16.光明
夢の内容を思い出した有栖は、その内容をすぐにアルへ伝えるのだった。
気が付くと私は布団の中だった。
洗面所で顔を洗っていた筈なのに……。
「目が覚めたか有栖」
「……」
そうだ、夢の事を思い出したと思ったら急に眩暈がして……夢!
「アル! 朗報よ! アリスさん達は無事よ!」
「……は?」
アルは「何を言ってるんだコイツは?」みたいな顔で私を見ている。
そりゃやそうか。
「それより大丈夫かお前? また体調崩したのか?」
「大丈夫よ大丈夫」
体を起こして、問題が無いことをアピールする。
「そうか」
「そんなことより、夢を見たのよ」
「夢?」
「そうよ! ヴィエラザードの夢!」
「何?!」
私は昨晩見た夢の内容を伝えた。
「そうか、皆無事なんだな? 良かった……しかしウェインの奴、以前から有栖に色目使ってるとは思っていたが、俺がいないのをいいことに……」
「あ、あはは、落ち着いてアル。 アリスさんしっかりしてるから大丈夫だと思う」
ただ、昨日のあの感じだと、男の人に組み敷かれたら抗えるかどうかは怪しいけど。
「今はラーナさんも色々調べてくれているみたいね」
「何かわかればすぐに教えてくれ」
「えぇ」
ただ、今回は何故かたまたま夢の事を思い出せたけど、次も出来るかはわからない。
この指の切り傷が何かのヒントになるのかしら?
何にせよ、光明が見えてきたことに変わりはないわね。
これなら意外と早く、アルを帰してあげられるかも。
そうすればまた、前のような1人暮らしに戻れ──。
「……アルは向こうに戻れるようになったら、すぐ戻りたいわよね?」
「当たり前だろ」
「そ、そうよね」
そんなの当り前だ。 私があるの立場でも、迷う事なんてない。
でも、今私は、1人に戻りたくないと思ってしまっていた。
毎日大変で疲れることも多いけど、何だかんだ楽しいと思っている自分がいるのだ。
「絶対に帰れるからね」
「おう」
それを悟られない様に、私は平静を装った。
「で、今何時よ」
時計を見るともう昼前。
「ちょっと! もうこんな時間じゃない! バイト行かなきゃダメじゃない!」
「お、おう?!
私は急いで蘭菜に連絡を入れて謝罪する。
「にゃはは、今朝アル兄から連絡あったから大丈夫だけど、来れるなら今からでも来てくれていいよー」
どうやら、アルが連絡を入れてくれていたらしい。 結構、常識が身についてきたわね。
私の苦労が実ってるってことよね?
「今から出るわ。 今日は講習もないし時間延長するわ」
「倒れたんでしょー? 無理すんなー」
「大丈夫! それじゃまた後で」
私は電話を切って、早速出かける準備を済ませる。 アルにも準備を促す。
アルは特に何も言わずに準備をしていたが。
「飯は? 俺、朝も食ってないんだが?」
「あ……ごめん」
しょうがない……。
「どこかのコンビニでお弁当買って行きましょ」
「んむ……お前の料理じゃないのは残念だが背に腹はってやつだな」
そんな風に言ってもらえるとちょっと嬉しいけど……もうっ、今日の夕食は奮発しちゃおうかしら。
ちょっと気分が良くなったところで部屋を出るのだった……。
コンビニで、ちょっとした事件に巻き込まれるなんて、この時は知る由もなくかった。
◆◇◆◇◆◇
「いらっしゃいませ」
予定通りに、途中でコンビニへ入り適当に弁当を見繕う。
「これでいいぜ」
「はいはい」
かごに入れてアルの分を入れてついでにお茶も入れる。
もう買うものは無いので、レジへ向かうと……。
「金を出せ!」
「へっ?」
なんかありきたりなセリフを吐いて目出し帽を被った人が3人で押し入ってきた。
コ、コンビニ強盗?!
レジのすぐ近くにいた私は、あっという間に羽交い絞めにされて人質になってしまう。
「ちょっ……えっ?!」
「大人しく金を出さないと、この女がどうなるかわかってんのか?!」
これまたありきたりなセリフを吐いて、ナイフを私の顔にあてがう。
「……」
「なんだなんだ?」
一人だけ状況がわからずに、不思議そうな顔ををしてこちらを見ている。
「おい、動くな! この女を傷物にするぞ!」
「あぁん?」
「ア、アル! じっとしてて!」
私、殺されちゃうじゃないの! ここは穏便に済ませるのよ。
店員さんは早くお金を……って。
「ガクガクブルブル」
「ちょっとぉ!! 何腰抜かしてるのよ! さっさと金出しなさいよ!」
「ね、姉ちゃん、俺らの仲間みてぇになってんぞ……」
店員を脅している強盗犯が、こっちを向いて呆れた声でそう言う。
うっさいわね! 人間誰しも自分が可愛い物なのよ!
「おいお前ら、有栖から手を離せよ」
「アルッ!」
「大丈夫だ。 そんな玩具じゃ人に傷は付けられねぇよ。 そっちが離さないなら……悪いがちょっと痛い思いしてもらうぜ!」
そう言ったアルが、姿勢を低くしたと思ったら視界からその姿が消える。
そして気が付いた時には、私の目の前に姿を現し、私を捕まえていた強盗犯の手首を握っていた。
「ぐぉ?! な、なんて力して……」
グギィッ!
「てぇぇぇ!」 手、手首が?!」
「柔いな……」
「ア、アル?!」
「もう大丈夫だぞ、有栖」
「っ……」
胸が急に高鳴る。 な、何なのよこの胸のドキドキ!
とか思っていると、体が自由になる。
後ろを振り向くと、私を人質に取っていた強盗犯が膝をついて右手首を抑えている。
アルが手首を折ったのかもしれない。 せ、正当防衛になるのかしらこれ?
なんて心配をしてると。
「折れてはねぇよ。 ただしばらくは使い物にならんだろうがな」
「え、えぇ……」
異世界人の力を垣間見た気がする。 やっぱり私達とは住んでた世界が違うのだと思い知らされる。
それにしても……かっこいい。
「や、やべぇこいつ! 逃げるぞ!」
強盗達が慌てて店から飛び出していく。
「アル! 逃がしちゃだめよ! 無傷で捕えなさい!」
「おうよ!」
私の言葉を聞いたアルは、物凄いスピードで3人を追い越し軽く体に触れた瞬間、3人は崩れ落ちるようにその場で倒れた。
「な、何したの?」
「んあ? 軽く体内に電撃魔法を流し込んだだけだ」
「魔法は使用禁止っていったでしょぉ」
「あ、わりぃ……つい」
「ついじゃないわよ……ほら、目立たないうちにさっさと行くわよ」
後は店員さんが何とかするでしょう。 私達は、騒ぎが大きくなる前にコンビニを後にした。
「弁当……」
「が、我慢して」
「うぅ……」
仕方ない、蘭菜の家に着いたらキッチン借りて何か作って上げましょう。
それにしてもさっきのアル……かっこよかったなぁ。
ふふっ、ちょっとアリスさんがアルの事を好きなのわかるかも。
その後、藤宮書店に着くと、お客さんや蘭菜の間でコンビニ強盗の話題になっていたが、知らん顔で話を聞き流すのだった。
強盗事件に巻き込まれるも、アルが見事に解決?
その姿に有栖も胸キュン?




