72-25 方針の決定と依頼
『西の施設』を探すべきか放置するべきかについての話し合いは続いている。
「礼子を捜し回っていたゴーレムがやられていることを考えても、その施設は何らかの形で『生きて』いて、しかも外界にも出てきていると思うんだ」
仁が言うと、ルイスが反論した。
「そこをどう捉えるかだと思う。定期的な巡回程度であれば、気にする必要はないんじゃないかな? 現に、100年くらいは経っているはずだよな?」
蓬莱島が封印されたのが3765年。それからどれくらい後に礼子を探すゴーレムたちが派遣されたのかは、正確にはわからないが、100年以上前のことなのは間違いないだろうと思われた。
そしてここで、シオンが口を開く。
「やはり、情報は必要だと思う。だから、向こうに気取られないような方法での情報収集を行うのがいいんじゃないかしら」
『長老』ターレスを除けば、『仁ファミリー』で最も長生きし、人生経験を積んだと言えるシオンの言葉に、皆耳を傾けた。
「要するに折衷案だな」
グースが言うが、シオンは中途半端に頷いた。
「そうも言えるわ。でも、ただの折衷案じゃないわ。より高度に、より慎重に行うべき、『第3の案』よ」
「第3の案、か。なるほどな」
「……私もそれがいいんじゃないかと思います」
「あたしもそう思うな」
リシア、マルシアが賛成し、ハンナ、ステアリーナらもそれがいいと言う。
マーサやミーネ、ベルチェらは、こういう話題なので保留するということだった。
そしてトア、ロドリゴ、サキ、ロードトス、リュドミラらは最終的に第3の案を支持。
仁も、多数決の意見に従うことにしたのである。
「まずはそれで行くか」
やはり何もしない、というのは仁のような性格だと落ち着かないのである。
ならばまずは、そのやり方……だが。
「皆様、そろそろお昼にしませんか?」
という五色ゴーレムメイドの声に、緊張の糸が緩む。
そして、少し休憩を入れた方がいい案も浮かびそうだと、昼食にすることにしたのであった。
* * *
この日の昼食は『和風焼き飯』。
仁が施設時代によく作っていたレシピで、残り物の冷ご飯をフライパンで炒めたものだ。
味付けはシンプルに醤油とコショウ。グリーンピースや玉ねぎ、ピーマンなどを入れると、残す子がいたので具材はプレスハムだけだった。
「おお、意外に美味い」
「あれ? ルイスは初めてだっけ?」
「うん。この料理は初めてだな」
「そか。まあ、頻繁に作るものでもないからな」
今回は、昨夜と今朝のご飯がたくさん残ったのでこれを作ったわけだ。
「他にはお茶漬けにしたり、焼きおにぎり……は無理か」
冷めたご飯ではうまくおにぎりを握れないのである。(温めれば握れる)
まかないの一種と言えるかもしれないが、きちんと手間を掛ければこれはこれで美味しいのだ。
「おかわりちょうだい」
「はい、ハンナ様」
ハンナが真っ先にお代わりをし、
「あ、ボクも」
「はい」
サキがそれに続き、
「僕も半分くらい貰おうかな」
「私は一口だけよそってください」
ラインハルトとベルチェもお代わりをしていく。
口に合うかどうかわからない人が多かったので、少なめによそってあったので、ほとんどの者たちがお代わりをしていた。
「ご主人さまは?」
「いや、俺はこれで十分」
お代わりをしなかったのは仁だけ。
というのも、五色ゴーレムメイドとしては、仁が食べる量はかなり正確に把握しているからである。
「これも美味しい」
焼き飯への付け合せはやはり汁物。
ということで中華風スープだ。
ワカメとトポポ(じゃがいも)のデンプンから作った春雨が入っている。
出汁は鶏ガラ。数滴垂らしたごま油が香りのアクセントを付けている。
『和風焼き飯』が簡単な分、こちらに手間がかかっていた。
* * *
昼食を楽しむという気分転換をした後、改めてラシール大陸西への対応を相談することにした。
「いろいろ考えたのだが」
真っ先に口を開いたのはターレス。
「いっそのこと、全面的に『ジョナサン』に任せたらどうかと思うのだが」
「それも1つの手ですね」
「こちらは観察衛星『ウォッチャー』と、『覗き見望遠鏡』に留めておくことにして」
「……いいかも」
「うん、いいんじゃないかな?」
「賛成するね」
『長老』ターレスの案に反対は出なかった。
「それじゃあマリッカ、今度『ジョナサン』に頼んでもらえるか?」
「はい、おまかせくだしゃい」
こうして、ラシール大陸西の『基地』に対する方針が決定したのだった。
* * *
『では、この基地は『ジョナール基地』としましょう』
一方で、地下都市にいるマリッカDは、基地の名前を『ジョナール』に因んで『ジョナール基地』と命名していた。基地を命名しておかないと、話しづらかったのである。
蛇足ながら、この時もマリッカが操縦している。
「それで、『ジョナサン』に頼みがあります」
『なんでしょうか、マリッカ様』
「ラシール大陸西に移り住んだ人たちの基地が、今現在どうなっているか、調べてほしいのです」
『どのくらいの期間をいただけますか?』
「急ぎません。……そうですね、今年いっぱいで」
『今年、というのは『大陸暦』で、ですね?』
「そうです。わかりますか?」
『はい。『忍壱』殿から外界のことをいろいろ教わりましたので』
「そうでしたか」
* * *
蓬莱島でこれを聞いた仁は、1日2日、『忍部隊』をジョナサンの下に留まらせて、必要な知識を教育させることに決めた。
それとは別に、移動手段をどうするか、考えることにする。
「『転移門』だと、『ジョナール基地』のゴーレムもこっちに来られることになるんだよな。それは避けたい。かといって、セキュリティを設けるのは信用してません、って公言しているようで気になるし……」
「そこまで気にすることはないんじゃないか?」
「そうかな?」
「ジンが気になるなら、行きは転送機で、帰りは転送装置で地上へ出てから航空機もしくはそれに内蔵した転移門で帰ってくればどうだい?」
「うーん、当面はそれで行くか」
少々回りくどいようだが、安全性を考慮してそういうことになったのである。
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