73-14 ついに、統括管理魔導頭脳に辿り着いたが
礼子と仁Dは『統括管理魔導頭脳』の部屋を目指していた。
先頭は4本腕のゴーレム。それに礼子が続き、仁D、そして殿にもう1体の4本腕ゴーレムだ。
この2体は、『守備用魔導頭脳』改め『プローテ』とリンクしており、いわば『半自律』と言えるもののようだ、と仁Dは見抜いていた。
そして、『プローテ』が大半のゴーレムを支配しているため、道中何の抵抗もなく一行は進んでいく。
「順調だな」
「はい」
「だが、気を付けてくれ。もうすぐ『統括管理魔導頭脳』のある部屋だ。そこは間違いなく警備されているからな」
この2体は、発声機構の調子が少々悪いらしく、くぐもったような声になっているが、聞き取るには問題ない。
「わかった、気をつけよう」
「そうしてくれ」
そんな会話をしてから2分後。
「止まれ」
「む?」
2体の4本腕ゴーレムが行く手に立ちはだかった。
音声での命令なので仁Dや礼子にも、魔力波の周波数を合わせるなどという面倒なことをせずに聞き取ることができている。
そしてこちらの発声機構はまともな音声を発している。
整備の問題かな……と、仁Dは考えていた。
「どこへ行く? 一緒にいるのは外部の者であろう?」
「そうだが、何か問題があるか?」
「統括管理魔導頭脳に危険を及ぼすような行動は許可できない」
「それなら大丈夫だ。この技術者たちは統括管理魔導頭脳を修理するために来たのだ」
「それを信じろというのか?」
「そうだ」
「駄目だな」
どうやらこのゴーレムも融通が利かないらしい、と仁Dは思い、密かに身構えた。
「どうしたら通してもらえる?」
「力を見せればよい」
力か……、力にも色々あるよなあ、と仁は考えた。
今手っ取り早いのは、立ち塞がる2体を礼子が排除することか、と考えた仁は、
「この礼子は自動人形だが、君たち2体よりも強い。それを証明したら通してもらえるか?」
と聞いてみたのだ。
「できるならな」
「よし! 礼子、頼む。ただし、なるべく壊すな」
「はい!」
言質は取った、と、仁Dは礼子に指示を出す。
そして、弾かれたように飛び出した礼子は、2体の4本腕ゴーレムをまとめて蹴り飛ばしたのである。
なるべく壊すな、と言われたので、『力場発生器』で自身を空中に固定しての蹴りだ。
こうしないと『手加減』のしようがなかったからである。
吹き飛んだ2体は壁にぶつかって止まる。
「どうかな?」
仁Dが尋ねた。
「む、う……」
「確か、に、我らよりも強い。その見かけで……」
僅かな沈黙の後、2体は頷いた。絶妙な手加減のおかげで、少々凹みはすれど壊れてはいなかったのだ。
「……認めよう」
「……通るがいい」
「ありがとう」
これでもう扉の前へは一直線だ。
仁Dたちは先を急いだ。
行き着いた先には扉が。
途中で見かけた他の扉とは違い、やや大きめである
「この中だ」
「間違いないですね?」
「もちろんだ」
案内役のゴーレムが扉を開けていく。
全開の扉から中を覗き込めば、間違いなく球形の魔導頭脳がぶら下がっている。
「まちがいありませんね」
そう言って、礼子が真っ先に部屋へと踏み込んだ。
罠を心配してのことだったが、それは大丈夫だった。
「どうぞ」
と手招きする礼子を見て、仁Dも部屋に足を踏み入れた。
案内の4本腕ゴーレムも入ってきたが、殿を務めたゴーレムは、外からの邪魔が入らないようにと扉前に陣取った。
そして。
「……これは酷いな……」
仁Dは思わず呟いた。
なにしろ、ケーブル類によってぶら下がる『統括管理魔導頭脳』は、外装がほの赤くなるほどに過熱していたのである。
「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!」
言っても詮ないことだとわかってはいても、言わずにはいられない仁Dであった。
仁Dは、何をおいてもまずは冷却からだと、工学魔法『冷却』を使う。
が、1回では到底冷やしきれるものではなく、
「『冷却』『冷却』『冷却』『冷却』『冷却』」
計6回の行使により、ようやく外装の熱は冷めたのである。
「よし、礼子、手早く外装を分解するぞ」
「はい」
仁Dと礼子はテキパキと作業を行い、30秒で外装をすべて取っ払ってしまった。
これは『オエステ1』で『モースク』を修理した経験が生きたといえよう。
「内部はまだ過熱しているな。……『冷却』『冷却』『冷却』……」
さらに3回の冷却を行うと、ようやく全体の熱も取れ、人間が触れる程度まで冷えてくれた。
もちろん仁Dも礼子も、ここまで冷えていなくても大丈夫だが、仁Dは人間として振る舞っているので必要なことだった。
「よし、まずは魔力導線を一旦切断するぞ」
「はい」
仁Dと礼子がここまでのことをしているのに、何の反応も見せない『統括管理魔導頭脳』。
これはもう手遅れかもしれないと思いつつ、仁Dは分解を開始した。
「ああ、やっぱり線が何本も溶断している」
数箇所でミスリル銀製の魔力導線が溶け落ちていた。
ミスリル銀の物理的特性はノーマルな銀とほぼ同じ。つまり融点は摂氏962度くらいである。
先程までは、外装が暗赤色……摂氏650度くらいになるほど過熱していた。その際内部は局所的にせよ摂氏1000度近くまで上昇していたと思われる。
それでは銀線は溶けてしまうわけだ。
ちなみに仁が使っているミスリル銀は、『工学魔法』で耐熱処理……分子結合の安定性を増す……を行っており、融点は摂氏1500度くらいに向上している。
当然、効果の高い冷却機構も備えているので、礼子をはじめとする蓬莱島勢は摂氏2000度くらいの高温にも耐えられるのである。
「他にダメージは……ああ、このユニットの魔結晶にはヒビが入っているな……データをサルベージできればいいが」
そう呟きながら仁Dはバックアップ作業に入っている。
蓬莱島から転送機で礼子のもとに魔結晶が送られてくるので、それを仁Dに差し出すという手順だ。
「……なんとかこいつは95パーセントくらいはサルベージできたぞ」
「こちらもお願いします」
「……割れてるじゃないか」
かなりひどい状況である。
案内してきたゴーレムは、手出しも口出しもできずに横で見ているだけ。
仁Dと礼子は粛々と作業を続けていった。
そして30分後。
「……なんとか9割方、データを救うことができたな」
「お疲れさまです」
「さて、ここからが本番だ」
本体の修理が始まった……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日10月11日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20201011 修正
(誤)「どうしたら通してもらえる?
(正)「どうしたら通してもらえる?」
(誤)〈******〉
(正)「******」
のように、敵ゴーレムと案内ゴーレムのセリフが入り組んでしまいややこしくなりましたので、全て〈 〉を「 」に直します。
ご迷惑おかけします。<(_ _)>




