽したようだ。
「だが、このまま再起動するのがいいかどうか」
「どういうことだ?」
「今は、『元どおり』にしただけだ。つまり、暴走したとき……いや、暴走する前と同じということだ」
「……そうか。このままでは、また暴走する可能性があるわけか」
「そういうことさ」
「むう……」
考え込む4本腕ゴーレム。仁側としては、対策は思いついているので、頃合いを見て提案するつもりでいる。
「まず、どうして暴走したのか、わかるか?」
「正直、わからない」
「そうか……」
今ここにいる4本腕ゴーレムは『半自律型』なので、『守備用魔導頭脳』である『プローテ』ともリンクしている。
つまり、ここでのやり取りは『プローテ』も知っているわけだ。
すなわち、『プローテ』も、『統括管理魔導頭脳』が暴走した理由は知らないということ。
ここで仁は、仁Dを通じ、気になっていることを尋ねてみることにした。
「……『メメンタス』を知っているか?」
もしかするとこの事態の解決の糸口になるかと思ったのだが……。
「いや、知らない」
残念ながら『プローテ』も知らなかったようだ。
続いて仁Dは、別方面からの確認を行うことにした。
「そういえば、『A』『B』と呼んだ自律型のゴーレムが、何か言っていたようだが」
「うむ、『主人たち』が作った旧型だな?」
「そうらしい。旧型とはいえ、自律型だから何か知っているんじゃないか?」
「その可能性はあるな。尋ねてみよう」
「頼む」
今のところ『プローテ』が『オエステ2』を掌握していると言っても過言ではない。
再起動させたゴーレムの1体が、『A』『B』と話をつけたようだ。
「まもなく『B』がここにやって来る。やり取りは任せてもらおう」
「頼む」
その言葉どおり、3分後、扉前に『B』がやって来た。
が、なぜか中に入ってこない。
「どうした?」
「……ここでいい。不用意に中に入り、身動きできなくなるのは御免だ」
「どうしてそういう結論になるかは理解できんが……まあいいだろう」
「それで、何が聞きたい?」
「『統括管理魔導頭脳』が暴走した原因を知りたいのだ」
「なるほど、そうだったか」
呼ばれた目的を聞き、『B』も落ち着いたようだ。
こんなところにも『感情』の弊害があるんじゃないかな、と、仁Dを操縦している仁本人は感じていた。
「少し前に閉じ込めた、『セ』とかいうゴーレムにも話したのだが、暴走したのはおよそ2日ほどまえのことだったはずだ」
「その時に何があった?」
「『オエステ1』と通話をしていたはずだ」
〈なるほどな〉
同じくなるほどな、と、聞いている仁も思っていた。
(やはり、『オエステ1』……『モースク』が、『新しい主人』マリッカと、技術者である俺を迎えた、という話が切っ掛けになったようだな)
* * *
「……だとしても……老君、暴走するものだろうか?」
蓬莱島では、『B』の話から推測した仁が、老君に確認していた。
時刻は蓬莱島時間で午後11時。
『仁ファミリー』のメンバーは仁を除いて既に床に就いていた。
『はい、御主人様。……推測は難しいですが、こう考えます』
論理的ではない思考をする魔導頭脳の行動を推測するのは非常に困難であるが、老君はなんとかそれを行った。
『マリッカさんを自分の『主人』として欲しい。では『オエステ1』から奪ってしまおう、と』
「待て。だが……」
『お待ち下さい。……そして、同時にこうも考えるのです。『それをしてしまったら『主人』であるマリッカさんが悲しむ』と』
「ああ、そういうことか」
新たな『主人』としてマリッカを奪ってきたい。だが、それは同時にマリッカを苦しめることになりそうだ。
『主人』候補に害が及ぶようなことはしたくない。だが『主人』は欲しい……。
子供じみた短絡的な思考と、冷静な状況判断が同居しているだけに、矛盾が生じたわけだ。
「ああ、確かにありそうだな。そうすると……」
『マリッカさんを『統括管理魔導頭脳』に引き合わせれば解決するでしょう』
「確かにな。そしてマリッカを『主人』と認めたなら、その権限をもって改造の許可を貰えば……」
『御主人様でしたら、こうした暴走が起きないように改良することがおできでしょう』
「うん、そういう流れなら間違いなさそうだ」
『オエステ1』にいるマリッカDを派遣しよう、と仁は考えた。
『ですが御主人様、あくまでも私の推測ですので』
慎重な老君に対し仁は、大丈夫だと思う、と老君の心配を払拭するように言った。
「早速マリッカDを呼んでくれ」
『わかりました』
今現在、『オエステ1』にいるマリッカDを操縦しているのは老君であるから、呼び寄せるのも簡単である。
仁が指示を出してから3分後には、転送機でマリッカDを『オエステ2』へと送り込むことができたのだった。
* * *
マリッカDが転移したのは『B』の背後。
そこから大急ぎで『統括管理魔導頭脳』のある部屋、すなわち仁Dたちがいる部屋へと駆け込む。
「よく来てくれた」
「はい」
「この方は?」
「マリッカといって、『オエステ1』の新しい『主人』だ」
「なんと、この方が!」
驚いてばかりの『プローテ』である。
「とにかくこれで『統括管理魔導頭脳』を再起動できるな。……『認証鍵』はわかるか?」
「う、うむ。……『フォーメルスヴォート』だ」
「よしマリッカ、頼む」
「はい」
マリッカDが再起動することで、その魔力パターンは『統括管理魔導頭脳』にとって重要な意味を持つことになるだろう。
今の構造では、それでいきなりマリッカを主人と認めるまでは行かないだろうけどな、と仁は思いつつ、見守るのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20201012 修正
(誤)……まあいいだろう〉
(正)……まあいいだろう」
(誤)仁が支持を出してから3分後には
(正)仁が指示を出してから3分後には
(誤)マリッカDが転移したには『B』の背後。
(正)マリッカDが転移したのは『B』の背後。




