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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
2章

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作戦決行!④

「へっ」


「なッ!?」


 なんて思ってたら今度は私に矛先が向いた。

しかも、やたら鋭利に。


 パッと恋人繋ぎを離す。


「い、いやっ。カタリナ様っ。こ、これは違くてっ」


「へぇ。違うそうよ、お兄様?」


「そう、なのですか……」


「あらセレスティーヌさん。お兄様が落ち込んでしまったわ」


「あ、いやっ。違うっていうのは言葉の綾でっ!」


「うふふ。なら指と指と絡め合っていたのは、どうしてなのかしら。ねぇ?お兄様?」


「……どうして、なのですか?」


「うッ……」


 咄嗟に切り返そうとしたら、今度はギルバートにも追撃された。

何故かやたら興味津々で、手を繋ぎ続けていた意図を聞いてくる。


 すごく気になるらしい。

やけに前のめりだ。

とっても顔が近い。

大きくて綺麗な瞳に見つめられる。

さっきと違って、恥ずかしさとドキドキで頭が爆発しそうだった。


「なんて、冗談よ」


「あ、そ、そうですよね!ほらギルバート!カタリナ様とハグ!ハグしましょう!」


「あ、そ、そうですね。カタリナ、こっちへ」


「はぁ……。あなたたち、そんなことをしてるのにそれだと、先が思いやられるわね……」


 早く逃れたくて、差し出された助け舟に必死で乗っかる。

両手で彼をカタリナ様へと促す。


 願いが通じたようで、マルガレーテちゃんとファフニールくんをソファへ座らせつつ旦那様は立ち上がった。


 でも、私は横顔を見れなかった。

どんな様子なのか、すごく知りたいけど、知るのが恥ずかしかった。


 何か反対側のソファから聞こえてきたような気もするけど、それどころでは無い。

断じて、義妹様が何を言っているかなんてわからなかったです。


「それじゃあほら、お兄様」


「あぁ」


 やがて落ち着きを取り戻し横目で見れば、彼女は兄のエスコートで優雅に立ち上がる。


「ふふ。温かいわね」


「……あぁ」


 そしてそのまま、彼の胸へと飛び込んだ。

二人はお互いを、きつく、きつく抱きしめ合う。

今までの分を取り戻すみたいに。

それぞれの持つ好意を、噛みしめるみたいに。


「また時々、こうしても良い?お兄様」


「もちろんだ、カタリナ」


「……ほんと、寂しかったんだから」


「うん。すまない」


「ううん。わたくしだってお兄様に寂しい思いをさせたんだから、おあいこよ。それにこうして、抱きしめてくれたからね」


「あぁ」


 とっても幸せな気持ちだった。

今回頑張ったのは二人だけど、この光景を作り上げる一助になったと思うと猶更だ。


 あと、生で見られてるのも相まってより強く思う。

原作のオタクである私が、まさかこんな距離で見られて、しかも関われるなんて。

正直これだけでもう何もいらないなぁなんて思う。

何ならこのままアイゼンハルト家屋敷の壁になってもいいんじゃないか?


「それと、セレスティーヌ。あなたもこちらにいらっしゃい」


「へっ。私ですか?」


 そんなことを思っていると、やがて抱擁を解いたカタリナ様から呼ばれる。


「えぇ、あなたよ。特別に、あなたもわたくしを抱きしめることを許すわ」


「えっ」


「ほらっ」


「へっ!?えっ!?」


 近づけば、なんと彼女にハグをしてもらえる。

ギルバートの温もりも帯びているからか、なんだかとっても温かい。

お肌すべすべで柔らかいし良い匂いもする。


「今回はありがとう。おかげで、お兄様とまた、こうすることができたわ」


「あ、は、はいっ」


 何より顔が良い!

やっぱり兄妹だからかどことなく旦那様と顔が似てて、目を合わせているとちょっとドキドキしちゃう!

原作だとただ兄思いで可愛いなぁっていう印象だったのに、実際触れ合えるとなるとちょっと好きになっちゃいかねない魔力がある!


「仕方ないから、これからはお義姉さまと、呼んであげてもよくってよ……?」


「ふへっ」


「それとも、『セレスティーヌ』の方がいいかしら?」


「ッ……」


 照れた顔も、小悪魔っぽく笑う顔も反則です。

マズい。くらくらしてきた。

魅力的すぎてほんとに好きになりそうだ。


「だからあなたも、私の事はカタリナと呼んでね」


「は、はひっ……」


 でも最後にはにっこり笑顔を浮かべられたので、ギリギリのところで踏みとどまった。


 可愛いなぁカタリナちゃん。

これからはお友達として精霊ちゃん動物ちゃんたちと遊んだりしようね!

お友達としてね!


 でも、一応同性で、たぶん私の恋愛対象でない彼女からでこれなら、果たして同じことをギルバートにもされてしまったら、私は一体どうなってしまうんだろうか。

比喩とかじゃなく本気で昇天してしまうんじゃないか、なんてふと思った。


「それじゃ、次は二人が抱き合う番ね?」


「なっ」


「はぇ……?」


 しかし、危険察知はまさかの現実となってしまうようでした。


「嫌なの?」


「い、いやっ。そうではない。そうではないが……」


「そ、そうですよ!私たちは昔からそうしてきたお二人みたいな関係では無いですし――」


「ならわたくし、お兄様の事嫌いになっちゃうかもしれないわ?」


「むっ」


「へっ」


 流石ギルバートの妹様だ。

私たちが断りづらい理由をすぐに思いついてくる。

この会でようやく関係修復が叶った手前、冗談で言っているのが丸わかりだとしても嫌なんて言えない。


 そんなことを冗談で言えるぐらい、もう二人の仲が元に戻ったのが分かって嬉しくもあるから。


「な、なら、従うしかない、かもしれませんね。セレスティーヌ」


「へっ!?」


 しかも、旦那様はやけに乗り気だった。

まだ抗議しようとする私とは違い、すぐこちらへ向き直ってくる。


 とっても真剣な顔で見つめてくる。

こっちも、すっごく断りづらい。


「もちろん、あなたが嫌でなければ、ですが」


「あ、い、い、いえ。もちろんそんなこと、ありません、わ……」


「ふぅ~ん……」


 まただ。

一気に心臓が早くなって、空気も甘くなっていく。

思わず手を組んで、もじもじとさせてしまう。


 あんまり目は合わせられないんだけど、でもギルバートがどんな顔をしているかはすごく気になる。

彼も同じように視線を忙しなく動かしつつ、赤い顔をしていた。


 蚊帳の外っぽくなったカタリナ様から、今度はにやにやした雰囲気を感じる。


「で、では」


 たぶんこれはもう、無理だ。

逃げることなんて、きっとできない。はず。


 だからもう観念して、ハグするしかないんだ。

決して、私がそうしたいと思ってるとかじゃなくてね。


 なんて、嘘だけど。


「えぇ……。わっ――」


 そうして包み込まれた彼の胸の中は、確かにとても落ち着いた。

大きくて、力強くて、背中じゃなくて肩へ触れた手が優しくて。


 でも同時に、とてつもなくドキドキした。

心臓が吹き飛んでどっか行っちゃうかと思った。


 だってこんなの初めてだったから。

あと、服の上からでも分かる身体の逞しさが、すごくかっこよかったから。


「それじゃ、二人の代わりに私はこの子たちと遊んでるわね」


「あ、え、あ……」


「……」


 カタリナ様がマルガレーテちゃんとファフニールくんの相手をするものだから、ハグの時間は思っていたより、ちょっとだけ長く続いた。

もしくは、私たちが、どっちもまだ離れたくないって思っていたからか。

明日からは8時10分に更新します。

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