73-09 小競り合いの果てに、見出した道は
礼子対警備ゴーレム。その初手は警備ゴーレムからであった。
人間の目には見えないような速さで発射されたそれは……。
「『強制停止弾』ですか」
礼子のメイスに弾かれた小さな弾丸が、床に転がった。
念のため礼子は、それをメイスの先で潰す。
「それは効きませんよ」
『識別信号』を発して作動させない上、礼子の能力ならメイスで弾くこともできるのだ。
もちろん作動していても問題ないよう『反発させる』という対策もされている。今回は反発させるまでもなかったが。
「では、こちらも!」
今度は礼子が、瞬足の踏み込みからメイスによるかち上げを行った。
だが、そのメイスは空を切る。
……いや、メイスの中ほどから『断ち切られた』のだ。
4本腕のゴーレムの左上の腕には、鈍く光る黒い剣が握られていた。
「なるほど、それが『単分子ブレード』ですね」
半分になったメイスを手放した礼子は、背中の『桃花』を抜き放った。
「お父さまの技術と、そちらの技術、比べさせてもらいましょう!」
一旦背後に跳び下がってから、再度の突進。
左下から右上への斜め切り上げ。
対する4本腕ゴーレムは左上から右下への斜め振り下ろし。
『単分子ブレード』と『桃花』が激突した。
キン、という澄んだ音を立て、剣の切っ先が床に落ちた。
そう、『剣』の切っ先が。
「お父さまの、勝ちです」
礼子の『桃花』は『単分子ブレード』を切り裂き、4本腕ゴーレムの2本の左腕をも斬り飛ばしていたのである。
そして返す刀で残った2本の腕も切り落とす。
「そういえば、あなた方は脚を切るのが定番でしたね」
とどめとばかりに4本腕ゴーレムの脚も斬り飛ばす礼子。
これで文字どおり手も脚も出なくなったわけだ。
「済みませんが、しばらくそうしていてください」
動けなくなった2体にそう告げて、礼子は先へ進む。
目指すのはゴーレムが出てきた曲がり角の先だ。
そこにはやはり扉があった。それも、『白い』扉だ。
鋼鉄製の銀灰色をした床、壁、天井の中で、それはひどく目立っていた。
「なにかあるでしょうね……管理魔導頭脳ではなさそうですが」
この扉の奥も、『覗き見望遠鏡』では見通せなかったのである。
「……ここもロック機構は同じですね」
格別複雑な施錠はされていなかったので、簡単に開けることができた。
そして、開いた扉の奥には……。
「これは……」
墓標らしきものがあった。
礼子が墓碑銘を確認すると……。
「『ジェドエフ』『テプヘレス』『クフカエフ』『フェルヘテ』『ルサンク』『ルセネト』……『第1世代』の『始祖』でしょうね……」
室内は『白い』。
そこからしても、ここは間違いなく、『オエステ2』に関係する『始祖』の墓所のようだ。
「……申し訳ないことをしましたね」
礼子を拒んだ2体のゴーレムは、ここを守っていたことになる。
「後ほど……この基地を掌握したなら、きっとお詫びに伺います」
礼子は墓碑に向かって、仁に学んだ仕草……『合掌』を行い、一礼すると踵を返し、その部屋を後にしたのであった。
切断されたメイスを拾い上げ、工学魔法で接続し直す礼子。
そして動けないゴーレムにも『失礼いたしました』と声を掛け、礼子は来た道を戻っていった。
* * *
十字路に戻った礼子は、最初に来た道を引き返していく。
「なかなか辿り着かせてくれませんね……」
そして、最後のポイントは、『転移魔法陣のある部屋』。
そう、『ふりだし』の場所である。
そもそも、転移してきた『セルウス』を案内していった『A』『B』は、最初から間違った道へと誘ったのではないかと考えたのだ。
「最初に向かった方向が、既に間違った方向であるなら……」
正しい方向はどちらであるか、と礼子は考えた。
今、この場から礼子が進むべき方角は2つ。
誤った方角とは正反対にある通路と、誤った方角のすぐ隣りにある通路。2つに1つだ。
礼子はすぐ隣の通路を選んだ。
反対側、というのはあまりにも見え透いていたからである。
「……暗いですね」
通路は斜め下方へ延びており、照らす『エーテル発光体』の光量は低い。
が、礼子の目ならば全く問題はない。
そして。
「『強制停止弾』強制作動」
行く手を塞ぐ4本腕ゴーレムが数体いたが、それは『強制停止弾』を強制作動させることで無力化する。
「……こちらが正しい道のようですね」
それは、進むにつれ障害……立ち塞がるゴーレムが増えてきたゆえの推測である。
そしてついに。
「……『魔法障壁』」
行く手に『魔法障壁』が張られていたのである。
「おそらく、この先が……それではこれを」
ポケットからミスリル銀の被覆線を取り出す礼子。
それを『魔法障壁』から20メートルほど離れた場所にある壁の突起に結びつけ、そのまま障壁の内側へ。
再び20メートルほど進んだ場所にある壁の突起に結びつける。
これで『魔法障壁』を貫くアンテナ線を張り終えたことになる。
言い換えると、ミスリル銀線による『穴』を結界に空けたことになるのだ。
『老君、聞こえますか?』
試しに内蔵魔素通信機で蓬莱島へ連絡してみる礼子。
返事はすぐに来た。
『聞こえますよ、礼子さん。どうやら正しいルートを見つけたようですね』
『はい。魔導頭脳はまだ発見していませんが、時間の問題でしょう』
『そう願います。実は、状況が変化しました』
『何かあったのですか?』
含みがある老君の言葉が気になった礼子は、聞き返した。
返ってきた説明は、思いも掛けぬもの。
『……『オエステ1』が、4本腕ゴーレムに襲撃されています』
いつもお読みいただきありがとうございます。
20201007 修正
(誤)試しに内蔵魔素通信機で蓬莱島へ連絡して見る礼子。
(正)試しに内蔵魔素通信機で蓬莱島へ連絡してみる礼子。




