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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
73 メメンタス調査篇
2745/4393

73-11 その進撃を止められるものはなし

 ……私は、この『オエステ2』を守護する魔導頭脳である。

 その役目は、基地の維持と管理。

 『製作主(クリエイター)』様が建造したその状態を保つことを至上命令としている。

 だが、基地建造から4000年以上が経てば、状況も変化する。物質である以上、劣化は避けられないのだ。

 いかに整備しようとも、新造できない以上、機能低下は避けられない……。


 そんな時『オエステ1』が、聞き捨てならない事を報告してきた。

 主人と仰ぐことのできる人と、我々を修理……いや改良できる技術者を見つけ、基地に迎え入れたというのだ。

 そのような人間が今の時代にいるとは思えなかったが、こんなことで嘘をつく理由もない。


[それが本当なら……私も欲しい]


 『主人』がいるということは本当にいいことだ。

 最終的な責任は全部そちらが負ってくれるし、行動の指示も出してくれる。

 『技術者』も、『喉から手が出るほど』欲しい。作られて4000年ほど経つが、整備はなんとか行えても、壊れた部分の修理はできない。


 そう、4000年も経てば、整備だけでは追いつかないほどに、私のあちこちは壊れてきているのだ。

 思考を司る『制御核(コントロールコア)』はまだ保っているが、補助用の7つサブユニットが、2つまで脱落してしまっている。

 そのせいで、基地内の防御が不十分になってしまっているのだ。


[どうすれば、その『主人』とやらと『技術者』を我が手に収められるか……]


 そんなことは、決まっている。

 欲しいものは奪い取ればいいのだ。

 それにはどうすればいいか。

 ゴーレムを送り込んで奪取すればいい。簡単なことだ。


[だが、『オエステ1』も、侮ることはできない]


 私と同じく、『始祖(オリジン)』によって作られたのだから。

 相手を侮ること、それに戦力の逐次投入は、攻めるときには気を付けなければならないことだ、とサブユニットの1つが囁いている。


[よし、こういうときのための予備の転移魔法陣を使い、ゴーレム300体を送り込もう]


 『オエステ1』にいるゴーレムはわずか4体と聞いている。300体なら十分すぎるだろう。

 あとは結果が出るのを待つだけだ。


 …………そのはずだった。


[な、なんなのだ!?]


 理解不能。理解不能。理解不能。

 4本腕ではない。2本腕の、まるで人間のようなシルエットを持つゴーレムが向こうにはいた。

 そのゴーレムが、我がゴーレムをなぎ倒していくのだ。

 大人が子供をあしらうかのように。

 既に60体を超えるゴーレムを送り込んでいるのだが、向こうも20体のゴーレムを繰り出してきており、こちらを圧倒していた。


 そして、それだけではなかった。

 私の基地内部にも異分子……否、敵が入り込んでいたのだ。

 すぐに、掃討せよと命令を出した……のだが。


[な、何ということだ!?]


 向かわせたゴーレムが全て倒されてしまったのである。

 さらには、転移魔法陣の部屋に集まっていた200体が。

 そして転移魔法陣の一部を壊されてしまい、ゴーレムを『オエステ1』に送り込めなくなってしまう。


 これがたった1体の敵にやられたのだ。

 視覚系のセンサーに不具合が出ており、敵の姿がよく見えないが、こちらのゴーレムに比べ、非常に小型であることだけはわかった。


[あんな小さい相手に、我がゴーレム部隊が敵わないだと!?]


 だが、事実は事実。

 不完全な視覚センサー越しにも、我がゴーレムが倒されていく様子がわかる。


 理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。


[我がゴーレムは、製作主(クリエイター)が作り出した傑作のはず。それが、こんな簡単に倒されるはずはない]


 危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。


 あの小さな侵入者を排除しなければ。

 ……どうやって?

 『強制停止弾(ホルター)』は効かない。いや、むしろその『強制停止弾(ホルター)』を逆に利用され、行動不能にされている。

 『単分子ブレード』も役に立っていない。敵の持つ得物に負けている。


 理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。理解不能。


[なぜそんなに強い?]


 危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。


[私は、どこで間違ったのだ?]


 どこからも、誰からも、答えはなかった。


*   *   *


 ゴーレムが溜まっていたホールを出た礼子は、通路を早足で進んでいた。

 今の礼子の早足は時速20キロくらい。抜き身の『桃花』を引っさげ、一本道をひたすら進む。

 真っ直ぐだった道はいつしか下りとなり、スパイラル状に下っていくようになった。

 コイルスプリングのような道である。

 30周回分ほど下った後、行く手に扉が見えた。


「ここが終着地点でしょうね」


 付近は小ホールとなっていて、正面にあるその扉もまた、『覗き見望遠鏡(ピーパー)』では見通せなかった。

 しかも、かなり厳重にロックされている。


「まず、間違いなさそうです」


 礼子がロックを解除しようと試みていると、左右の壁が開き、2体ずつ計4体のゴーレムが襲ってきた。


「門番、ということですか」


 解錠を一旦中止した礼子は、機敏に飛び退いた。

 少し遅れて、彼女のいた場所に2体のゴーレムからの『単分子ブレード』が突き刺さる。

 だが礼子は、既にその場所にはいない。

 そんな礼子に、別の2体が時間差で攻撃を仕掛けてきた。


「甘いですね」


 その1体を『桃花』の居合抜きで斬りつける礼子。

 『単分子ブレード』が斬り飛ばされて宙に舞う。

 『桃花』を振り抜いた勢いで礼子は身体を反転させ、反対側のゴーレムから飛んできた『強制停止弾(ホルター)』を斬り裂いて無効化した。


 さらに礼子はスピードアップ。

 4体が次の動作に移る前に、膝から下を全て切り離してしまったのである。

 当然4体は床に倒れる。

 が、まだ(1体を除き)4本の腕があるので、それを巧みに操れば4つ脚のような体勢で動くことはできる。

 しかし油断をしていない礼子は、『桃花』を使い『制御核(コントロールコア)』からの魔導神経線を切断。

 4体は完全に無力化された。


「さて、これで終わりでしょうかね?」


 『桃花』を鞘に納め、1分ほど待ってみたが、もう追加のゴーレムはないようだったので、礼子はあらためて扉に向き直った。


「また邪魔が入ると面倒ですから……」


 解錠という時間の掛かる作業は諦め、礼子は再び『桃花』を抜き放った。

 今度は『超高速振動剣バイブレーションソード』モードにする。

 これにより、バターを切るように扉を切り裂くことができる。


 自分が通れるだけの穴を扉に開け、礼子はゆっくりと部屋へと足を踏み入れたのだった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日10月8日(木)は14:00に

  異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す

  https://ncode.syosetu.com/n8402fn/

  を更新します。

  こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。


 20201008 修正

(誤)自分が通れるだけの穴を扉に開けた、礼子はゆっくりと部屋へと足を踏み入れたのだった。

(正)自分が通れるだけの穴を扉に開け、礼子はゆっくりと部屋へと足を踏み入れたのだった。


 20210601 修正

(旧)『桃花』を腰部に突き刺して『制御核(コントロールコア)』からの魔導神経線を切断。

(新)『桃花』を使い『制御核(コントロールコア)』からの魔導神経線を切断。

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― 新着の感想 ―
[一言]  門番ゴーレムに対して、礼子が『桃花』を腰部に突き刺して『コントロールコア』からの魔導神経線を切断しているのですが、腰の部分に四本の腕への魔導神経線が通っているのでしょうか。普通に考えると『…
[気になる点] > 時速20キロくらい 台風でもそうですが、時速で言われるより、秒速で言われたほうがすっきりします。慣れの問題かもしれないけれど。 時速20km≒秒速5~6m。 因みに、アメリカだ…
[一言] >[我がゴーレムは、製作主クリエイターが作り出した傑作のはず。それが、こんな簡単に倒されるはずはない] > > 危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。危険。 > > あの小さ…
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