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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
2章

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作戦決行!②

「……それにしてもセレスティーヌさん?」


「は、はいっ」


 この場の人数が増えたということでお茶を温め直してもらった後、カタリナ様が口を開いた。

すぐ本題に入るかと思ったが、言葉を向けられたのは私だ。


「なんでわたくしは、あんなに待たされたんですの?」


「あ、えっと、それはぁ……」


 そして、ちょっとどうにも答えにくい質問をされてしまう。


 ……どう答えるべきかなぁ。

起きたことを正直には、流石に恥ずかしくて言えない。

かといって嘘を言えばすぐ見破られそうな雰囲気だ。

腕を組みながら、むすっとした顔で見据えられている。


「ね?」


 いたたまれなくて、すぐ横に座っているギルバートへと助けを求める。

いつもよりもずっと距離が近くてドギマギしてしまいそうになるのは秘密。

これからが大変だろうという事実で頭をいっぱいにし、できるだけ考えないようにする。


「あ……。まぁ、はい……。すまない、カタリナ。私が少し、セレスティーヌの手を煩わせてしまってな」


「あ、いや。違いますカタリナ様。私がちょっと、その、粗相をしてしまったと言いますか……」


「そんなことは……。悪いのは私です。私が不用意な事を言っただけで……」


「違います。ギルバートはそんな、変な事、なんて……」


「あっ……」


「う……」


 でもなんか、押し問答が始まってしまった。

最終的には、互いにさっきの出来事と言葉、空気を思い出してもしまう。


 結局ドギマギしてるじゃん私!

こんなことしてる場合じゃないのに!

ちゃんと兄妹の関係修復を頑張るつもりだったのに!


「……とりあえず。悪いのは私だカタリナ。待たせてしまってすまない」


「いえそんな。私が――」


「そこまで」


 再び言い合いが始まりそうになると、他でもないカタリナ様に制される。


「はぁ……。大体分かりましたわ。その事に関してはもういいです」


「あ、あぁ……」


「はい……」


 しかも、やれやれという風に首を振られてしまった。


 呆れられちゃったかな……。

ほんと申し訳ない。こっから頑張るから!


「では、さっそく本題に入らせて頂きますわ。お兄様」


「あぁ」


 そうしてついに、話は今回ギルバートを拘束してまでしたかったところへと入る。


「よろしければですが、聞かせて頂けますか?」


「……」


「なぜ、わたくしを避けるのか」


「……あぁ。分かった」


 問われたのは、戦後からこれまでに及ぶ二人の関係の、核心に迫る事だった。


「ギルバート……」


 想像通り途端に重苦しくなった空気を見かねて、彼の名前を呼ぶ。

心配だからだ。


 これから話すのは、彼の心の最も暗く弱い部分、その一つだろう。

怖くないはずがない。


「大丈夫ですよ。私も居ますから」


 だから何かできないかと考え、膝の上で硬く握られた右手に触れる。

その上から、握りしめる。

前も同じような事をしたけど、他のやり方が思いつかなかった。

代わりに精一杯、あらんかぎりの力を籠める。


 瞬間的に握りこぶしが緩んだせいで、指が絡まって恋人繋ぎみたいになっちゃったのはこの際気にしない。

気にしないったら気にしない。


「それに、二人も」


「……えぇ。ありがとうございます。マルガレーテさんと、ファフニールも」


 私の膝上で様子を窺っていたファフニールくんが、彼の方へと移動する。

マルガレーテちゃんも私の腕から、彼の腕へと移り抱きしめる。


「……なんだかそうされると、わたくしが悪者みたいね」


「なっ!ちがっ!そんなこと――」


 すると、蚊帳の外っぽくなってしまったカタリナ様がひどく弱気な声でつぶやいた。

たぶん、兄を傷つけてしまったかもしれないと思っているのだろう。

あるいは、やっぱりこんなこと、半ば無理矢理にするべきではなかったのではないか、と。

今にも泣きだしそうな表情に見える。


 でも絶対に違う。

勇気を否定して欲しくなくて、咄嗟に、必死に反論しようとする。


「違うよカタリナ」


「……」


「お前は悪者なんかじゃない。今も、これまでもな」


 しかし、それよりも先に反論したのは、他でもないギルバート本人だった。

彼は一切揺らぎの無い、力強く芯の通った声で、違うと嘘偽りなく、明確に、優しく否定する。

落ち込む妹を、きっぱりとなだめる。


「少し、聞いてくれるか?」


「えぇ。もちろんですわ」


「ありがとう。カタリナ」


 そして、心の中を打ち明け始めた。


「私はね。カタリナが私を想ってくれていた……想ってくれているからこそ、それを知っているからこそ怖かったんだ」

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