72-29 新素材研究
食堂で、仁たちはティータイムを楽しんでいる。
「まだ改良の余地はあるんだよなあ……」
礼子の性能が2倍にアップしたわけであるが、仁はまだ満足していない。
「『魔力素除去器』対策が不十分だからな」
「まあ、確かにね」
サキが頷いた。
「なあ、常に体表面に『魔法障壁』を展開できるような素材ってないかな?」
「ええ……」
仁の要求に、サキも困惑気味である。
「無茶を言うね。だいたい、それじゃあ魔力反応炉が自由魔力素を確保できないじゃないか」
「う……そうなんだよなあ」
仁としては、いきなり『魔力素除去器』で攻撃されても大丈夫、としたかったのだ。
「それなら、『魔力貯蔵庫』も併用すれば……ああ、それは駄目か」
「そうなんだよ、ラインハルト」
『魔法無効器』という、『魔力素』を奪ってしまえる魔導具もあるのだ。併用されたらお手上げである。
「ええと、その『魔法無効器』や『魔力素除去器』が効かない素材ってないんですか?」
珍しくリシアが発言した。
「例えば『魔結晶』に『魔法無効器』や『魔力素除去器』を掛けるとどうなっちゃうんでしょう?」
「え? ……うーん……なるほど……」
結論から言えば、普通の魔結晶に蓄えられた自由魔力素や魔力素は『魔法無効器』や『魔力素除去器』の前には無力である。
だがリシアの発言は、そうした外部からの干渉に耐性のある素材をなんとかすればいいのではないかというアイデアをもたらした。
それをサキに告げると、
「くふ、そっちのほうが可能性は高いね」
常に体表面に『魔法障壁』を展開できるような素材、という先程の要求に比べての話であろう。
「だけどジン、そういう素材を『魔力貯蔵庫』にでも使おうというんだろうけど、逆にいうと魔力素を取り出すのは難しいんじゃないかい?」
「そうなんだよなあ。……でも、何か特定の条件を満たせば取り出せるようにできないものかな?」
「くふ、面白そうなテーマだね」
そういう素材について検討してみるよ、とサキは受けあった。
と、ここでハンナが口を開いた。
「おにーちゃん、『魔力素除去器』って、確か『精神触媒』を使っているんだよね?」
「いや、それは『魔法無効器』の方だな」
「そっか……。それはそれでいいけど、『精神触媒』を使ったら、もしかして外部からの魔法干渉に耐性のある素材ができるんじゃない?」
「うーん……なるほど……ただ問題は……」
「精神触媒がないことだよね」
「うん」
『魔力過多症』の治療薬に溶かし込んでいる分はあるが、『魔法無効器』をもう1台作るほどは残っていない。
「あ、もしかして『ジョナール基地』にあるかも」
「ハンナ、ナイス。……マリッカ、聞いてみてくれ」
「わかりました」
* * *
今現在、『ジョナール基地』への移動手段は、往路は老君に『転送機』で送ってもらうことだ。
そして復路は個人持ちの『転送装置』で地表へ出、そこにいる『ペリカン11』に搭載された『転移門』で帰ってくることである。
マリッカはマリッカDを使い、この方法で『ジョナール基地』を訪れ、『管理魔導頭脳ジョナサン』に要望を伝えた。
「ジョナサン、この基地に『精神触媒』はありますか?」
『はい、ございます』
「あるんですか!」
『はい、マリッカ様。しかし、古くなっておりますので、人造人間を作るには向かないと思います』
「ああ、それは大丈夫です。他の用途ですから」
『それでしたらいいのですが』
そして『ジョナサン』は、1体の整備用ゴーレムに『精神触媒』が入った容器を持ってこさせた。
ごく小さなガラス瓶である。
『およそ5グラム入っております』
「ありがとう、ジョナサン」
そしてマリッカDは帰還した。
* * *
「おっ、これは助かる」
仁は『魔法無効器』を作る際の注意事項を思い出した。
『使用するのは光属性の魔結晶に、重量比で100分の1の割合で『精神触媒』を添加する』。
「まずは光属性の魔結晶だな」
蓬莱島にある莫大なストックの中から、高品質なものを選りすぐって用意。
それを、『純化』と『結晶化』を10回繰り返して品質を上げる。
ほぼ極限まで上げられた超高品質の魔結晶に、『精神触媒』を100分の1、添加した。
「これをそのまま使えば『魔法無効器』だが……」
仁はサキとハンナに向かって説明する。
「『魔法無効器』の波動に『魔法無効器』の波動をぶつければ相殺できる……かもしれないと思っているんだ」
「くふ、確かにね。それに、その合成した魔結晶の性質も気になるよ」
「そうだね。サキおねーちゃんといろいろ調べてみたいな」
そこで仁は、このやり方を教えてくれた当の本人である『長老』ターレスに尋ねてみた。
「……ターレスさん、どうなんでしょう?」
「うむ、実に見事だ。『魔法無効器』を作るには十分すぎる品質だし、その魔結晶の性質を調べようというその姿勢も素晴らしい」
ターレスは仁たちを褒めた。
「サキさん、ハンナさん。吾もその魔結晶の性質については、多くを知らぬ。なので、実験を手伝わせてもらいたいが、いかがかな?」
「わ、ターレスさんに手伝っていただけるなら千人力です! ね、サキおねーちゃん」
「うんうん、是非お願いします!」
「承知した」
「俺にも手伝わせてください」
「おお、ジン殿も手伝ってくれるなら大助かりだ」
こうして、仁、『長老』ターレス、サキ、ハンナという珍しいチームで合成魔結晶の性質を検証することになったのである。
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