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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
1章

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お義母様襲来②

「っ」


「私たちにはそれより前に、色々と話すべきことがあるわ」


「……」


「……えぇ」


 しかし見ているだけでこちらも笑ってしまうような笑顔は、唐突に変化する。

とても真面目な表情だ。

ここから本題に入っていくのだろう。

周囲の空気や、ずっと黙っていたカタリナ様の視線も鋭くなる。これから問い詰められるみたいで、早くも胃がキリリと痛む。


「まずは、うちの事情についてから話しましょうか。こちらの立場を明確にしておきたいからね」


「分かり、ました」


「私たちが少し前の戦いで主人と、後継者まで失った事はご存じかしら?」


「はい」


「あら。ちゃんと調べてくれているのね。ありがとうセレスティーヌさん」


「当然のことです」


 そしてまずは、この家の現状について話が始まった。

たぶん精霊についての話をする前に、私が信頼できるかどうか見定めるつもりなんだろう。


 ちなみに、セレスティーヌはこのことを知らなかった。

これは前世の、大野詩織の知識だ。

危ない危ない。きみたて遊んでて良かった~っ。


「ですから、ギルバートがそのぶん身を粉にして頑張ってくれているの。あの子がこれまであまり勉強してこなかった政務を、ね」


「……」


「もちろん私たちも影ながら手伝っているのだけど、やはり領主で、それに戦争の処理もあるとなると当主であるあの子にしか決められないことも多くてね。何より、あまり手伝わせてくれなくて」


「そうなん、ですね」


「きっと、自分が背負わなくちゃいけないって思ってるのね、私に似て頑固だから」


 ヒルデガルド様の声色からは、息子への強い愛情が伝わってくる。心配もだ。

対してこちらへ向かう視線は刺すようで、反応を窺っているように見受けられた。


 取り繕うことも無く、素の反応を返す。

ギルバートの境遇はいつ聞いても過酷で、辛い気持ちになるからだ。

家族を失った悲しみを背負い、しかし飲みこんで、恐らく自責の念から猛烈に仕事をしている。


 果たしてどれだけ大変なのだろうか。

彼女の様子を見るに、あまり残された家族と会って話したりもしていないのだろう。

物言わぬ歯車となって、働き続けているのだ。


「だからねセレスティーヌさん」


「はい」


「私は、もしあなたがそれを邪魔するのなら、帰って頂くこともやぶさかではないと考えているの」


 一体「セレスティーヌ」は、この話にどんな反応をしたのだろうか。

この家に来るまでは帰りたがっていたかもしれないけど、相手はあのギルバートだ。

むしろお近づきになりたいと思ったかもしれない。


 でも姑から釘を刺されて、相当反発しただろうな。

婚約相手から蔑ろにされ、初夜もすっぽかされ苛立っていただろうから。


 そうして彼の母親へ恨みを抱いたから、初めて力を行使する相手として選んだのかもしれない。


「……はい」


「まぁ、滅多なことではそうしないから安心して?あなたは夫の友人の娘だもの。悪いようにはしないわ。よほど悪い人でなければ、ね」


「……えぇ」


 だけど当然、今の私はそんなことをする気なんて毛頭無かった。

……っていうかむしろこんなに良い人だったんだと感動しています。

より深く原作を知れた気分だ。

で、こんな人を手にかけたんだもん。そりゃ彼に恨まれるわけだよ。

よその家に嫁いで無視されて、義母には詰められて、不安になる気持ちは分からないでもないけどね。


「なんて。ごめんなさいね」


「へっ」


「散々脅すようなことを言ってしまったけれど、私たちは今、新たな悩みの種を増やしたくないだけなの」


 ヒルデガルド様は神妙な面持ちになっているだろう私に、フォローをしてくれる。

困ったような顔で、素直な気持ちまで打ち明けてくれる。

どうやら、一定の信頼は勝ち取れたみたいだ。

声色が暗くなったのだって、普通に悲しくなる話だったからなのかも。


「先ほどから黙っているカタリナも同じ気持ちよ」


「えっ」


「むしろこの子はギルバートの事が大好きだから、私よりあなたに厳しいかもしれないわね」


「ちょっ!? お母様っ!?」


「まぁ……」


 カタリナ様をイジって、暗くなってしまった部屋の空気を和ませてもくれた。

固くなっていた体がより緩む。仲良しな姿が微笑ましい。


 あと、カタリナちゃんかわいい。

彼女も例に漏れずギルバートルートの登場人物であり、物語が進めば兄同様のデレを見せてくれるキャラクターなのだ。

その片鱗を味わわせてくれる。

気の強そうな、でも丸っこくてやっぱり愛らしい顔立ちが一気に赤くなる。

いかにも悪役令嬢っぽい黒めのツインドリルが揺れる。

さっきまで一言も発しなかった口から、焦りきった大きくて可愛い声が出る。


「だから、くれぐれもよろしくね。セレスティーヌさん」


「はい」


「遠いところまで来てもらって申し訳ないけれど、少し大人しくしていてもらえると助かるわ」


「はいっ!」


「あら、いいお返事ね。まぁもしくは、ギルバートの仕事を手伝うとか、そのために勉強したいと言ってくれてもいいけれど」


「……はい」


 果たして向こうがどう思っているのかは分からないが、私はこの30分ほどで彼女たちの事が大好きになってしまった。

元々好きだったんだけどね。


 でも、殊更に。だから言われた事には素直に従おうと思う。

仕事はまだちょっと待って欲しいけど、しばらくはあんまり派手な事しないようにしようかな。

精霊ちゃんたちとはできるだけ早めに触れ合いたいですが。


 ……そこまで考えて、本当に大変なのはこの後なのを思い出した。

のんきに嬉しがってる場合ではなかったかもしれない。

まぁこんなに優しい方なんだから、あんまりひどい事はされないだろうけどね。

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