73-04 整備と強化はお手のもの
蓬莱島の方針としては、まずはラシール大陸西にある『始祖』の基地を全て掌握し、危険をなくすことである。
「……『オエステ2』にいきなり攻め込む、というのもリスクが高いかな?」
そんな仁の疑問に、ラインハルトが答える。
「高いな。それによって『オエステ3』や、他にもあるかもしれない基地が牙を剥く可能性がある」
「やっぱりそうか」
全ての基地を把握していない今、急進的な策は慎んだほうがよさそうだと仁は悟った。
「一歩一歩か」
「そういうことだね」
「だけど、『オエステ2』の沈黙が気になるぞ」
『長老』ターレスも、『オエステ2』は卓越した技術者である仁……実は分身人形……や、かつての主人である『始祖』を感じさせるマリッカ……これも分身人形だが……を欲し、独占しようとしている可能性があると忠告してくれている。
健全な魔導頭脳であればそのような行動は論理的ではないと判断できるのだろうが、仮に『禁忌』を犯し、人間の脳を一部コピーして使っているとしたら、それは怪しくなってくる。
欲望を達成するために手段を選ばなくなったり、増幅された欲望に支配されたりする可能性もあるのだという。
「そうだな……できるだけ早く『オエステ2』に様子を見に行くのがいいのかもしれないな」
「ジン、それなら……ええと……そうそう、『セルウス』をもう少し強化してやって派遣したらどうだろう?」
「ああ、ラインハルトのアイデアはいいな。私もそれを推すよ」
ラインハルトとルイスに言われ、仁もそのやり方がよさそうだと、早速実行することにした。
* * *
『オエステ1』にて、仁の操縦する『分身人形』、仁Dが、マリッカDと共に『モースク』に提案した。
「ひととおりゴーレムや環境の整備をしたけれど、『セルウス』も少し手を加えたほうがいいと思うんだ」
「『モースク』、是非そうしましょう」
『は、マリッカ様がそう仰るのでしたら』
こうしてあっさりと改造の許可は下りた。
仁D、マリッカD、礼子、職人1らは『セルウス』を呼び出し、停止させる。
『認証鍵は『オーリム』です』
「よし。『オーリム』『停止せよ』」
停止した『セルウス』を職人1が作業台の上に乗せる。
仁DとマリッカDは手早く外装を外していった。
その間に礼子は素材を準備している。
「やっぱり、少し劣化が始まっているな」
『セルウス』の全体を確認した仁Dが呟いた。
また、マリッカDも、外した外装を見て首を傾げる。
「ジンしゃま、この材質はなんでしょう? あまり見かけない金属ですが」
「どれ……お、これって複合材じゃないか。よく見てみろ」
「え? ……あ、本当でしゅね」
『巨大百足』のような、節足動物の甲殻と軽銀を張り合わせたもののようである。
甲殻は金属光沢を持っているので、ぱっと見た目には生体素材には見えなかったのだ。
「内部も見てみろよ。面白い骨格……というかフレーム構造をしているぞ」
「はい。……あ、これって球体関節ではないですね?」
「うん。……礼子、職人1、上半身と下半身をそれぞれが持って、引っ張ってみてくれ」
「はい」
「わかりました」
礼子と職人1は仁Dの指示通り、外装を外した『セルウス』の腕と足をそれぞれが引っ張った。
すると。
「あ」
「外れました」
『セルウス』は腰に当たる部分から、上下に分かれてしまったのである。
「ジンしゃま、これは?」
「腰に当たる部分の関節が固定されていないんだ。その代わり、外装で押さえているんだよ」
「あ、なるほど、そうですね。……どうしてこんな構造にしたんでしょう?」
「元々このタイプのゴーレムは上半身が重いから、その重さだけでも十分に腰関節が分離することを防げるだろうからな」
「ああ、なるほど、そうですね。腕が4本ある分、上半身が重いわけですよね」
「そういうこと。そして万が一にも外れないよう、外装で押さえてあるわけだ」
腰関節でロックするより、外装でロックしたほうが動きの自由度を高くできると判断したのだろう、と仁Dは説明した。
「その反面、外装を外すと……多分、壊されても、まともには動けなくなるだろうけどな」
「ああ、わかりましゅ」
そんな説明をしながらも、仁Dの手は止まらない。
1分ほどで『セルウス』の本体部分はバラバラに解体された。
「よし、複製工程で強化していくぞ。骨格は軽銀から64軽銀に変更する。礼子、素材を頼む」
「はい、ここに」
軽銀にアルミニウムを6パーセント、バナジウムを4パーセント混ぜた合金が64軽銀である。
仁Dは『合金化』を使い、軽銀を64軽銀に変えていく。
その際増えた分の体積はちゃんと『分離』で調整している。
ちなみに、『オエステ1』にはアルミニウムのストックがなかったので、そちらは蓬莱島から転送機で取り寄せた。
「骨格はこれでよし。あとは『強靱化』を掛けて、と……」
「ジン様、『魔法筋肉』の準備ができました」
「お、ありがとう、マリッカ。……よし、変更していこう」
4本腕の分、全体の構造が異なるので、若干時間が掛かったが、5分ほどで全身の『魔法筋肉』は金属系ではあるが蓬莱島仕様に近いものに置き換えられた。
マリッカDを通じてマリッカに『セルウス』の構造を理解してもらう目的もあったので、仁Dにしてはゆっくりと作業をしたのである。
「『魔力反応炉』をちょっと強化して、『魔導神経線』も経路を増やして、視覚センサーもグレードを上げて……」
「こ、これでいいでしゅか?」
「うん、上等」
次第に作業速度を上げていく仁Dだが、マリッカDもなんとか喰い付いている。
「『制御核』もデバッグしておこう」
『セルウス』は『モースク』による操縦モードと、自律モードがある。そこで仁Dは自律モードに使われる制御核のデバッグを行い、性能を向上させておいた。
加えて、『強制停止弾』対策も施しておく。
「あと……そうだ、あれも付け足しておくか」
それとともに、ちょっと思いついた新機能を追加したのである。
そして最後に、見たもの聞いたものを蓬莱島でモニタリングできるようにし、連絡用の『魔素通信機』も内蔵する。
「職人1、外装のグレードアップはどうだ?」
「先程終了しました」
「よし。礼子、取り付けを手伝ってくれ」
「はい、お任せください」
すべての作業を終えるまでの所要時間は50分弱。
再起動はマリッカDに任せた。
「『起動せよ』、『セルウス』」
「……はい、マリッカ様」
「調子はどうですか?」
「はい、これまでにないほどにいい調子です。ありがとうございます」
「『モースク』、どうだ?」
『……ジン殿、マリッカ様、さすがです』
仁Dの常軌を逸した腕前に、『モースク』は完全に脱帽のようである。
「新生『セルウス』を『オエステ2』に送り込みたいんだが、『モースク』はどう思う?」
いよいよ仁Dは、他の基地を攻略する一歩を踏み出さんとしていた。
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本日10月1日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20201001 修正
(誤)多分、壊されても、まともには動けなくなるだるけどな」
(正)多分、壊されても、まともには動けなくなるだろうけどな」
る→ろう




