72-51 オエステ基地の真実
どうやら『オエステ基地』というのは、幾つかの施設の集合体らしい。
『オエステ1』の管理魔導頭脳『モースク』によれば、『ジョナール基地』を作った『始祖』と同世代が建設した地下基地がベースになったという。
それが3000年ほど前。
その後、アルスで生まれた第2世代の『始祖』は5名おり、それぞれに自分の基地を作ったのだという。
その1つが、いま仁Dがいる『オエステ1』だ。
『他の2つも、おそらくは不具合が生じていると思う』
客観的に見て、自分と同等程度の出来のはずだ、と『モースク』は断定した。
* * *
「……そんな状況だったのか」
予想を超える事態に、蓬莱島で聞いていた仁をはじめ、『仁ファミリー』のメンバーも渋い顔だった。
「状況を整理しよう」
仁Dの操縦は老君に任せ、仁はファミリーのメンバーと検討会に入った。
「まず『オエステ基地』というのは3つの基地の複合体だった、ということだな」
……と仁が切り出したのだが、老君が即座に忠告を行ってきた。
『御主人様、3つと限定しないほうがよろしいかと存じます』
「どういうことだ?」
『はい。『第2世代』の『始祖』は5名ということでした。なのに基地が3箇所。もちろん、そのうちの2箇所は2人で協力したという可能性もありますが……』
「個人主義の『始祖』だから、そうではない可能性が高いということか」
『はい。加えて、『第1世代』の『始祖』がいた施設も残っているはずです』
そこが『基地』と呼べるのかどうかはまだわからないが、今の時点で5箇所以上の拠点または施設が残っていることを前提にしたほうが、よりリスクが少ないでしょう、と老君は結んだ。
「なるほどな……」
『オエステ基地』の危険性をなくす、という最大の目的を忘れてはならないのだ。
基地を作った『始祖』が、どういう思想を持っていたか、アルスの先住民をどう考えていたか、それはわからない。
が、いずれにしても今の時代にはそぐわない点が多々あることは間違いないだろうと思われた。
「そういう点では『オエステ1』がまあ、味方になってくれそうだな」
「うん。ジンが修理したわけだから、潜在的な味方と言っていいだろう」
信頼関係も構築できてよかった、とラインハルト。
「そうなると、他の基地がどうなっているか、だな」
ルイスの言葉に、皆が頷いた。
「……『モースク』の説明によれば、『第2世代』の5人はだいたい同年代で、技術力としてはほぼ同レベルだったということだが……」
「くふ、それをそのまま信じていいのか、ということだね」
「ん。それに、もしも2か3が、2人で基地を作っていたら、おそらく完成度はより上」
「あー、エルザおねーちゃんの言うとおりだと思う。そのあたりは要確認だね」
女性陣も鋭い意見を述べてくれる。
「ジン、修理要員はいないの? もう故障して動かないのかしら? それに、他にゴーレムはいないの?」
ビーナも率直な意見を述べた。
「『転移魔法陣』で自爆させたのだから、ゴーレムを大量に保有していると思ったんだけど」
「だよな。俺も疑問に思った」
『御主人様、自爆したゴーレムは、別の基地に所属しているのです』
ビーナと仁の疑問に、老君が意見を述べた。
「その可能性もあるのか」
『いえ、たった今、確認しました』
* * *
仁たちが検討会を行っているのと同時並行で、老君は仁Dを操縦し、『モースク』から情報を引き出していた。
「『モースク』、この基地にゴーレムは何体いるんだ?」
『……4体だ』
「は?」
『この基地には雑用ゴーレムが3体と、そこにいる『セルウス』1体だけだ』
「ええ……?」
それでは、『9』『10』と共に自爆したのはどこのゴーレムだったのだろう、という疑問が生じる。
もちろん老君は、仁Dを通じてすぐに質問を行った。
『あれは『オエステ2』の管理するゴーレムだ』
「そうだったのか」
『そうだ。私『オエステ1』と『オエステ2』は、互いに連絡を取り合い、情報の一部共有を行い、地上部警備の任を担ってきた』
「なるほど、そういうことか。すると、『オエステ2』はどのような状況にある?」
『よくない。修理される前の私と同じかそれ以上に不安定だ』
「だろうな」
そうすると、『オエステ2』も、できるだけ早く修理したほうがいいのではないか、と仁Dが言うと、『オエステ1』はそれを肯定した。
『だが』
『オエステ1』はさらに続ける。
『……『オエステ2』は2000体を超えるゴーレムを有している。それらが全て、暴走した『オエステ2』に指示を受けているとすれば、到底近づけるものではないぞ』
「いや、情報さえあれば、不可能ではない」
仁Dは自信たっぷりに言った。
『情報とは?』
「まず、『オエステ2』のある場所。それから施設の構造。トラップなどはあるのか、フロアの隔壁は作動するのか、などだな」
『なるほどな。場所は教えられる。構造は、基本的にはここと同じはずだ。後付けの施設に関してはわからん』
「『オエステ2』の魔導頭脳のところまで、安全に行くことはできないのか?」
『……罠はないが、2000体を超えるゴーレムが行く手を塞いでくるだろう』
「自爆を仕掛けてくるか?」
『基地内では自爆はしないと思う』
「そのゴーレムの強さは?」
『一番強いもので、貴殿らが『シク』と呼んでいたものの倍くらいだ』
「何か特殊な武装はあるか?」
『相手ゴーレムを強制停止させる『強制停止弾』と、『強化単分子ブレード』だな』
この説明を聞く限りでは、先日『ジョナール基地』の『2』を停止させ、両脚を切り落としたのは『オエステ2』に属するゴーレムのようだ。
「うーん……だが、先日の会話では、そのゴーレムはこちら……『オエステ1』の所属のような言い方だったようだが?」
『それは、『オエステ1』と『オエステ2』が、連携しているからだ』
「連携?」
『そうだ。ここ100年くらいの間に、地上部で所属不明なゴーレムを見かけるようになった。そのため警戒度が上がったのだ』
その『所属不明なゴーレム』というのは、おそらく『魔法連盟』が放った、礼子を破壊する命令を受けていたゴーレムであろう。
仁たちが危惧していたように、やはりこちらの安全基準に抵触していたようだ。
「そうすると、『オエステ1』と『オエステ2』の魔導頭脳は情報を共有しているということか?」
『概ねそうなる』
「概ね?」
『そうだ。それぞれが、相手に渡したくない情報は遮断できるからな』
「なるほど。で、『モースク』が修理された情報は?」
『知らせた。が、何の反応も返ってこない』
「どう捉えているのやら……うーむ」
なかなか複雑な関係のようだな、と老君は攻略法を検討していくのであった。
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本日9月24日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20200924 修正
(誤)「あー、エルザおねーちゃんの言うとおりだと思う。そのあたりをは要確認だね」
(正)「あー、エルザおねーちゃんの言うとおりだと思う。そのあたりは要確認だね」
(旧)『そうだ。それぞれが、相手に渡したくない情報はシャットできるからな』
(新)『そうだ。それぞれが、相手に渡したくない情報は遮断できるからな』




