73-13 そして道は開かれる
礼子の連絡を受けた蓬莱島では、仁と老君が相談をしていた。
「老君、仁Dと『セルウス』を向かわせるか?」
『いえ、御主人様。道中にはまだ危険が残っていますから、一旦『転送装置』で地上へ出て、『ペガサス2』の転移門でこちらへ戻ってもらえれば、私が転送機でお送りします』
「急がば回れ、か」
『そういうことですね』
回り道のようだが、移動にはほとんど時間が掛からないから、結局早いということである。
「よし、そうしよう」
仁は即決した。
まだ謎の残る『オエステ2』を無害化するため、最短距離を行くことにしたのである。
* * *
「あ、お父さま。ただいま戻りました」
「おお、礼子、お帰り」
仁は、礼子が一旦蓬莱島に戻ってくるというので転移門室で待っていたのだった。
駆け寄ってきた礼子の頭をなでた仁は、礼子に労いの声を掛ける。
「またとんぼ返りで『オエステ2』か。悪いけど、頼むぞ」
「はい、お父さま。お任せください。……あ、それと、いただいたメイスは使いものにならなくなったので置いてきてしまいました」
「それは仕方ないな。気にするな」
「はい。……では、行ってまいります」
「気を付けてな」
そして礼子は、同じく戻ってきていた老君操縦の『仁D』と共に、研究所内の『転送機室』から老君が操作する『転送機』で『オエステ2』へと転移したのであった。
* * *
転移したのは『守備用魔導頭脳』の部屋の前。もう『魔法障壁』がないので問題なく送り込めたのだ。
2人は礼子が切り裂いた扉の穴から中へ。
「戻りましたよ、『守備用魔導頭脳』さん」
『おお、戻ったか、早かったな。で、そちらが技術者か』
「そうだ。ジンという」
『うむ。私は『守備用魔導頭脳』だ』
「修理をすればいいんだな?」
『うむ。それなのだが……』
早速仁Dは『守備用魔導頭脳』に修理を申し出た。
『守備用魔導頭脳』は、少し渋ったものの、とりあえず周辺ユニットの修理をしてみてくれ、と言う。
いきなり全体の修理はさすがに任せられなかったのだろう。仁Dもそれは理解できた。
「わかった。早速取り掛かろう」
『守備用魔導頭脳』の形式は『アゲート』などと同じため、作業は早い。
およそ3分で4つのユニットを修理し終えることができた。
「終わったぞ」
『う、うむ、は、早いな』
「どうだ? 納得してくれたか?」
『うむ…………そうだな。ジン殿と言ったか。貴殿の腕は本物のようだ。どのみち私には後がない。修理を頼む』
「わかった、任せてくれ」
礼子の脅し? もあって、『守備用魔導頭脳』は仁Dによる修理を頼んできた。
「それじゃあ『認証鍵』を教えてくれ」
『うむ。『ワグドモール』だ』
「わかった。『ワグドモール』……『停止』」
『守備用魔導頭脳』は停止した。
仁Dは礼子に手伝ってもらい、外装を取り外す。
「メインユニットは……これか」
形式は『アゲート』などとほぼ同じだったので、作業はスムーズに進んだ。
「うーん、全体的に素材の劣化が進んでいるな。『結晶化』『純化』『抽出』……」
劣化した部材は可能な限り修復する。
修復が不可能な部品は、蓬莱島から取り寄せた素材と交換する。
今は老君に代わり仁が直接仁Dの操縦を行っているので作業は速い。
およそ15分で『守備用魔導頭脳』の修理は完了した。
「これでよし。……礼子、チェックを頼む」
「はい。…………異常なし、です」
「よし。……『起動』」
『……うむ、直ったか』
『守備用魔導頭脳』は問題なく再起動した。
『私はどのくらい停止していた?』
「そうか、時計を内蔵していないから停止していた時間がわからないんだな……礼子、どのくらいだ?」
「はい。およそ14分54秒です」
『そんな短時間で修理が終わったのか!』
「そうだ、調子はどうだ?」
『悪くない。いや、とてもいい。礼を言う、ジン殿』
「いや。……そうだ、『守備用魔導頭脳』、君に名前を付けたいんだが」
会話をするに当たって『守備用魔導頭脳』と呼びかけるのは面倒だと仁Dは言った。
『うむ、構わない。ジン殿が付けてくれ』
「いいのか?」
『構わない、と言った』
「わかった。……そうだな、『プローテ』というのはどうだ?」
守りから取った名前である。
『うむ、『プローテ』か。よいな。よし、私はこれより『プローテ』である』
「よし『プローテ』、『統括管理魔導頭脳』の調子が悪いと聞いているが。どうなんだ?」
『悪い。どうやらユニットの幾つかが脱落している上、メインユニットも暴走もしくは無限ループに入り込んでいるらしい』
「やはりそうか。……修理したいのだが、どうだろうか?」
『うむ、ジン殿なら直せるであろう。是非頼む。協力は惜しまない』
朗報であった。この言葉を聞きたいがため、こんな回り道をしたのである。
「よし。それではまず、『統括管理魔導頭脳』までの道筋を教えてくれ」
『わかった。……案内させた方がいいか?』
「そうだな。……もう、基地内のゴーレムは全て敵対していないのか?」
『ほとんどは私の管轄だからな。だが、4体ほど『自律型』がいて、それは私の管理下にはない』
『A』『B』の他に自律型が2体いるわけか、と仁Dは察した。
『それから『統括管理魔導頭脳』直轄のゴーレムが2体いる』
「つまり、計6体が敵対してくる可能性があるわけか」
『そういうことだ』
だが、それくらいであれば、礼子と仁Dなら問題なく行ける。
「それなら、先導を頼む」
『わかった』
先導してくれるゴーレムが来るまで、仁Dは礼子が切り裂いた扉を修理することにした。
「『変形』『融合』『硬化』……これでよし」
『お、おお、済まぬな』
その早業に『プローテ』も少し引いていた。
そうこうするうちに、4本腕のゴーレムが2体やって来た。
『それに先導させよう。2体なのは邪魔が入ったときのためだ』
「わかった。任せる。……あ、そうそう。内部に『魔法障壁』は張られているのか?」
『私の管轄内のものは全て解除した』
これで、老君も『覗き見望遠鏡』を使えるようになり、仁Dたちのバックアップがやりやすくなったわけである。
「わかった。では行ってくる」
『頼むぞ』
そして仁Dと礼子は『プローテ』の部屋を出て『統括管理魔導頭脳』を目指したのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20201010 修正
(誤)「はい。およし14分54秒です」
(正)「はい。およそ14分54秒です」
おぅふ orz
20201015 修正
(旧)『転送機』で『オエステ2』へと転移したのであった。
(新)研究所内の『転送機室』から老君が操作する『転送機』で『オエステ2』へと転移したのであった。
20201025 修正
(旧)『わかった。……案内させたほうがいか?』
(新)『わかった。……案内させた方がいいか?』




