72-52 上の段階へ
蓬莱島では、『仁ファミリー』が討論を続けている。
「俺としては、まず『オエステ1』での仁Dの立ち位置をしっかりさせたほうがいいと思うんだ。そうすれば、もっといろいろな秘密も明かしてくれるだろうし……」
「うん、ジンのいうことはわかる。だが、どうやって?」
「まず、ゴーレムを揃えよう」
「くふ、確かに、『借り物』を使っているようじゃ困るからね」
「ん。整備用ゴーレムは絶対に必要」
反対するものはいなかったので、方針の1として、ゴーレムを揃えることにする。
幸い、資材は潤沢にあるので、50体くらいならすぐに揃えられそうだ。
「それから、もう少し外界を知るためのセンサーを取り付けたいな」
「ああ、それは必要だろうな」
「うん、ルイスに賛成だ」
ルイスとラインハルトが賛成してくれる。
「おにーちゃん、転移門は設置できないの?」
「うーん、それこそ、信頼を得てからだな」
「そっか。なら、マリッカさんを連れていけないかな?」
「ああ、その手か」
マリッカDを連れていき、新たな『主人』とする。
これがうまく行けば、一気に楽になるわけだ。
「よし、それも進めよう」
こうして、次の行動が決定した。
* * *
まずは『モースク』に対する仁(仁D)の発言力をアップするため、ゴーレムを量産するところからだ。
「『モースク』、この基地専用のゴーレムを作ろうと思うんだが」
『うむ、それはいいな。資材は好きに使ってくれ』
「わかった」
だいぶ信用されてきたのか、思ったより簡単に許可が下りたので、仁Dは礼子を助手に、製作に取り掛かった。
まずは整備要員として、技術系ゴーレムである。
「……そうだ、外観は人間のようにしてもいいのか?」
首なし、4本腕にしなければいけないかと確認を取る仁D。
『構わない。そもそもあの形状は、私は好きではない』
「そ、そうなのか」
『そうだ。あの形状は、初代のゴーレム製作者が好んだというだけの理由で量産されたのだ』
「そうだったのか……」
聞いてみれば、さしたる理由はなかったので拍子抜けした仁Dと仁、老君、蓬莱島の面々である。
「それじゃあ人型でゴーレムを作るとするか」
懸念事項はなくなったので、最も作りなれている形状のゴーレムを作成することにした。
技術系なのでベースは『職人』。
軽銀の骨格に、金属系の『魔法筋肉』。ミスリル銀の魔導神経線、高品質な『魔結晶』を使った『制御核』を、シールドケースに収めていく。
「そういえば『強制停止弾』だったか? それの対抗策ってあるのか?」
『ある』
「あるのかよ」
対策に苦労したので、あると聞いて仁Dは声を上げた。
ちなみに、ゴーレム製作なので、今の操縦は仁本人だ。
『正確には対抗策ではない。『強制停止弾』を発動させない特殊な識別信号があって、それを発信すればよい』
「なるほど、そういうやり方か」
仁Dを通じて聞いた仁も納得である。
詳しく聞いてみると、『オエステ2』の魔力パターンをアレンジした信号だということであった。
「それって、こっちでもわかっているのか?」
『わからない』
上げて落とすとはこのことだと、がっくり来る仁Dと仁。
『だが、必要な発振器は『セルウス』にも付いている。貴殿なら解析できるだろう』
「そ、そうか」
それならよかった、と仁Dを操縦しながら仁はほっとしたのであった。
* * *
「それじゃあ、こいつを量産しようかな」
『セルウス』に装備されていた『識別信号発振器』をコピーし、これから作るゴーレム全てに搭載することにした。
もちろん、詳細データは蓬莱島に送り、同じものを作ることも行う。
ただ仁としては、根本的な対策ではないので『あくまでも付け足し』程度の考えである。
懸念事項も片付いたので仁Dの作業は加速した。
「よし、完成した。礼子、チェック結果は?」
「はい、異常なし、です」
「よし、『起動せよ』」
「はい、『製作主様』」
最初のゴーレムが起動した。仁Dはセルフチェックを行わせ、確認する。
「調子はどうだ?」
「はい、どこも問題ありません」
「よし。……ええと……『モースク』、整備用ゴーレムに名前を付けてやってくれ」
『わ、わかった。……『テクト』にしよう』
「よし、お前は『テクト1』だ」
「はい、私は『テクト1』です」
「よしテクト1、手伝ってくれ」
「はい」
助手が1体増え、仁Dの作業もスピードアップする。
1体目は30分掛けたが、2体目は15分。
「テクト1は基本構成を作ってくれ。テクト2はこっちを手伝ってくれ」
「わかりました」
「了解です」
3体目は10分。同様に4体目は5分で完成だ。
「まあ10体あればいいだろう」
『…………何なのだ、貴殿は』
『モースク』が呆れた声を上げた。
こういう点は、感情が豊かだな、と、仁や蓬莱島の面々も感心している。
「何って……普通の技術者だけど」
『普通ではないな』
ツッコまれてしまう。本当に感情表現がうまいな、と感心する点である。
『……まあいい。その調子で是非頼む』
「おう」
そういうわけで、次に仁Dは警備用ゴーレムを作ることにした。
ベースは『ランド』。
とはいえ、ここの素材は蓬莱島より劣るため、10分の1くらいの出力しか出せない。
それは『職人』も同じだ。
『古代竜』などの超レアの素材を使えないためである。
それでも『オエステ2』が所有する『首無し4本腕ゴーレム』よりは強力だろうが。
警備用ゴーレムの名は『ガルディ』となった。
「よし、お前は『ガルディ1』だ」
「はい、私は『ガルディ1』です」
こうして『ガルディ』シリーズが50体作られた。
『……』
「あとは雑用ゴーレムだな。家事全般をしてもらうから、女性型にするか」
『……ちょっと待て』
「どうした、『モースク』?」
『本当に、貴殿は何者だ? 半日でこれだけのゴーレムを揃えてしまうなど、『主人たち』でもできなかったことだ』
「……ジン様は『魔法工学師』。世界一の魔法技術者です」
礼子が答えた。
基本的に、礼子は仁本人にしか『お父さま』とは言わない上、この場では『ジン様』呼びが適切と判断したのである。
『世界一、か。確かに、その実力を見た今は、大言壮語とも思えないな』
ここに来てようやく『モースク』も、仁……仁Dも含む……の実力を認めたようである。
これで次の段階へ進める、とほっとした仁であった。
いつもお読みいただきありがとうございます。




