4.平民ミランナ
ミランナは、母親が貴族学園の寮の寮母をしている、どこにでもいるごくごく普通の平民である。
だが、成長するにつれて、ミランナはある違和感を覚え始める。一緒に遊んでいる子達に比べ、自分は、明らかにいい服を着ているのだ。よくよく見れば、母もいつも綺麗にしている。
そのうちに、周りの噂話や母の様子から、ミランナも薄々気づき始める。
母は、名のある貴族の愛人なのだ。
そして、それは、16歳になる前には、確信に変わる。
ミランナは、春から貴族学園に通うことになったのだ。
どうやら、ミランナの父親は、名のある侯爵らしい。
貴族学園は、貴族の子息や令嬢が通う学園であるが、特待試験もあり、優秀な者や多額の寄付が可能な豪商の家の子など平民でも通う事が出来る。
だが、高額な授業料や寄付金、制服1つとっても中々の金額である。とてもではないが、一般の平民が通えるような場所ではない。
そこに、平民でありながらミランナは通うことが出来るのだ。
はじめのうちは、自分はなんてラッキーなんだ!とキラキラした学園生活を夢見て、学園に通うのを楽しみにしていたのだ。
ところが、実際に入学してみると、そこはミランナの思っていた世界とはまるで違っていた。
そこには、確固とした身分差が存在しており、平民は平民同士で交流しているが、ミランナは父親が高位貴族という複雑な出自である。
同じ平民達からは敬遠され、寄って来るのは、何とか高位貴族とお近づきになりたいという欲にまみれた下位貴族ばかりであった。
すっかり学園生活に失望していたそんな時に、デュークが留学して来たのだ。
男爵家のデュークは、高位貴族と交流出来るわけもなく、常に所在なさげであった。
学園で居場所のなかったミランナは、デュークが自分と同じだわ!と歓喜した。
そして、まるで吸い寄せられるかのように、デュークに話し掛けていたのだ。
デュークと親しくなってからというもの、ミランナは毎日が楽しかった。
デュークには、定期的に同じ女性から、手紙や小包が届いていたが、ミランナはそれらをこっそりと始末し、贈り物のみ自分からと偽ってデュークに渡していたのだ。
(そんな遠くにいる女なんかに、デュークは渡さないわ!)
ミランナは、手段を選ばなかった。




