72-44 説得
現地時間で11月5日朝、『セルウス』と『1』は再び対峙していた。
「『セルウス』よ、今日は落ち着いているのか?」
「『1』よ、今のところはな」
「……もしも不具合があるなら、修理できないのか?」
「修理か……できる者がいないのだ」
「いない?」
「そうだ」
ここまでの流れはほぼ想定内。『1』(=ジョナサン)は提案を行うことにした。
「昨日、私の『主人』の魔力パターンを記録した魔結晶を見たな?」
「うむ」
「本日、その『魔結晶を加工した者』と『私の主人』、そして『その従者』が来ているのだが」
「なんと! ……会うことはできるか?」
「可能だ。3人……いや、護衛が1体いるが、全員呼んでも構わないか?」
「構わない」
これにより、『1』は『ジョナサン』としてホットラインを使い、マリッカDを呼んだのである。
ちなみにマリッカDにもほとんど同じ機能を持つダミーの腕輪を与えてある。
* * *
「『セルウス』、こちらがマリッカ様である。その右隣がターレス殿、左隣がジン殿、その後ろがレーコ嬢だ」
仁たち一行を『1』が紹介した。
「これはこれは。『セルウス』と呼んでくれ。当基地の管理魔導頭脳の端末だ」
「……早速ですが、『1』から、『セルウス』さんのユニットに不具合が生じていると聞いています。修理させてもらえないでしょうか?」
単刀直入に申し出るマリッカ。
魔導頭脳相手に回りくどいやり取りは不要、との考えからだ。
「修理はしてもらいたいが、信用できるかどうか、判断材料がない」
「そう言うだろうと思って準備してきました」
マリッカDは用意してきた魔結晶を取り出した。
「これに加工を施して見せましょう。……ジン様、お願いいたします」
「わかった」
打ち合わせどおりに、仁Dは魔結晶を受け取り、加工を始めた。
「『純化』『結晶化』『変形』『結晶化』」
「おお!?」
やや不純物の混じっていた魔結晶が高品質なものとなり、なおかつ綺麗な六角柱となった。
元となる鉱物の結晶構造を踏襲するのが、最も効率のよい使い方である。
そういう意味では、この魔結晶は『石英系』つまり『水晶』をベースにしたものなのである。
蛇足ながら、仁は『日本式双晶』を使い、『魔力反応炉』を作り上げている。これも水晶ベースである。
「素晴らしい腕前だな……欲しい」
「え?」
「いかん、離れろ!」
ターレスDの声に、仁DとマリッカDは大きく飛び下がった。ほぼ同時にターレスDも退避する。
そして間一髪、3体がいた場所に、『セルウス』が4本の腕で飛びかかって来たのである。
「『セルウス』、落ち着け!」
『1』が叫ぶが、『セルウス』は止まらない。
「『2』、『3』、『セルウス』を押さえろ!」
少し離れた場所で待機していた10体のうち2体を呼び寄せる『1』。
数秒で『2』と『3』はやって来た。
「暴れるな、落ち着け!」
「暴走していても力は強いな!」
「『4』、手伝え!」
それでも押さえきれないので、さらに増援を呼ぶ『1』。
逐次投入の見本のような増援ではあったが、さすがに3対1では『セルウス』も押さえ込まれたのである。
「ジン殿、まず『セルウス』を診てくれないか!?」
「そうだな」
仁Dは『1』の求めに応じ、押さえつけられた『セルウス』に対し、まず『分析』を掛ける。どこがおかしいのかを調べるためだ。
だが。
「どこもおかしくないな……それよりもこれは……」
「ジン殿、どうした?」
「『1』殿、この『セルウス』は、『傀儡人形』に近いものです」
『傀儡人形』は『始祖』が使っていた『分身人形』と言っていい。
つまり『セルウス』は、無線操縦されるゴーレムであったということだ。
「つまり『セルウス』を操縦している魔導頭脳が時折暴走している、というわけだな」
これは仁たちが想像した通りの事態であった。
万が一にも『セルウス』単体の暴走であれば話は簡単だったのだが。
そうこうするうちに『セルウス』はおとなしくなった。操縦する魔導頭脳が落ち着いたのだろうと仁Dは判断した。
「……失礼した『1』、それにジン殿、マリッカ殿、ターレス殿。特にターレス殿、貴殿が気が付いてくれなければ取り返しのつかないことになっていたかもしれぬ」
「お気になさらず」
返答したのは仁D。続けて言葉を掛ける。
「魔導頭脳のユニットが時々暴走しているのではないかとお見受けするが」
「ぐ、む……まあ、そんなところだ」
「直すアテはあるのですか?」
「……ない、な」
「……俺に直せるものなら直したいのだが」
「ジン殿が? なにゆえに?」
「世界の平穏のためだ」
「そんな曖昧なものなのか?」
「……ひいては自分の安心、安寧のため、かな」
「ふ、なるほど。そちらの方がよほど納得できる」
『始祖』的な思考においては、『世界の』というよりも、『自分の』と理由づけたほうが納得できるものらしい。
「自分の安寧のため、か。確かにな。……このまま暴走が進めば、おそらくは無差別な破壊衝動に支配されるだろう」
「ええ……?」
これもまた、『仁ファミリー』で予測した最悪の事態である。
それを防がねばならない、と仁Dを操縦しながら仁は思った。
「だが、少し前のことだけれど、魔法陣に侵入したゴーレムを排除するために自爆させたのでは?」
「知っていたか。あれはある意味事故だった」
「事故?」
「そうだ。別ユニットが関与し…………う……が、が……」
「おい!」
どうやら、再び、操縦している魔導頭脳が暴走を始めたようだ。
『2』『3』『4』が力を込めて『セルウス』を押さえ込む。
「ぐ……が……が…………」
もがく『セルウス』。だが、さすがに3体1をはねのけるほどのパワー差はなかったようだ。
「今、『セルウス』を操っているのは別のユニットだな?」
仁Dはそう尋ねてみた。
「が……そ……うだ」
「話をしよう」
「話すこと……など……ない」
「そうか? 技術者や『主人』の魔力パターンを持つ者が欲しいんじゃないのか?」
「ぐ、む……なぜ、それを」
「前回そう言っていただろうに」
「そ、う、だったか?」
「そうだ」
「……」
少し落ち着いてきたようなので、ゆっくりと諭すように話す仁D。
「そちらが望むなら、条件によってはそちらへ行ってもいい」
「……」
ここからはより慎重に交渉しなければ、と、仁Dを操縦する仁は気を引き締めるのであった。
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本日9月17日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
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を更新します。
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20200917 修正
(誤)ここからはより慎重に交渉すなければ、と、仁Dを操縦する仁は気を引き締めるのであった。
(正)ここからはより慎重に交渉しなければ、と、仁Dを操縦する仁は気を引き締めるのであった。
(旧)抑え
(新)押さえ
使い分けが難しいです、実際の動作は押さえる、状況としては抑える、でしょうか。
今回は実際に押さえ込んでいるので 押 にします(3箇所)




