73-03 常軌を逸した魔導頭脳は
『仁ファミリー』の会議は、そろそろ一旦終了するかという雰囲気になっていた。
「とりあえずまとめてみよう」
「あ、ちょっと待ってくれ、仁」
「グース、どうした?」
「マリッカさんがマリッカDを操縦している間に、もう1つだけ確認してほしいことがあるんだ」
「はい、なんでしょう?」
「彼らの最終目的が何だったのか、とね」
「わかりました」
マリッカは、マリッカDの口を借り、『モースク』に尋ねた。
『はい、マリッカ様。それは……』
* * *
『彼ら』とは、『始祖』の中の『侵略派』という派閥のこと。
その名は、何を意味するのか。
『始祖』は、基本的に争いを好まず、平穏を好む種族であった。
その中にあって『侵略』とは何を意味するのであろうか。
それは、『文化的な侵略』そして『生存圏の侵略』である。
もちろん、他の『始祖』たちも、アルスに移住した以上同じようなことを行っている。
が、『侵略派』は、積極的にそれを行おうという一派だった。
だが、幸か不幸か、彼らが選んだラシール大陸には、先住民は住んでいなかったのである。
そのため、『文化的な侵略』は他の派閥が行っている、という皮肉な事態になっていたのだ。
そんな中にあって『第1世代始祖』は、あくまでもこのアルスを自分たちのために、また自分たちの子孫のために『ヘールナイズ』しようとしていた。
少しでも『惑星ヘール』に近づけようとあれこれ画策したのである。
* * *
「なるほど、やはりというか……『アルス』を『第2のヘール』としたかったわけだな」
グースも納得したようだ。
「具体的な計画はどうだったんだろう?」
「では、それも聞いてみますね」
マリッカは再びマリッカDを使い、『モースク』に質問を行った。
『はい、マリッカ様。『第1世代』の方々が行ったことですが……』
* * *
その1つが『惑星管理魔導頭脳』の建設だった。
ヘールでは、『微気象』(地表面にほど近い部分における大気現象で、生物の生活や農業・建築などに大きく影響する)の調整が魔法技術によって行われていた。
具体的には雨、風、霜などの調整だ。
豪雨や強風、極端な低温を緩和する程度ではあるが、そのおかげで自然災害はほとんどなく、熱帯夜や真夏日もなく過ごせていた。
だがこれは、アルスでは失敗した。
ヘールとアルスでは、気象条件が異なり、同じやり方でも効果が異なってしまったからである。
時間を掛けて気象データを集めなければ、実用になるものではなかったのだ。
仕方なく、建造した『惑星管理魔導頭脳』は他のことに使うことになった……。
* * *
『……申し訳ございませんが、それが何に使われたかはわかりません』
「いえ、構いませんよ。ありがとう」
これでまた1つ、過去の謎が明らかになってきた。
だが、問題点も出てくる。
「その元『惑星管理魔導頭脳』、どこかにあるよなあ……」
かつて、『オノゴロ島』の管理魔導頭脳『テスタ』も、巨大台風を発生させ、ローレン大陸を蹂躙しようとしたこともあったのだ。
「……もしかして『テスタ』がそうなのかもな」
「あ、その可能性はあるね、おにーちゃん」
「だとしたら、1つの謎は解けるんだが……あとでマリッカから『テスタ』に聞いてもらおうかな」
しかし、結果から言えば、この確認は意味をなさなかったのである。
というのも、『テスタ』には『オノゴロ島』の設置された以前の情報が皆無だったからだ。
消去されたのか、あるいはここで作られたからか、それすら判然としない。
この問題は、もう少しあとを引きそうであった。
* * *
「さて、それじゃあお昼を食べながらのんびりしよう」
会議も一段落。場所は食堂なので、『仁ファミリー』のメンバーはそのまま昼食だ。
今日はナポリタンだ。
「シンプルだけど美味しいわよね」
「そうそう。作る人によって微妙に味が違うのも面白いわ」
「でも、どうしても口の周りが赤くなるのよね」
「それに服に付くとすぐ洗わないと落ちなくなるし」
などとわいわいやりながら昼食が進む。
飲み物はさっぱりとラモンスカッシュだ。ラモン(レモン)の絞り汁を炭酸水で割り、少しだけ砂糖を加えて酸味を調整したもの。
ファミリーメンバーは皆大好きな飲み物である。
ただし『長老』ターレス、ネージュ、ルージュらはペルシカジュースだが。
食堂にのんびりした時間が流れる……が、まだまだそのまま流されるわけにはいかない。
「……今後の計画を立てないとな」
「くふ、そうだよねえ。このままのんびり……とはいかないねえ」
「ん、早くケリを付けて、またみんなで楽しいことを計画したい」
「その日のために頑張らなくちゃだなあ」
そんな『仁ファミリー』の様子を見て、ターレスは少しだけ微笑んだ。
「よいな、ジン殿たちは。けして怠惰にならず、頽廃することもなく、活動的で、意欲的だ」
「そうですか?」
「うむ。願わくば、そのままでいてほしいものだな」
頽廃して滅亡の途を歩んだ『始祖』の轍は踏まないで欲しい、とターレスは願うのだった。
* * *
「まずは『オエステ2』のことだな」
と言うラインハルトに答えたのは仁。
「うん。……『モースク』が連絡をしたのに何も反応しないというのが気になるんだ」
「だなあ。それまではゴーレムの貸し借りをしていたらしいのにな」
「うん。何があったのか気に掛かるよな」
そこに、老君の声が響いた。
『御主人様、皆さん。『オエステ2』ですが、『オエステ1』への侵攻を企てている可能性もありますのでご注意ください』
「侵攻!? なんで?」
『御主人様やマリッカさんを奪取するためです』
「どうしてそうなる」
仁のこの疑問に答えたのはターレス。
「ジン殿、ジン殿はこう考えているのだろう。……『友好的に接してくれれば、いつでも訪問するし、修理もするのに』と」
「ええ、まあ」
仁としては、味方になってくれれば、修理や整備を行うことは吝かではない。
なのに、わざわざ侵攻してくるという考えは論理的ではなく、理解できないのだ。
「そこだ。暴走している、バグがある、動作不良を起こしている……ゆえに常軌を逸した行動をしかねないというわけだよ」
「確かにそうですね」
忠告を受け止めた仁は、警戒を強めるとともに、次の行動をできるだけ早く起こそうと心に決めたのであった。
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本日9月30日(水)は13:00に
『蓬莱島の工作箱』 https://ncode.syosetu.com/n0493fy/
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