3.リドリー男爵令息デューク
デュークが留学した隣国のタイタント王国は、科学技術や医療機械などの分野で発展を遂げており、様々な国からその技術を学ぼうと留学生が押し寄せており、そういった意味では、とても開かれた環境であった。
しかし、この国はデュークが思っていた以上に、身分の差がはっきりしていた。
男爵家子息であるデュークが、高位貴族に近づく事はほぼ不可能に近かった。
それ見たことか、とデュークは思ったが、父親の期待を背負って来ている以上、帰るわけにもいかない。
けれども、しがない男爵家出身では日々侮られる一方で、デュークの心は次第に疲弊していった。
そんな時、声を掛けてきてくれたのが、平民のミランナだった。ミランナの母親が、デュークが暮らしている学園の寮の寮母をしているのだ。ミランナは母親と2人、寮の隣りにある使用人用の住居で暮らしていた。
そのため、ミランナも同じ学園に通っており、
「これ、お母さんのサンドイッチ。沢山あるから、一緒に食べようよ!」
気づけば、いつも一緒にお昼を食べるようになっており、ミランナの明るさには心が救われるような気がした。
そういえば、アマリスからは、何の音沙汰もない。ミランナは、寒くなってきたからと手袋をくれたり、わざわざ隣国からお菓子を取り寄せてくれたりと、デュークのために色々してくれているというのに。
(薄情なものだな…)
そのうちにデュークは、ミランナは平民だし、この国に居る間だけであれば構わないだろう、と思い始める。
そうして、デュークとミランナの関係は、急速に近づき、2人は人目も憚らずに、恋人同士のように振る舞い始めた。
そして、タイタント王国に来てから2年半近く過ぎた頃、ようやく王太子達の帰国が半年後に決まった。
(これでようやく、国に帰れる。)
そうデュークが一安心していると、帰国を察したミランナから、こう告げられたのだ。
「お父さんが、デュークに会わせろって言ってるの。」
(お父さん?!)
デュークは、自分でも血の気が引いていくのがわかった。




