72-39 追跡する2勢力
突然、地面が爆ぜた。
[うおっ!]
さすがの『1』も、これには驚きを隠せない。
[一体何が……?]
その答えはすぐに出た。
土砂と共に、ゴーレムの破片も降ってきたのだから。
それは先行した『9』、『10』のものだった。
[く……っ 罠だったのか!]
[いや、『1』、これを見てください]
『3』が指差したのは巡回ゴーレム『シク』のボディの一部と思われるものであった。
[自爆したのか!]
[……そうらしいですね]
どうやら『オエステ基地』の魔導頭脳は、1体を犠牲にしてまでも闖入者の排除を図ったようだ。
[自分の陣営のゴーレムを犠牲にしてまでやることなのか!]
『オエステ基地』の管理魔導頭脳は、『ジョナサン』とはかなり考え方が異なるらしい。つまり、『始祖』としては珍しい考え方をするということだ。
[これは、少々考える必要があるな……]
想定以上に過激な相手であると、『ジョナサン』は再認識した。
そして残った8体は魔法陣のあった場所から距離を取ったのである。
* * *
「おいおい」
「やらかしてるなあ」
蓬莱島でも、その場面は『仁ファミリー』の全員が見ていた。
「ううむ……これって、魔法陣が爆発したのかな? ……いや、そんなことはないか」
「魔法陣の下にもう1つ、爆破用の魔法陣を仕込んであったのではないか?」
「いや、それじゃあ、『シク』と名付けた向こうのゴーレムまで壊れるはずはないだろう」
「それもそうか」
仁たちは議論を行っている。
「土埃も収まったようだから、穴を見てみよう」
「そうだな」
グースの申し出に、議論は一旦中断された。皆、画面を注視している。
「深さは……10メートルくらいか?」
「そのくらいだな」
「それって、そこに一旦『シク』が転移したのかな?」
「穴の底も破壊されているからわからないな……」
が、仁が転移のセキュリティとして作った中間駅『しんかい』のように、一気に中枢部へ転移するのではなく、最低1箇所の中継点を経由することでリスクを減らす、という考え方を『始祖』もしていたとしてもおかしくはない。
『おそらく御主人様の仰るとおりかと。『シク』が転移後、その中継地で待機していたところ、2体が転移してきたので対抗措置をとった、と考えるのが自然かと思われます』
「なるほどな。……どうやって、何を爆発させたんだろうな?」
今後、『オエステ基地』を攻略するには、相手の情報が少しでも欲しいのだ。
『壊れ方を見ますに、爆発したのは『シク』自身ではないかと』
「自爆するゴーレムか……」
自分の意志でなのか、それとも管理魔導頭脳が命じたのか、それはわからない。
が、『オエステ基地』のゴーレムには『自爆機能』が付いている……かもしれないのだ。
「厄介な相手だな」
吐き捨てるように仁が言った。
仁としては、ゴーレムを使い捨てるような扱い方をしているのが気に入らないのだ。
それに気が付いているラインハルトは、老君に別の質問を行った。
「爆発力というか破壊力はどのくらいだろう?」
『そうですね、魔力爆弾の3号くらいです』
『魔力爆弾』は、『魔力爆発』を利用した爆弾である。
1号から10号まであり、順に威力が大きくなる。
1号では至近距離でも殺傷能力はないが、10号になると直径50メートルの岩も粉々にすることができる。
3号というと、鉱山で使う発破くらいか。
「礼子はもちろん、ランド隊でも平気だな?」
『はい、御主人様。とはいえ、『物理障壁』なしでは多少のダメージは受けるかと思います』
「そうだな。気をつけないといけないな」
まだ現地には『ペガサス2』『ホープ』『ランド1』『職人1』そして『忍部隊』が居残っているのだ。
「無理はさせたくないな」
そのためにも、もう少し相手の情報を集めなければ、と考える仁であった。
* * *
爆発で開いた穴から距離を取り、待機する8体のゴーレム。
[……変化がないな]
30分待っても何も起きないため、『1』は、調査のため穴の底へ『2』を向かわせることにした。
[確認せよ]
[了解]
『2』は即座に穴の底へ降り、調査を開始する。
瓦礫、土砂、そしてゴーレムの破片が散乱していたが、1つだけ目立つものがあった。
[アダマンタイトのプレートを発見。表面に刻まれたパターンから、何らかのセンサーだったものと思われます]
付随していたはずの魔結晶は爆発の余波で吹き飛んだか砕けたかしたものと思われた。
[そのプレートから導線が伸びているか?]
[……はい、伸びています]
[よし。その導線の先に魔導頭脳がある可能性は非常に高い]
ここで、手掛かりを見つけたのである。
[金属探知能力のあるゴーレムを派遣する。しばらく待て]
[了解]
そういうわけで『ジョナサン』は、金属探知能力のある、技術者系のゴーレムを1体派遣することにした。
これもまた中間地点にある転移魔法陣経由で送られるため、1時間ほど待機する必要がある。
彼らはゴーレムなので、待つことは苦痛ではないのである。
* * *
だが仁たちは1時間も待っているのは性に合わない。
そこで老君は、『2』が発見したプレートから伸びる導線の行き着く先を『覗き見望遠鏡』で調べることにした。
『まずはほぼ垂直に、地中へ潜っていっていますね』
『覗き見望遠鏡』を使い、着実にそのルートを追っていく老君。
先日の改良により、走査速度が倍に上がっている。
『下へ……むっ』
地下30メートルほどの場所に空洞があり、導線はそこで止まっていた。
止まった先にあるのは中継機と思われる魔導具。
『ここから無線で接続されているようですね……厄介な……』
これまでの『始祖』とは異なる考え、装備を持つ相手のようだ、と老君は密かに警戒度を上げるのであった。
* * *
1時間が経ち、技術ゴーレムが到着した。
[ご苦労。このプレートから伸びる導線を辿れるか?]
[可能です]
[よし]
技術ゴーレムは、魔法を使い導線を辿っていく。
工学魔法に似ているが工学魔法ではない。
微弱な魔力を流し、その痕跡を辿っているのだ。
老君より時間は掛かったが、技術ゴーレムは地下の空洞に辿り着く。
[……この地下30メートルほどの場所で途切れています。そこに何があるのかはわかりません]
[そうか。おそらくそこも中継地なのだろうな]
『1』(=ジョナサン)はここからどうアプローチすべきか検討するのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20200912 修正
(誤)[罠か!]
(正)[自爆したのか!]
(誤)瓦礫、土砂、そしてゴーレムの破片が散乱していていたが、1つだけ目立つものがあった。
(正)瓦礫、土砂、そしてゴーレムの破片が散乱していたが、1つだけ目立つものがあった。
(旧)[アダマンタイトのプレートを発見。表面に刻まれたパターンから、何らかのセンサだったものと思われます]
(新)[アダマンタイトのプレートを発見。表面に刻まれたパターンから、何らかのセンサーだったものと思われます]
(誤)と老君は密かに警戒度を上げるのであった・
(正)と老君は密かに警戒度を上げるのであった。




