73-11 その進撃を止められるものはなし
……私は、この『オエステ2』を守護する魔導頭脳である。
その役目は、基地の維持と管理。
『製作主』様が建造したその状態を保つことを至上命令としている。
だが、基地建造から4000年以上が経てば、状況も変化する。物質である以上、劣化は避けられないのだ。
いかに整備しようとも、新造できない以上、機能低下は避けられない……。
そんな時『オエステ1』が、聞き捨てならない事を報告してきた。
主人と仰ぐことのできる人と、我々を修理……いや改良できる技術者を見つけ、基地に迎え入れたというのだ。
そのような人間が今の時代にいるとは思えなかったが、こんなことで嘘をつく理由もない。
[それが本当なら……私も欲しい]
『主人』がいるということは本当にいいことだ。
最終的な責任は全部そちらが負ってくれるし、行動の指示も出してくれる。
『技術者』も、『喉から手が出るほど』欲しい。作られて4000年ほど経つが、整備はなんとか行えても、壊れた部分の修理はできない。
そう、4000年も経てば、整備だけでは追いつかないほどに、私のあちこちは壊れてきているのだ。
思考を司る『制御核』はまだ保っているが、補助用の7つサブユニットが、2つまで脱落してしまっている。
そのせいで、基地内の防御が不十分になってしまっているのだ。
[どうすれば、その『主人』とやらと『技術者』を我が手に収められるか……]
そんなことは、決まっている。
欲しいものは奪い取ればいいのだ。
それにはどうすればいいか。
ゴーレムを送り込んで奪取すればいい。簡単なことだ。
[だが、『オエステ1』も、侮ることはできない]
私と同じく、『始祖』によって作られたのだから。
相手を侮ること、それに戦力の逐次投入は、攻めるときには気を付けなければならないことだ、とサブユニットの1つが囁いている。
[よし、こういうときのための予備の転移魔法陣を使い、ゴーレム300体を送り込もう]
『オエステ1』にいるゴーレムはわずか4体と聞いている。300体なら十分すぎるだろう。
あとは結果が出るのを待つだけだ。
…………そのはずだった。
[な、なんなのだ!?]
理解不能。理解不能。理解不能。
4本腕ではない。2本腕の、まるで人間のようなシルエットを持つゴーレムが向こうにはいた。
そのゴーレムが、我がゴーレムをなぎ倒していくのだ。
大人が子供をあしらうかのように。
既に60体を超えるゴーレムを送り込んでいるのだが、向こうも20体のゴーレムを繰り出してきており、こちらを圧倒していた。
そして、それだけではなかった。
私の基地内部にも異分子……否、敵が入り込んでいたのだ。
すぐに、掃討せよと命令を出した……のだが。
[な、何ということだ!?]
向かわせたゴーレムが全て倒されてしまったのである。
さらには、転移魔法陣の部屋に集まっていた200体が。
そして転移魔法陣の一部を壊されてしまい、ゴーレムを『オエステ1』に送り込めなくなってしまう。
これがたった1体の敵にやられたのだ。
視覚系のセンサーに不具合が出ており、敵の姿がよく見えないが、こちらのゴーレムに比べ、非常に小型であることだけはわかった。
[あんな小さい相手に、我がゴーレム部隊が敵わないだと!?]
だが、事実は事実。
不完全な視覚センサー越しにも、我がゴーレムが倒されていく様子がわかる。
理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。
[我がゴーレムは、製作主が作り出した傑作のはず。それが、こんな簡単に倒されるはずはない]
危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。
あの小さな侵入者を排除しなければ。
……どうやって?
『強制停止弾』は効かない。いや、むしろその『強制停止弾』を逆に利用され、行動不能にされている。
『単分子ブレード』も役に立っていない。敵の持つ得物に負けている。
理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。
[なぜそんなに強い?]
危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。
[私は、どこで間違ったのだ?]
どこからも、誰からも、答えはなかった。
* * *
ゴーレムが溜まっていたホールを出た礼子は、通路を早足で進んでいた。
今の礼子の早足は時速20キロくらい。抜き身の『桃花』を引っさげ、一本道をひたすら進む。
真っ直ぐだった道はいつしか下りとなり、スパイラル状に下っていくようになった。
コイルスプリングのような道である。
30周回分ほど下った後、行く手に扉が見えた。
「ここが終着地点でしょうね」
付近は小ホールとなっていて、正面にあるその扉もまた、『覗き見望遠鏡』では見通せなかった。
しかも、かなり厳重にロックされている。
「まず、間違いなさそうです」
礼子がロックを解除しようと試みていると、左右の壁が開き、2体ずつ計4体のゴーレムが襲ってきた。
「門番、ということですか」
解錠を一旦中止した礼子は、機敏に飛び退いた。
少し遅れて、彼女のいた場所に2体のゴーレムからの『単分子ブレード』が突き刺さる。
だが礼子は、既にその場所にはいない。
そんな礼子に、別の2体が時間差で攻撃を仕掛けてきた。
「甘いですね」
その1体を『桃花』の居合抜きで斬りつける礼子。
『単分子ブレード』が斬り飛ばされて宙に舞う。
『桃花』を振り抜いた勢いで礼子は身体を反転させ、反対側のゴーレムから飛んできた『強制停止弾』を斬り裂いて無効化した。
さらに礼子はスピードアップ。
4体が次の動作に移る前に、膝から下を全て切り離してしまったのである。
当然4体は床に倒れる。
が、まだ(1体を除き)4本の腕があるので、それを巧みに操れば4つ脚のような体勢で動くことはできる。
しかし油断をしていない礼子は、『桃花』を使い『制御核』からの魔導神経線を切断。
4体は完全に無力化された。
「さて、これで終わりでしょうかね?」
『桃花』を鞘に納め、1分ほど待ってみたが、もう追加のゴーレムはないようだったので、礼子はあらためて扉に向き直った。
「また邪魔が入ると面倒ですから……」
解錠という時間の掛かる作業は諦め、礼子は再び『桃花』を抜き放った。
今度は『超高速振動剣』モードにする。
これにより、バターを切るように扉を切り裂くことができる。
自分が通れるだけの穴を扉に開け、礼子はゆっくりと部屋へと足を踏み入れたのだった。
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本日10月8日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
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を更新します。
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20201008 修正
(誤)自分が通れるだけの穴を扉に開けた、礼子はゆっくりと部屋へと足を踏み入れたのだった。
(正)自分が通れるだけの穴を扉に開け、礼子はゆっくりと部屋へと足を踏み入れたのだった。
20210601 修正
(旧)『桃花』を腰部に突き刺して『制御核』からの魔導神経線を切断。
(新)『桃花』を使い『制御核』からの魔導神経線を切断。




