72-53 転移門設置
驚く『モースク』を尻目に、仁Dは雑用、いや家事用ゴーレム20体を製作した。
ベースはゴーレムメイドだ。
こちらも、出力は本家5色ゴーレムメイドの3分の1くらいである。
それでも『セルウス』よりは強いであろう。
彼女らの名前は『メイデン』1〜20となった。
* * *
「『モースク』、この基地内は鋼鉄でできているのにサビ1つない。誰がメンテナンスしているんだ?」
今の『オエステ1』のゴーレム事情で、ここまでの整備ができるはずがないと仁Dは質問したのだ。
『うむ、そこに気が付いたか。実は、『オエステ2』から時折整備用のゴーレムが来てくれるのだ』
「ん? それって、行き来できるルートがあるということか?」
『そうだ。専用の転移魔法陣がな』
「へえ」
これは朗報であった。いざとなればそのルートを使って『オエステ2』に乗り込むことができる。
だが、問題もある。『転移魔法陣』は起動に時間が掛かり、また、1度に送れる人数が少ないのだ。平時ならともかく、戦時用には向かない。
しかも、『オエステ2』からもこちらへ来ることができるわけだ。
もしも攻め込むとなったなら、その『転移魔法陣』は閉鎖し、専用の『転移門』を設置する必要があるな、と、仁Dは考えた。
「転移魔法陣の話が出たから相談するが、こちらへ助手ゴーレムを呼び寄せてもいいだろうか?」
ここまで信頼を得たからには、そろそろ切り出してもいいだろうという判断である。
『うむ、いいだろう。ジン殿を見くびっていた。それは謝罪する』
「気にするな」
と言いながらも、仁D……今現在は老君が操縦なので老君……は驚いていた。
『始祖』が作った魔導頭脳が謝ったのである。
だが、ここで焦ってはいけないと、慎重な物言いを心掛ける老君。
「では、礼子を連れてきたと同じように地上に出て、2体のゴーレムを呼んできてもいいか?」
『許可する。『セルウス』を案内に付けよう』
「ありがとう」
許可を得たので仁Dは地上に出、『ペガサス2』からやって来ていた『職人1』と『ランド1』を呼び寄せたのであった。
ちなみに、『ペガサス2』で待機する『職人』と『ランド』は交代しており、今回はナンバーが『1』の2体が担当していたのである。
こうして『オエステ1』には、仁D、礼子、職人1、ランド1が揃ったのである。
同時に、『転移門』を組み立てるに必要な資材も持ち込むことができたのであった。
* * *
職人1とランド1が加わったおかげで、仁Dの作業効率は大幅に増した。
できたばかりの技術系ゴーレム『テクト』もいるが、これまで積み重ねた知識と経験の点において、やはり蓬莱島勢に軍配が上がるのだ。
仁Dはさっそく『オエステ1』内を再整備していく。
大まかな作業は『テクト』に、片付けや掃除は『メイデン』に。
そして仁Dと礼子、職人1は不具合の出始めていた各種設備を修繕していったのである。
同時に、多少の居住性も向上させた。
最低限しか行われていなかった空調を修理し、水回りを完璧にし、居住性を向上させた。
「これで少しはマシになったな」
『うむ……流石であるな』
そろそろ、例の交渉をしてもいい頃かと、仁Dは『モースク』に提案を行う。
「『モースク』、もう1つ提案がある」
『うむ、何だ?』
「転移門」を設置したいのだが」
『何!? 貴殿は転移門も作れるのか?』
「もちろん」
『うむう……それを使ってどうする気だ?』
「ここからの出入りが楽になるからな。それにマリッカを招くこともできるぞ」
この言葉は効果があったようだ。
『マリッカ……様というのは、あの『魔結晶』の?』
「そうだ」
『うむむ……よし、小型のものであれば許可しよう』
「それは助かる」
『ただし、『転移門』の部屋には警備用ゴーレム2体を常駐させるぞ』
「それは当然だな」
言質をとったので、仁Dは早速『転移門』の設置を開始する。
場所は、これまで資材で埋まっていた倉庫の1つ。
続けてのゴーレム製作で、ちょうど1部屋分が空になったので整理をした結果である。
もちろん『モースク』には許可をとってある。
「小型だからこいつでいいだろうな」
用意したのは定員5名用のもの。蓬莱島基準でいう『小型転移門』である。
ちなみに『中型』は馬車が送れるもの、『大型』は『ペガサス2』クラスの航空機を送れるもの。
『超大型』になると『コンロン3』クラス、そして『超々大型』が宇宙船用となる。
また、小さい方は、『小型』が人間、あるいはゴーレム数名用。『超小型』が人間1人用。『超々小型』は、人間だと四つん這いでないと通れないもの、となる。
今回設置したのは『小型』だった。
『転移門』の設置は10分で終了した。
「これでマリッカを呼べるな」
実際に呼ぶのはマリッカDだが、『モースク』がどんな反応を見せるか、興味があった。
そこでまず、『モースク』に準備が終わったことを知らせると、
『さすがに早いな、だが、あれが小型なのか?』
と言われてしまったので、仁Dは大きさの分類を説明して聞かせたのだった。
* * *
蓬莱島では、そうしたやり取りも記録され、分析されている。
「しかし、『モースク』の考え方はかなりアバウトなことがあるな」
ラインハルトが呆れたように言う。
『転移門』設置について、仁に『小型で』とだけ言い、その定義について説明しなかったあたり、論理的ではないと考えたからだ。
「ああ、それは思った」
「……」
「ターレスさん? 何か気になることでも?」
何か言いたげな『長老』ターレスの様子を見て、仁が尋ねた。
「いや……吾の考えすぎならいいのだが……」
「何がです?」
「……『モースク』がアバウトな考えをする、という理由にだ」
「わかるんですか!?」
『長老』ターレスに急き込んで尋ねたのはラインハルト。
「うむ。……これは、吾が前の『主人』にお仕えしている時は『禁忌』だったのだが……」
ターレスはゆっくりと語りだした……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20200926 修正
(誤)「早いな。さすがだな。だが、あれが小型なのか?」
(正)『さすがに早いな、だが、あれが小型なのか?』
(誤)また、小さい方は、『小型』が人間数名用。
(正)また、小さい方は、『小型』が人間、あるいはゴーレム数名用。




