73-06 ようやく辿り着いた、その部屋は
『セルウス』が行く手を塞ぐ『オエステ2』のゴーレム3体を沈黙させた、その様子は、蓬莱島でも観察することができており、ラインハルトやビーナら技術者系の者たちの興味の的となっていた。
「ジン、今『セルウス』は何をしたんだい?」
「私たちも知らない新兵器があったの?」
「ああ、『強制停止弾』対策として、ちょっと思いついたものを搭載したんだが、思った以上にうまく行ったな。この後、蓬莱島でも採用しようと思う」
「で、どんなものなんだい?」
「うん、相手が所有している『強制停止弾』を、発射前に起動してしまうものさ」
「え……つまり、『識別信号』だったっけ? それも関係なしにかい?」
「そういうこと。だからあの3体は停止したんだ」
「なるほど……それは有効そうだな……さすがジンだ」
「だけど、あとの2体はな……」
この新兵器の魔力波は指向性があるので、『セルウス』の後ろにいる『A』と『B』には効いていない。
だが、『強制停止弾』の機能の中には『魔法無効器』と『魔力素除去器』があるので、対策をしていないゴーレムが不用意に近づくと停止してしまう。
その点、『セルウス』は対策済みであるから問題ないが、案内してくれた『A』と『B』はそうではない。
効果範囲を通ったら『魔法無効器』と『魔力素除去器』の効果で停止してしまうだろう。
「どうしたものかな……そうか」
『セルウス』の『魔法障壁』の効果範囲内にいれば大丈夫だ、と仁は思い至った。
* * *
仁と同じ結論に『セルウス』も思い至っていた。
『……『A』、『B』、私のそばに来てくれ』
〔わかった〕
『セルウス』は『A』と『B』を『魔法障壁』の効果範囲内に入れ、移動する。
どうやって3体を停止させたのか、と『A』と『B』に聞かれたが、当面は秘密だ、と返答しておく。
『A』も『B』もそれ以上は聞いてこなかったので、3体は先へ進んでいく。
『あの3体は管理魔導頭脳が直接操縦していたのか?』
『セルウス』が尋ねた。もしもそうだとしたら、今の行動は魔導頭脳に筒抜けになっているはずだからだ。
〔違うはずだ。管理魔導頭脳とは独立した、警備ゴーレム専用の魔導頭脳が操縦している〕
『なるほど。管理魔導頭脳の負荷を減らすためだな?』
〔そういうことだ〕
『だが、その……『警備魔導頭脳』から管理魔導頭脳に連絡が行くのではないか?』
〔……それはないと思う。というのも、そういった連絡を受け付けないほどに管理魔導頭脳はおかしくなっているからだ〕
『それほどなのか……』
ゴーレムに『焦り』という感情の産物はない。
それでも、『急がないと取り返しのつかないことになりそうだ』という推測は、『セルウス』たちの足を急がせた。
『この先は?』
辿り着いた先は行き止まりである。
〔隠し扉がある。しばし待たれよ〕
『A』がそう言って、壁の一部に掌を当てた。
〔『解錠』〕
すると1枚の壁に見えたそこに、人一人が通り抜けられるような丸い穴が開いた。直径は2メートルくらいだ。
〔これは、我ら旧型だけが開ける通路だ〕
『それは助かる』
旧型といっても馬鹿にできない特性を持っているようで、『セルウス』はこの出会いに感謝した。
通路内は十分に広く、歩きやすかった。
その上、内部はなんと『白』かったのだ。
『もしかして、ここは『第1世代』が作ったのか?』
〔そうだ。何かあったときのためにな〕
『そうだったのか』
どうやら『始祖』の『第1世代』は、不完全な管理魔導頭脳が不具合を起こした際に、邪魔されずに接近するための通路を密かに作っておいたらしい。
その叡智に感謝しつつも、『それならこういう魔導頭脳を放置するなよ』とも思う『セルウス』なのだった。
〔ここから出れば、あと僅かで管理魔導頭脳のある部屋だ〕
さすがに直接管理魔導頭脳の前に出られるということはなく、3体が出たのは使われていない空き倉庫のような場所だった。
〔ここからは普通に通路を行く〕
『距離は?』
〔30メートルくらいだ〕
その30メートルを行くのに、どれだけ労力が掛かることやら、と、通路に出た『セルウス』は思った。
というのも、管理魔導頭脳へと通じる通路が、警備用ゴーレムで埋め尽くされていたからだ。
『50体はいるな』
〔先程の手は使えるのか、『セ』?〕
『やってみよう』
『セルウス』は『強制停止弾強制作動』を発動させた。
〔おお〕
〔やったな〕
珍しく『B』も言葉を発した。専用回線で、だが。
『ふ、『強制停止弾』を所持していることが仇になったな』
〔それはいいが、これはまずいな〕
停止した50体が、相変わらず通路を埋め尽くしているのだ。
『魔法無効器』と『魔力素除去器』を防ぐ『魔法障壁』は物理的な効果はないので、停止したゴーレムに触れるほど近づいてしまうと、『セルウス』といえど停止してしまうことになる。
〔……仕方ない。風魔法でも使い、吹き飛ばしてくれ〕
『A』が言った。
管理魔導頭脳の修理が最優先なのだ。
『わかった。『風の大槌』……もう1回か。『風の大槌』……これでどうだ』
風属性魔法上級の中。こうした障害物を排除するにはもってこいの魔法である。
50体のゴーレムといえども、2回繰り返された風の暴力に吹き飛ばされ、通路の奥まで押しやられたのであった。
〔見事だな『セ』よ〕
『これで管理魔導頭脳までの障害はなくなったな?』
〔そのはずだ。行こう〕
3体は再び歩きだした。
そしてついに、管理魔導頭脳のある最奥部に到着。
〔ここだ。今開けるから待っていてくれ〕
『A』と『B』は、2体同時に扉に手を当てる。
どうやら何かの認証があるようだ、と『セルウス』は推測した。
そして扉が開く。
〔先に入ってくれ〕
『うむ』
『セルウス』が足を踏み入れたそこは……。
『……管理魔導頭脳はどこにある?』
何もないホールだったのだ。
〔……ここにはない〕
『何!?』
〔まんまと騙されたな。我らは貴様をここへおびき寄せるために協力するフリをしていたのだ〕
〔……管理魔導頭脳がおかしくなっているのは本当だが、そんなところへ外部のものを案内すると思うか?〕
『そうだったのか!』
〔……ここは爆発物などの危険物を処理するための部屋だ。いかに『セ』が強力だとしても破れまい〕
〔おとなしくしているんだな〕
そう言い残し、『A』と『B』は再び扉を締めたのだった。
『セルウス』は閉じ込められたのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20201003 修正
(誤)
〔『強制停止弾』を所持していることが仇になったな〕
『それはいいが、これはまずいな』
(正)
『ふ、『強制停止弾』を所持していることが仇になったな』
〔それはいいが、これはまずいな〕
(誤)〔……仕方ない。風魔法ででも使い、吹き飛ばしてくれ〕
(正)〔……仕方ない。風魔法でも使い、吹き飛ばしてくれ〕




