72-26 ジョナサンの判断
マリッカから正式に依頼された『統括管理魔導頭脳ジョナサン』は、すぐに行動を開始した。
急がなくていいと言われてはいるが、『ならばのんびりやろう』という思考はしないのである。
『まずは通信を試み、それが駄目ならゴーレム派遣であろうな』
そのために必要なことを検討していく。
『最初に通信回線のチェック、同時に向こうの動向を予測し、こちらが取るべき行動を決めること、そして派遣するゴーレムの準備だな』
ジョナサンは過去に数回行われた、当該施設との通信記録を参照し、通信装置の調整を行った。
——これを最後に、2度と通信は行わない。『オエステ』——
それが最後の記録だった。
この『オエステ』というのは『西』を意味する古いヘール語で、おそらく施設か基地の名前であろうと思われた。
だが、なにゆえ2度と通信を行わないと宣言したのか、それが不明であり、理解できないのである。
『敵対したわけではない。そもそも、敵対するような理由がない』
位置的にも1300キロ以上離れており、勢力圏が重なるということもない。
意見の違いから仲違いしたわけでもない。
一方的に絶縁を突きつけられただけなのだ。
その時点で、ここ『ジョナール基地』……つい先ごろ、マリッカが命名した……には生きた人間は1人もいなかったのだ。
『なのに、通信を行わないと宣言した理由とは……?』
幾つかの仮説が立てられる。
1.独立独歩のため、他からの干渉を嫌った。
2.完全に引きこもるため。
3.必要がないから。
『やはり3だろうかな』
そしてどうして必要がないかといえば、向こうにも生きた人間がいなくなったから、という理由が最も蓋然性が高い。
『統括管理魔導頭脳』にしてみれば、『主人』がいなくなれば、存在意義が半減してしまうのだ。
その遺命がどういうものだったのかにもよるが、この仮説が一番有り得そうだとジョナサンは判断した。
『と、なると、こちらが新しいご主人様を得たことを告げることは、危険も伴うな……』
その『新たな主人』を独占しようとする可能性もあるからだ。
『そうなった場合、私に『オエステ』を止められるかどうかわからない』
だがここでジョナサンは、自分の持つ武力を遥かに超える者のことを考える。
『ジン殿とレーコ嬢なら、『オエステ』が暴走したとしてもおそらくは止められるだろう』
そして彼らはマリッカの友人であるがゆえに、マリッカに無条件で協力するだろうとも推測する。
それは間違ってはいない。いないのだが、仁とマリッカ、礼子の関係に関しては、ジョナサンは勘違いをしていることに気が付いていない。
とはいえ結果だけを見れば大差ないので、ジョナサンの計画に齟齬を生じることはないであろう。
『『オエステ』がどのようなものの捉え方をする魔導頭脳なのかはわからない。ゆえにその行動を予測することはできない』
『オエステ』との付き合いはないに等しいほど希薄なので、ジョナサンにはその行動をシミュレーションすることができなかったのである。
『だが、敵対しているわけではないから、こちらから出した使者を無視することはないだろう』
拒絶する可能性もあるが、それはそれでコンタクトがとれているわけである。
無視の場合はそうではない。延々と無駄な行動をする可能性があるわけだ。
『つまり、ここ『ジョナール基地』の使者という名目でゴーレムを派遣すればいいわけだ』
ここまで決まれば、どのようなゴーレムを派遣するかの決定をすれば準備は完了だ。
『やはり警備用ゴーレムにしておくのが無難だろう』
礼子と手合わせをしたゴーレムと同型のもの。自律思考を持ち、戦闘力が高いので、道中の障害も自力で排除できるだろうという判断だ。
『2体ひと組で行動させよう』
『忍部隊』が基本的にツーマンセルで行動していることを聞いたので、そのやり方を採用したのである。
これでハード面は完了。残るはソフト面……具体的には訪問理由と交渉内容である。
『他からの干渉を嫌った可能性も残っているから、拒絶されにくい理由が必要だろうな』
時間を掛けて検討した結果、ジョナサンは『新たな主人が見つかった』ことを知らせるのがベターであろうと結論した。
『これでよし。では、まずは通信を送ってみよう』
『ジョナール基地』内の設備は、ベストとは言わないが、十分にその機能を保っていた。
ゆえに通信機も問題なく動作する。
過去、『オエステ』基地とは5回の短い通信がなされており、方角と魔力波パターンの記録も残っていたので、通信を送ることは難しくなかった。
過去の通信より3割増しの出力で送信が行われた。
5分ほど時間を置いて、もう1度。さらにもう1度。
ジョナサンは計5回の送信を行ったのである。
* * *
『返信が……ない』
最初の送信後、1時間経っても返信がなかったのだ。
通信設備が無事で、魔導頭脳が健在であれば、内容はともかく返信は数秒あればできるはずである。
それが来ないということは……。と、ジョナサンは考えた。
『無視されているか、それとももう動いていないか』
こうなってはもう、実際に現地へ行ってコンタクトを試みるしかないという結論に達する。
そのためのゴーレムはもう準備完了していた。
『それでは行け』
『了解』
2体のゴーレムは、地表との連絡通路を通って地上へ出ることになる。
これは『地下基地』のさらに地下である、『塔の地下』……『統括管理魔導頭脳ジョナサン』があるフロアのさらに下にある『玄関』へと向かった。
そこには、地上へ出るための転移魔法陣と、地上への連絡通路とがあるのだ。
今回は非常用の転移魔法陣で地上へ出ることになる。
というのも、地上への連絡通路は長年使われていなかったため、崩落して完全に埋もれてしまっていたからである。
『当面は直さなくてもいいだろう』
主人であるマリッカと、その友人たちは独自の転移手段を持っているようだからだ。
そのため、今のような状況なら、かえってセキュリティが高いといえる。
2体のゴーレムは、『ジョナール基地』から10キロほど離れた場所にある岩場に穿たれた洞窟内の転移魔法陣から出現する。
ここは非常用なのでジョナサンも定期的に整備しており、今も使用できるのだ。
そして2体のゴーレムは西を目指した……。
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本日8月30日(日)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
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を更新します。
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20200830 修正
(誤)この仮設が一番有り得そうだとジョナサンは判断した。
(正)この仮説が一番有り得そうだとジョナサンは判断した。
(誤)基本的にツーマンセルで行動いていることを聞いたので
(正)基本的にツーマンセルで行動していることを聞いたので




