73-02 謎の解明、遅々として
『モースク』による説明で、少しずつラシール大陸西部の過去が明らかになってきた。
だが、まだまだ謎は多い。
今は一歩一歩謎を解明して行かなければならない。
「マリッカ、『メメンタス』について聞いてみてくれないか?」
「あ、はい、わかりました」
『メメンタス』という存在もまた、依然として謎のままであった。
だが。
『申し訳ございません。『メメンタス』に関しましては、名前のみしか知らないのです』
という返答だったのだ。
「うーん、わからないままか」
「もしかすると、それが第4、第5の魔導頭脳かもしれぬな」
『長老』ターレスが言った。
「その可能性は高そうですね」
「決めつけはよくないがな」
保留事項も多々あり、なかなか全体像が把握できないのが難点である。
仁たちはさらなる謎について考えていく。
「『少年3人』と言っていたな」
「うん。そうすると、あと2人……男女1人ずつはどうしたのか、気になるな」
ルイスとラインハルトがそんなことを言い合い、また仁は仁で、
「『第1世代』は何をどうしたんだろう?」
と、疑問を口にしていた。
それらはマリッカの耳に入り、マリッカDの口を通じて『モースク』に投げ掛けられた。
* * *
『——『第2世代』の中で、男性1人と女性1人は仲がよく、他の3人とは少しだけ考えが違っていました』
そのため、ある時2人は『パンドール大陸』に移住することを選んだのだという。
その後の2人のことは、『モースク』には記録されていない。
『第1世代』はラシール大陸のどこかに施設を建造し、そこに自己修復機能を備えた魔導頭脳を設置したという。
その施設がどこにあるかは『モースク』はじめ『オエステ2』『オエステ3』の魔導頭脳にも知らされていない。
「これで、少しは安心できるかな?」
「少しは、な」
「だが、まだまだ不安だ」
その頃になると『第2世代』の3人はもはや青年となっていた。
『引きこもり』だった『第1世代』とは違い、『インドア派』程度の『第2世代』は、時折パンドール大陸に移住した同期2人に会いに行っていたが、いつ頃からか交流はなくなる。
3人は『第1世代』が危ぶむほどに唯我独尊的な性格になっており、自分たちがこのアルスを教化し、導いていくのだという根拠のない自信に囚われ始めていた。
ラシール大陸北東部に居を構えた『始祖』たちと袂を分かったのもこの頃だった。
しかし『第1世代』には、そんな3人を諌めることのできる者はいなかった。
そもそも、『子供の教育』が下手な者ばかりだったのである。
「我々の育て方が間違っていたようだな」
「うむ、だが、今更どうしようもない」
「3人が、いつか自覚してくれることを願うばかりだ」
せめてものサポートとして何かあったときのために、研究に研究を重ねたゴーレムを大量に作っておくことにした。
そんな『第1世代』の親心も、3人は鼻で笑い飛ばしていたという。
* * *
「……典型的な悪ガキだな」
仁がぼそっと呟いた。
「原因はいろいろあるんだろうが……今それを言ってもどうしようもないしな」
過去は変えられない。ならば今は未来を考えようと、仁は改めて思い直した。
「だがこれで、5人いた『第2世代』のうち2人は、ラシール大陸ではなくパンドール大陸に基地を作ったことがわかったな」
ラインハルトが、疑問の1つが解けてスッキリした、と言った。
* * *
そしてもう少し『モースク』の説明は続く。
『他の2つ、『オエステ2』と『オエステ3』も、おそらくは『オエステ1』と同じような状況であると思われます』
とはいえ、『オエステ2』と『オエステ3』はそれぞれに特徴を持っているという。
『オエステ2』は攻撃力特化。そして『オエステ3』は生産力特化、だとのことだった。
ならば、『オエステ1』は?
……答えは『思考力』なのだそうだ。
「……あれで?」
劣化していたことを差し引いても、とても思考力を誇れるような出来とは仁には思えなかった。
「……悪ガキの秘密基地かな」
つい、そんな言葉が口をついて出てしまう。
「なんだい、それ?」
小さな呟きだったが、隣りにいたラインハルトには聞こえたようで、聞き返してくる。
「いや……子供の頃、木の上とか橋の下とかに、古材や木の枝やダンボールやらを使って自分だけの掘っ立て小屋を作って『秘密基地』って称する遊びがあったんだよ」
「ふうん……ちょっとわかる気もするが」
「ああ、俺はやったな」
「お、グースはわかるか?」
「わかるわかる」
どうやらグースは、子供の頃に似たようなことをした経験があるようだった。
ちなみに、蓬莱島には『ダンボール』が存在しているので、仁の説明は皆理解してくれている。
「……ええと、それはともかく」
話が脱線しかけたので、仁は軌道修正した。
「『オエステ』1から3が、『第2世代』が興味本位で作ったものかもしれないなあと思ったんだよ」
だが、意外と出来がよかったのでそのまま実用に供したのではないか、と仁は説明した。
「うむ……当たらずと言えど遠からずかも知れぬな……」
『長老』ターレスは仁の考えを支持した。
「『第2世代』つまり子供たちに技術を教える一環として地下基地を作らせた、という可能性は十分にありえる。また、『第2世代』が興味を持って作ってみた、ということも考えられる」
そう考えると『始祖』の基地にしては魔導頭脳の性能が低いことの説明になる、とターレスは言った。
「作戦の立案時にはそれも考慮するのがよいと思う」
「……難しいですね……つまり、不確定要素のウエイトを増やすということでしょうか?」
ターレスの言葉に、ルイスが反応した。
「おお、そう言ってよいだろうな。つまるところ、臨機応変に対処できるような、柔軟性の高いものにする必要があるということだ。思い込みはよくないからな」
「わかりました」
ある意味、非常に厄介な相手といえるかもしれない……と、『仁ファミリー』の面々は思ったのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20200929 修正
(旧)
どうやらグースは、子供の頃に似たようなことをした経験があるようだった。
(新)
どうやらグースは、子供の頃に似たようなことをした経験があるようだった。
ちなみに、蓬莱島には『ダンボール』が存在しているので、仁の説明は皆理解してくれている。




