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21.初めてのデート

アルを元の世界に帰す目途が立った。

そんな時、アルからデートの誘いが?

 とある週末。

 蘭菜に頼んで、私とアルは休みをもらった。

 と言うのも、先日アルに「デート」に誘われたからである。

 まあ、誘われたのは2週間ぐらい前だけど。

 アルをヴィエラザードへ帰す目処が立ち、いつお別れの時が来るかもわからない。

 そんな私達は、出来るだけ思い出を作る事にしたのだ。

 別に恋人とかじゃないし、会ってまだ2ヶ月程だけど…。

 でも、色々あったなー。


「よし、行くか!」

「なんで剣持って行くのよ……狩りに行くんじゃないだから置いて行きなさいよ」

「いや、いつでもヴィエラザードに帰れるようにだな?」

「置いて行くの! 警察に捕まるわよ」

「それは困る」


 素直に剣を置く。

 警察については「魔王より強い」と、教えてある。

 下手に手を出したりしたら大変だと刷り込んだので「警察に捕まる」と言っておけば、大抵言うことを聞く。


「じゃあ、行きましょ」

「おぅ!」


 私達は、いつもの様に一緒に家を出た。

 駅を向かう途中、アルのライバルであるケルベロス(3匹の可愛い子犬)と、その飼い主であるビーストテイマーさんとすれ違う。


「あら、おはよう。 最近仲良いわね。 若いって羨ましいわぁ」

「ウーワンッ!」

「おのれケル! 吠えるな!」


 アルは3匹の名前をそれぞれ「ケル」「ベロ」「ス」と勝手に呼んでいる。

 可哀想な「ス」ちゃん……。


 おばさんと、別れて駅の方面へ向かう。

 本日は電車を使い、天生(あもう)という大きな街へ行こうと思っている。

 結構なんでもある場所で、デートにはもってこいらしい。


「電車にも慣れたわね?」

「最初から普通に乗ってただろ」

「そうだったっけ?」


 そうだったような気もするわね。

 目的地の天生は、終点になる。

 電車で揺られること30分。 私達は、目的地へ到着した。


「……なんだここは?! まるで地下迷宮じゃないか! 道を間違えたら二度と戻れなくなりそうだぜ?!」


 まあ慣れない人は、ここを地下迷宮とか言うしあながち間違いではないけど……。


「ちゃんと帰れるから」

「おー! さすが有栖だ。 この迷宮は攻略済か!」

「はいはい、そうですよー。 はぐれない様についてきなさいよ」


 私はアルの手を引いて、駅地下迷宮を歩き始めた。

 私が迷う事無く外へ出てみせると、アルは「すげーなお前!」と、大袈裟に騒ぐのであった。


「ここが天生よ!」

「うおー、都会だな!」


 そう、都会なのだ。

 周りは高いビルやらなんやらが、所狭しと立ち並んでおり、少し歩くと、ショッピングモールや水族館、映画館となんでもある。

 まあ、あまり来たことはないけどね。

 天衣町に来た頃に1度来た事があるぐらいかしら。

 

「じゃあまずは映画館にでも行きましょ」

「エイガカン?」

「大きいテレビよ」

「ほう……有栖の部屋のは小さいからな!」

「やかましいわ!」


 漫才みたいなやりとりを交わしながら、手を繋いで歩く。

 傍から見れば、立派に恋人に見えるだろう。

 もちろん恋人ではないけど。


「あっちのアリスとは、こんな風に歩いた事無かったな」

「へー、そうなんだ? 片想いだものね」


 違う。 本当は両想いである事を、私は知っている。

 私から伝えるのは違うと思うから、敢えて言わないけど。

 でも、アルは私の事どう思っているのかしら?

 自分の好きな女性と、全く同じ見た目の私の事を……。


「いやいや……考えるな私」

「どうしたぁ?」

「何でもないわよ」


 私は、とりあえず誤魔化しおく。

 でも、本当に最近の私はどうかしている。

 どうしてこんなにアルの事ばかり考えてしまうんだろう?


 ◆◇◆◇◆◇


 私とアルは、目的の映画館へやって来た。

 今やっている映画は、人気アニメの劇場版にアメコミヒーロー物。 恋愛映画にパンデミック物かぁ。

 アルと見るなら……。


「これにしましょ」

「んあ?」

「ゾンデミックシティ」


 所謂ゾンビが出てくるパンデミック物だ。

 アルはこういうのが好きそうな気がする。

 多分騒ぐだろうけど。


「チケット買ってくるわね」

「おぅ?」


 映画館の仕組みを理解していないアルは、終始首を傾げていた。

 入場チケットと、席を決めてアルの元へ戻る。


「お待たせ。 これを持ってそこの列に並ぶのよ」

「んん? でかいテレビだよな? なんで切符とか要るんだ?」

「有料なのよ。 お金が要るの」

「ほーん……」


 次第に列が短くなる。


「あのお兄さんに、チケット見せて中に入るの」

「ふむ」


 アルの順番が回ってくると──


「見るがいい。 俺のチケットだ」

「はいどうぞー」


 アルは「うむっ!」と、何故か偉そうにしながら中に入って行った。

 後ろの人がクスクスと笑っているのが聞こえる。

 他人のフリ他人のフリ……。

 

 中に入ると、アルが突っ立っていたので、手を引いて席まで歩く。


「アルはそこね」

「おう。 しかしでかいにも程があるだろ」

「そうね」


 初めてスクリーンを見た割には、大人しいわね。

 

「リモコンはどいつが持ってやがるんだ?」

「無いわよそんなの。 映画はテレビみたいな物だけどちょっと違うのよ」

「そうなのか……」


 まだよくわかっていないようだけど、気にしないようにしましょう。

 次第に部屋が暗くなり、スクリーンに映像が映し出される。

 映画の告知等が終わると、本編が始まる。

 内容は、とある街の住人が急にゾンビ化し、人を襲い始めるというもの。

 やはりというか……。


「有栖……ゾンビがうじゃうじゃ出て来やがるぞ。 この世界のゾンビは俊敏なんだな」

「そーねー」


 さすがに大声で騒がなかったわね。

 成長したじゃない。

 映画は佳境に入り、パンデミックを止める為に街ごと吹き飛ばすというありきたりな最後を迎えるも、最後に1体だけゾンビが残っており、続編があるような感を出しながらエンディングとなった。


「うん、微妙!」

「そうか? 派手で良かったじゃないか。 銃とかマシンガンってのは中々興味深い武器だな。 どこで買えるんだ?!」

「この辺には売ってないわねー」


 売ってても買わないけど。

 でも、楽しんでくれたみたいで良かったわ。

 こんなのでも思い出になるなら、いくらでも連れて来てあげましょう。


「次は水族館いくわよ」

「スイゾクカン?」

「そ、色んな魚とか水辺の生き物が見れる所よ」

「ほー」


 サメとかクジラ見て騒いだりしないかしらね……。

 映画館を出て、次なる目的地である天生水族館へと向かう私達。

 はぐれない様に、しっかりと手を繋ぐ。


「しかし、人が多いな。 こいつらがさっきのやつみたいにゾンビになったら、俺でも生き残れないぞ」

「ならないからその心配はいらないわ」

「そ、そうか」


 途中でバスに乗り、水族館前で降りる。


「ここが水族館よ」

「ほーん」


 あまり興味を引けなかったみたいね。

 まあ、中に入れば少しは楽しんでくれるでしょ。

 私は2人分の入館料を払い、アルと共に中へ入る。


「ほう、これが水族館か。 まるで湖の中から魚を見ているみたいだな!」

「中々良いもんでしょ?」

「そうだな。 こんな体験は初めてだぜ」


 良かった。 思ったよりも楽しんでくれているようだ。

 順路に従い進んでいくと──。


「キングクラーケンだと!?」

「普通のイカよ。 どこがキングなのよ……」


 ただ、深海にはダイオウイカなんていう、まさにクラーケンと呼べるようなイカもいるにはいるが。

 その後も、サメを見ればなんちゃらシャークだと、騒いだり、巨大エイを見ればなんちゃらマンタだと騒ぐ。

 他人のフリ他人のフリ。


「すげーな、スイゾクカン! あんなヤバイ魔物を生け捕りにして見せ物にしちまうとは」

「楽しんでくれたようで何よりよ」

「あぁ。 アリスやラーナに良い土産話が出来るぞ」

「……そう。 じゃあ次はゲームセンター行きましょう」

「そこは何があるんだ?」

「色々と遊べる物があるわよ」

「ほう」


 私達は次なる目的地、ゲーセンを目指すのであった。

お互い人生初のデートを楽しむ。


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