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第4話 悲しき愛

瑠はダンジョンが現れるようになってからダンジョンに潜ることが増えるようになった。

最初の方は人が多かった。瑠がスライムを簡単に倒すとスライムなら俺でも倒せると言って痛い目を見て帰る者が増えていった。たまに死にそうになっている人を見つけた時は助けることもあった。


夕方までには帰ってダンジョンで何を倒したのかを自慢していた。両親は冗談だと思っていたそうだが、あとから凄く危険なダンジョンだったのだと知らされた。


『そういえば、スライムは骨溶かしてたけどあれって人間のだったんじゃ』


瑠はダンジョンが少し恐ろしく見えた。

ただ、瑠からすれば簡単に倒せる敵なので、その恐怖心も一瞬で消えていた。


人がいなくなる分には良かったので修行の場として最高の場所だった。



瑠は高校を卒業した。

それからは今までの修行をする頻度が減っていった。

就職する必要があったので、適当に応募して採用をもらった。

2年ぐらい順調に働いていると、昇級するチャンスがやってきた。

瑠は父と母にこの事を伝えようと早く仕事を終えてほしいと願っていた。

そんな時、アラームが鳴った。


「地震のアラーム?でも揺れてないし。」


すると遅刻してきた社員の永川がものすごい形相をして扉を開けた。

瑠は嫌な予感がしたのだ。

なにか大変なことが起きているということは分かったのだが、瑠はなにかが心の中に詰まっていた。

「大変だ!魔物が!ダンジョンから出てきたぞ!」

『違うそれじゃない。なにか大切ななにか...』

瑠はそれを分からなかった。

いや、分かりたくなかったのだろう。


「父さん、母さん...」


瑠は会社を飛び出した。

魔力を足に最大まで込めて。


「いて!こんな時になんだ!」


魔力が足に動かせなくなっていたのだ。

こんなことをしていたら助けられない。


魔力を込めるのを諦めて、全力で家へと走った。


瑠はぐちゃぐちゃになった家を眺めていた。


「父さん、母さん?」


今日は2人とも家にいたはずだ。父はリモートワーク、母は仕事が休みだった。家にいたのだろう。目の前にあるなにかがそれを証明していた。


瑠がいつも見ていた指輪を見つけた。腕のみになった母の姿を。

父がいつもつけていた母が送った手作りの白いネクタイが真っ赤に染まっていた。


「あ゛あ゛あ゛あ゛!」


瑠の顔は酷く悲しみや怒りが心から出たのだ。

それは魔物に対してではなく守れなかった自分への感情だった。


『あの時、魔力を込めて走れていたら助けられたかもしれない。ちゃんと普段から修行していたら助けられたかもしれない。』


色んな感情がぐちゃぐちゃになって、瑠はダンジョンの方へ身体を向けた。


「ダンジョンなんてなければ...」


瑠の足取りはダンジョンへ向かっていたが、その足は重々しくダンジョンの方へ怒りの矛先を向けていた。


『魔力を無理やり身体へ動かした。

想像を絶する痛みが身体中を巡っていた。

痛い。痛い。痛い。

死ぬかもしれない。

だけど、それでもいいと思った。

これは自分への戒めだ。』


そこからは瑠は何も覚えていなかった。

何体倒したのか。

どれだけ傷ついたのか。

ダンジョンに取り憑かれたように動くその身体は哀しく見えていた。


瑠が気づいた時にはダンジョンは消えていた。

足や腕はぐちゃぐちゃ。

身体は傷だらけ。

このまま死んでいくのだと瑠はそう感じた。


「父さん、母さん、会いたいよ。」


瑠はそのまま意識を手放した。

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