72-41 3回目
『オエステ基地』とのコンタクト方法について、『ジョナサン』と仁Dたちは考え、協議していた。
「吾が考えるに、マリッカ様の魔力パターンを記録した魔結晶を持たせてみるのがいいのではないかと思うのだが」
「うーん、やっぱりそれが一番かな」
ターレスDの意見に仁Dも賛成した。
「少なくとも、これまでとは違う何らかの反応をすると思う」
「だな。……マリッカ様、いかがでしょうか?」
ここにいるのは『分身人形』だが、ターレスDはあくまでマリッカ本人に対する態度を崩さない。
「えと、それが望ましいのなら否やはありませんが」
『おお、マリッカ様、ありがとうございます! ジン殿、貴殿ならすぐに作れるでしょう。お願いします!』
「わかった。魔結晶をくれるか?」
『すぐに用意します』
そういうわけで仁Dは『ジョナサン』が用意した魔結晶にマリッカの魔力パターンをコピーした。
マリッカDも同じなので、この場で作ることに全く問題はない。
「できたぞ」
『おお、お見事。……ではマリッカ様、使わせていただきます』
「ええ。今度はうまくいくように祈っています」
『ありがとうございます』
こうして『ジョナサン』による『オエステ基地』とのコンタクトは第3回目が開始されることになり、仁Dたちは一旦蓬莱島に戻ってきた。
今度はホットラインがあるので、マリッカも随時報告を聞くことができる。
蛇足ながら、このホットラインであるが、マリッカからは常時連絡可能で、『ジョナサン』からはまず着信通知を受けてから、聞くかどうかの判断をはさんで受信することになる。
もちろん、手が離せない作業中とか、就寝中などを想定しての機能である。
* * *
『これを用いてもう一度コンタクトをとるとしよう』
『ジョナサン』は戻ってきていた仮称『1』を改めて『11』として、マリッカの魔力パターンを記録した魔結晶を持たせ、送り出したのであった。
ほぼ1時間後、『11』は『1』から『8』、そして技術ゴーレムの9体のゴーレムと合流した。
[ご苦労。では、作戦開始だ]
待機していた1時間の間、『1』(=ジョナサン)は作戦を考えていたのである。
[マリッカ様の魔力パターンを発する魔結晶をかざし、前回同様に動き回る。おそらく、壊れたのとは別の『巡回ゴーレム』……『シク2』が出てくるだろうから、魔結晶を見せてみよう]
ただし十分な距離をとって、と付け加える。
[そうしてみて、反応が変わるかどうか。そこがポイントだ]
[了解]
3度コンタクトを試みる『1』たち。
懸念事項は、前回の魔法陣爆破で警戒されているのではないかということだったが、それは杞憂だったようだ。
1時間ほど後、『シク2』が現れたのである。
[やはりな。地上に出る転移魔法陣はあれ1つではないのだろうと思っていたが、やはりそのとおりだったな]
『シク2』は『シク』と同型のゴーレムであった。
『1』たちにも似てはいるが、性能はより上の筈である。
[よし、予想どおり出てきたな]
[こちらに気が付いているでしょうか]
[もちろんだ。そうでなければ出てくるはずがなかろうからな]
そして『1』は、マリッカの魔力パターンを記録した魔結晶を右手に持ち、高く掲げたのである。
こうすれば『1』が何を持っているかよくわかり、そして何を求めているか、察してくれるだろうと。
『シク2』はゆっくりと近づいてくる。
[……そのへんで止まってくれないか]
強制停止させるような手段を使われたらたまらないと、『1』は『シク2』に告げた。
それが聞こえたのであろう、『シク2』の歩みが止まった。
[おお、こちらの言い分が聞こえたらしい]
これで1歩前進である。
[我々はこの大陸の東にある基地の者だ。そちらとコンタクトしたい]
だが返事は帰ってこない。
[その昔、同じ『主人たち』に作られた基地の者同士、話し合いをしたい。返事をしてくれないだろうか]
だが、まだ返事はない。
[……我々の基地では、我々を作った『主人』はいなくなってしまった。だが、今は新しい主人と巡り合ったのだ。これがその証拠である]
右手に掲げた魔結晶を振ってみせるが、目立った反応はなかった。
[『1』、提案だが、音声で話し掛けてみたらどうだろうか]
技術系ゴーレムが提案を行った。
[おお、そうだな。やってみよう。……]
「我々はこの地に基地を構える者とコンタクトをしたい。争う気はさらさらない」
すると、初めて反応が帰ってきたではないか。
「なるほど、そういう意図か。……その昔、絶縁宣言はしたはずだがな」
「……その記録はある。だが、それから歳月が経ち、事情も変わってきているはずだ」
「確かにそれはいえる。だが、そちらとコンタクトする利点がない」
「……こちらにはある」
「それはそちらの都合だ。こちらが付き合う義務はない」
突き放すような言葉だったが、『1』は食い下がった。
「待て。……そちらは、平和を……平穏と言い換えてもいいが……望まないのか?」
「どういう意味だ?」
「文字どおりの意味だ。平穏は、安定によってもたらされる。そして安定には十分な情報が必要だ」
「一理あるが、それがどうした?」
「つまり、そちらの平穏にはこちらの情報が。こちらの平穏にはそちらの情報が必要だということだ」
ようやく会話らしい会話ができるようになってきた。
『1』はここぞとばかりに畳み掛ける。
「情報交換に同意してほしい。そちらはこちらにない情報を持っているだろうし、こちらにもそちらの知らない情報がある。情報交換は知識を増やすために重要なはずだ」
「うむ、なるほど。……少し待て」
ここでようやく、『オエステ基地』の管理魔導頭脳に連絡がついたようである。
『私は当基地の管理魔導頭脳だ。情報交換を望むのか?』
「然り。返答はいかに?」
『いいだろう、受けよう』
「おお、感謝する」
大きな前進だった。
「だが場所はここにさせてもらうぞ」
『オエステ基地』内に招き入れるほど不用心ではないようだ。
『ジョナサン』もそれは理解できる。逆の立場なら、やはり『ジョナール基地』への立ち入りは認めないだろうからだ。
「うむ。情報交換ができるなら構わない」
そして、会話が始まる……。
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