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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
72 オエステ基地潜入篇
2725/4395

72-45 訪問?

 暴走してはいても、『セルウス』はなんとか話し合いができるようだ。ただし、『セルウス』側の利益になるようなことしか認めないだろうと仁は推測した。

 従ってこれからの『セルウス』との交渉は、より慎重にいかねばならない、ということで、仁は仁Dの操縦を老君に預けることにしたのである。


「頼む、老君」

『はい、御主人様(マイロード)。お任せください』


*   *   *


 仁と交代した老君は、これまでに蓄積した『始祖(オリジン)』の魔導頭脳との交渉術ともいうべきデータを駆使して対話を開始した。


「『セルウス』、そちらは技術者を必要とする状態なのか?」

「ぐ、む……そうだ」

 

 『セルウス』は少し落ち着いてきたようで、話し方もまともになってきた。これなら、と仁Dは話をすすめる。


「なるほど。……なら、俺が行こう」

「……うむ。貴様なら適任だな。よかろう。まずは貴様だけを許可しよう」

「……礼子は?」

「駄目だ。許可するのは貴様だけだ」


 これは想定外であった。これまで、仁の行動に対し、礼子の随伴が認められなかった例はほとんどなかったのだ。


「……わかった。だが、道具類の持ち込みは許可してくれるな?」

「それは、構わない」

「よし。3分待ってくれ」


 そして仁Dは道具類を取りに行くふりをして『ペガサス2』へ。

 礼子も付いて行き、老君はミニ礼子を転送する。

 ミニ礼子は工具類の入ったバッグに潜むことになる。

 持ち物検査で見つかった場合は、『狭い場所に入って作業させるための小型ゴーレムだ』で通す予定。


 そして3分、『セルウス』の下に戻る仁D。


「用意は整ったぞ」

「……うむ、一応中身を見せてもらおうか」

「わかった」


 カバンの中身はミニ礼子の他に、クランプ類、支柱類、カッター、魔結晶(マギクリスタル)十数個、定規、ウエス(ボロ布)など。

 そしてミニ礼子については問題なく持ち込む許可が下りた。


「では、行くとしよう」

「わかった」


 開放された『セルウス』は立ち上がり、仁Dもそれに並んだ。


「それじゃあ、行ってくる」

「気をつけてください」

「ジン殿、任せたぞ」


 マリッカと『1』に送られ、仁Dは『セルウス』と共に歩み去ったのだった。

 『セルウス』は立ち去り際に、『後を付けてくることは許さぬ。場合によってはジンとやらの安全は保証しない』とまで言い切っていったので、マリッカたちも『1』たちも後を追うことはできなかった。


*   *   *


 蓬莱島でも、その一連のできごとは観察されていた。


「うーん、初めてのパターンだな」

「ああ。『始祖(オリジン)』が作った魔導頭脳とはいえ、大分考え方が違うようだ」

「まったくだ。自爆ゴーレムといい、本拠地を悟られないための手が込んでいるしな」


 仁たちの意見としては、これまでの『始祖(オリジン)』とは全く違うと思って掛からなければいけない、というものだった。

 そしてそこにハンナが考えを口にした。


「……ちょっと、なんというか……脈絡がない気がするのはなぜかな?」


 これに答えたのは仁。


「それは……おそらく『ユニット』の一部が暴走しているからじゃないだろうかな」

「おにーちゃん、それって、ユニット間の考えに統一性がないってこと?」

「その可能性は高いと思う。だからこそ修理しなければならないと思うんだよ」

「うん、それはわかるよ。でも、『オエステ基地』に行くって、ちょっと嫌な予感がするんだよね」

「まあ、そのための『分身人形(ドッペル)』だからな」

「うん……」


御主人様(マイロード)、皆さん、いよいよ『分身人形(ドッペル)』が『オエステ基地』に入ります』


 仁たちは老君の声を聞き、大型魔導投影窓(マジックスクリーン)を注視した……。


*   *   *


「さあ、付いてこい」

「わかった」


 仁Dは『セルウス』の後に続き、10分ほど歩いた。

 誰も付いてきていないように見えているが、『しのび部隊』が後を追っている。

 また、『ウォッチャー』も見守っていた。


「ここに乗れ」


 『セルウス』が指し示したのは転移魔法陣。

 以前『シク』が自爆して破壊したものとはまた別のものだ。


「よし、行くぞ」


 仁Dが乗った後に『セルウス』も乗り、2体は同時に転移した。

 残念ながら、これにより『しのび部隊』の追跡はできなくなってしまう。

 意図していたとすれば『セルウス』は策士であるが、おそらくは偶然であろう。


 転移した先は小広い部屋。が、殺風景で何も置かれておらず、中継地点であろうと仁Dは想像した。


「こっちだ」


 『セルウス』は部屋の隅へと仁Dを呼ぶ。

 そこには巧妙に隠されたハッチがあった。人一人が通れるくらいのものだ。


「先に入れ」


 『セルウス』は仁Dにハッチをくぐらせた。

 このハッチじゃ『セルウス』通れないだろう、と仁Dが思ったその時、背中に衝撃があった。

 『セルウス』に突き飛ばされたのである。

 ハッチの先は暗闇の縦穴であった。


「何を!?」


 操縦しているのは老君なので、瞬時に対応できたのだが、ここは仁のフリをするが得策と、そのまま縦穴を落ちていく。

 もちろん、暗視機能を発動させ、いざとなったら『力場発生器フォースジェネレーター』で衝撃を緩和するつもりで。


 だが、その必要はなかった。

 縦穴内には重力魔法が掛けられているのか、落下速度は遅く、しかも一定。仮に頭から落ちても大きなダメージは受けないほどの速度である。

 そして30秒ほどの落下の後、仁Dは縦穴の底に到着した。

 その頃には体勢を立て直していたので、危なげなく脚から着地。

 着地と同時に明かりが灯る。


「おお」


 そこはエアロックのような部屋であった。

 その扉が外から開けられ、そこに立っていたのは……。


「セルウス? いや、違うな」


 仁Dを突き飛ばしたのと同じ型のゴーレムだった。


「さすが慧眼だな。だが、私も『セルウス』である」

「なるほど、『セルウス』というのはその型のゴーレムを操縦している魔導頭脳の名称か」

「そのとおり。さ、出てくれ」


 納得した仁Dはそちらの『セルウス』についてエアロック的小部屋を出た。

 そして案内されるまま通路を歩いていく。

 途中3つほど、厳重なシャッターが付いた部屋を通過。

 それらはセキュリティのためである、と看破しつつ、仁Dは案内されるまま歩いていく。


 歩くことおよそ15分……つまり縦穴から1キロほど離れていることになる……でようやく目的地らしき場所に到着したのである。


「ここが……『オエステ基地』か?」


 仁Dが尋ねると、『セルウス』は、


「そうだ。その一角である」


 と答えたのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20200920 修正

(誤)そしてミニ礼子については問題なく持ち込む許可が降りた。

(正)そしてミニ礼子については問題なく持ち込む許可が下りた。

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― 新着の感想 ―
[一言] >初めてのパターン まあ、セルウスにとっても仁達にとっても幸いだったのは、 仁本人ではなく分身人形だったお陰で、 調査内容が『オエステ基地跡からの残骸回収』にならずに済んだ事でしょうか。 具…
[気になる点]  そしてミニ礼子については問題なく持ち込む許可が降りた。 to 下りた
[良い点] 72-45 訪問? 更新ありがとうございます。 [気になる点] いざとなれば、ミニ礼子ちゃんが何とかしてくれるでしょう。 [一言] 仁Dだけでも大丈夫でしょうけども。 次回の更新も、楽…
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