72-40 ホットライン
老君からの報告を聞いた『仁ファミリー』は検討会を行っている。
「さて、これまでわかったことは、『オエステ基地』は『始祖』らしからぬ特徴を持っているということだ」
まずは仁が口火を切った。
「確かにな。新世代の者が多いことと関係ありそうだな」
「私もラインハルトの意見に賛成だな。世代が違えば考え方も異なる。攻撃的になってもおかしくはないと思うよ」
ラインハルトとルイスが意見を述べる。それに賛同したのは『長老』ターレス。
「うむ、お二方の意見は至極もっともだ。吾も、今回のやり方は『始祖』らしからぬと思っている。それはつまり、吾の知るところと違う、という意味であって、そこからも今回の相手は世代を重ねた『始祖』であろうということがいえる」
ただ、『攻撃的』というのとは少し違うかもしれぬ、と付け加えられた。
それは、あくまでも自分たちの勢力圏内に入ってきたものに対して攻撃的であり、普段は完全に無関心に見えるからだ。
「放っておいたほうがいいのでしょうか?」
「いや、ジン殿の心配はわかる。が、遅かれ早かれ、彼らは外界に何らかの方法で影響を与えるだろう。それが早いか遅いかの違いだけだ」
「……じゃあ、仁がいるこの時代でよかったと思ったほうがいいのかな」
「はは、グースも言うじゃないか」
「いや、笑いごとじゃなくさ、例えば10年前だったらどうだ?」
10年前だと、まだ『今の』仁はこのアルスに現れておらず、蓬莱島も封印されたままであった。
そしてラシール大陸には、礼子を捜す『魔法連盟』のゴーレムがうようよいたのである。
そいつらが『オエステ基地』を刺激し、危機を感じた魔導頭脳がこの世界に牙を剥いたかもしれないのだ。
「確かに、その可能性もあったわけだな」
現に、礼子を捜していたゴーレムの1体が脚を斬られて転がっていたわけであるから。
「しかしこうなると、『ジョナール基地』に任せていていいのかという気にもなるな」
「おにーちゃんの言うのもわかるよ。結局無視されたり拒否されたりしているわけだもんね」
ハンナも、仁が何を気にしているのかわかっているようだ。
「うむ、ジン殿の心配もわかる。が、やはりジン殿の手勢で調査するよりも『ジョナール基地』に任せたほうがより穏便に済むと思うぞ」
「やっぱりそうですかね?」
「吾はそう思う。少なくともいきなり攻め寄せる、などということはせぬだろう。同胞だしな」
『長老』ターレスの言葉に、仁たちも少し安心できたようだ。
だが仁としては、今のまま任せたままにするというのがどうにもスッキリしない。
「それにしても、このまま任せっきりというのもよくなさそうだな」
「ジン兄、どうするつもり?」
「一度、マリッカと一緒に『ジョナール基地』に行って『ジョナサン』と話をしたほうがいいんじゃないかなと思ってさ。ターレスさん、どう思います?」
「……うむ。ジン殿の言うことはわかる。それを行って事態が悪くなることはなかろう。むしろ好転すると思う」
「そうですか、それを聞いて安心しました」
そういうわけで、マリッカD、仁D、ターレスDらが『ジョナール基地』を訪れることになった。
ここで問題になるのは、訪問の目的である。
訪問そのものも目的の1つではあるが、メインとなるのは『オエステ基地』調査についてである。
「ここは、中間報告を聞くという建前で訪問し、さり気なく向こうの援助をするのがいいんじゃないかな?」
「うん、ルイスの意見に賛成だ。ついでに相談にも乗ってやれたらいいな」
「ライ兄、『ジョナサン』は相談してくるかな?」
「マリッカになら、するんじゃないか?」
「うむ。吾もそれとなく持ちかけてみよう」
ここで、ハンナが一言助言を行う。
「ねえ、それだったらマリッカさん直通の連絡手段を作っておいたらどうかな?」
「なるほど、ホットラインか」
ホットラインとは、直通回線であり、電話番号の入力などの追加の操作をすることなく、設定された相手に接続されるもののことである。
「そういう魔導具を作って『ジョナサン』に取り付けさせてもらうか」
「うむ、それはいいな、ジン殿、吾とマリッカ様の間にも作ってもらえないだろうか?」
「え……それは『仲間の腕輪』でできますよ」
「お、おお、そうであったな」
あまり使わない機能なので気が付いていなかったようだ。
こうして仁は、『ジョナサン』——マリッカ間を繋ぐ回線を設定し、魔導具を作成した。
「よし、これを持って『ジョナール基地』へ行こう」
「うむ」
「行きましょう」
そういうことになった。
* * *
転移門を乗り継ぎ、仁Dたち3人は『ジョナール基地』へ移動した。
『おおマリッカ様、ジン殿、ターレス殿、ようこそ!』
統括管理魔導頭脳である『ジョナサン』が一行を出迎えた。
「『ジョナサン』、調査の方は進んでいますか?」
『は……はい、マリッカ様。それがまだあまり……申し訳もございません』
「進みが遅いのはいいのですよ。年内に、と頼んだわけですから。でも、こういうことは進捗状況を途中で知っておくといろいろと安心できますからね」
『なるほど、中間報告ですか』
「加えて『報告』『連絡』『相談』の3つが行われると、組織として円滑に業務が進むと思うのです」
この提案に『ジョナサン』は大いに関心を惹かれたようだ。
『なるほど、『報告』『連絡』『相談』ですか。『始祖』はケリが付いたら報告しろ、というスタンスでしたが、マリッカ様は違うのですね』
「はい。どっちがよい、とかではなくて、私はそうしてほしいのです」
『わかりました。連絡はどのようにいたしましょうか』
これには仁Dが答える。
「連絡専用の魔導具を置いていくよ」
『了解です。その手にしているものですね?』
「そうだ。これを適当な場所に取り付けておこう」
ここでマリッカDが確認する。
「『ジョナサン』、どこがいいでしょう?」
『はい、マリッカ様。……そうですね、通信機能ユニットに接続してもらえれば』
「わかりました。……ジン様、お願いします」
「了解」
こうして、マリッカと『ジョナサン』とのホットラインが開通した。
ちなみに、マリッカDにも『仲間の腕輪』が渡されており、こちらにも同じ機能が付与されている。
* * *
「……それで、何か問題はありますか?」
改めてマリッカDが尋ねた。これで『ジョナサン』がどう答えるか、である。
『はい、マリッカ様。仮称『オエステ基地』とのコンタクトを試みているのですが、向こうには応答の意志がないようなのです』
「それは……! ……困りましたね」
『はい。向こうには警備用なのか、『巡回するゴーレム』がおりまして、『シク』と名付けました。その『シク』を誘い出してコンタクトを試みたのですが駄目でした』
『ジョナサン』はマリッカに対し、正直な報告を行った。
「そうですか……何か策があるといいのですが……」
マリッカDも考え込むのであった。
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本日9月13日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20200913 修正
(誤) がだ仁としては、今のまま任せたままにするというのがどうにもスッキリしない。
(正) だが仁としては、今のまま任せたままにするというのがどうにもスッキリしない。
(誤)『了解』
(正)「了解」




