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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
2章

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作戦決行!①

「近頃考えるのですが……」


「はい」


「私も彼女らの世話をするべきかな、と思うのですがどうでしょうか」


「あ~」


 カタリナ様と組み上げた作戦決行の日、私は予定通りギルバートを部屋に迎え入れていた。


 とはいえ他にすることはと言えば、普段と全く変わらない。

休憩のため訪れた彼を、事前に用意してもらったお茶やお菓子でもてなしている。

適宜、我が家族たちと触れ合ってもらっている。


 ファフニールくんを迎えてからも全く同じな、一息つくための時間が流れる。


「……というより、正直に言います」


「はい」


「少し、してみたいなと」


「なるほど」


 まぁ最近、私とのコミュニケーションが多くなった気はするけどね。


 あと、砕けた。

前までは、喋る時いくらか肩肘を張っていたようだったけど、今は全然そうでもない。

表情もごく自然で、こうして緩い本音を話してくれることも増えていた。


「でしたら、お昼前ごろにお越しください。いつもその時間にやってますから」


「おぉ。ありがとうございます。助かります」


「いえ。マルガレーテちゃんもファフニールくんも、ギルバートの事が好きみたいですからね。むしろ喜ぶと思いますよ」


「それは嬉しいですね。二人とも、その時は頼みます。……ふふ」


 より「会える」予定が組めると、とっても嬉しそうだ。

期待に満ちた笑顔を浮かべながら、近くに佇む二人を見つめ、撫でている。


 ふっふっふ。この後あんなことやこ~んなことをされちゃうとも知らずにね!


「ところで、先ほどから思っていたのですが……」


「はい。なんでしょう?」


「今日着てらっしゃるそれはもしかして、マルタの店で作ってもらったドレスですか?」


「おっ!えぇ、そうです!よく気づきましたね」

 

 そろそろ計画を進めようかと思っていると、話は別の所へ移り変わった。

そう。実は今着ているドレス、マルタさんにお願いしていたものだ。


 ちなみに、1着目は水色で清楚かつ可愛い感じに仕上げてもらった。

デザインもさることながら裾が少し高めで、袖もほんのり短くてかなり動きやすい。

本格的にお世話する時はさっと割烹着に似たエプロンをすれば、汚れもほぼ気にしなくてよくなる優れモノである。


 今日初めて着てみたけど、既にお気に入りだ。

鏡を見てみたらとっても可愛らしい姿の自分が居て、朝からとんでもなくテンションが上がった。

さすが領主御用達のお店だね。いい仕事するぅ。


「えぇ、まぁ。……」


「……?どうしました?ギルバート」


「……いや、その。……セレスティーヌ」


「は、はいっ……」


 気づいてもらえて、彼女たちの素晴らしい仕事が認められたようで喜んでいると、なんだかギルバートが口をもごもごとさせる。

何か言いにくいことを言おうとしてるのだろうか。

なんだろうと思いつつも、醸し出すじれったいような雰囲気につられる。


 ちょっと照れて、名前を呼ばれただけなのにドキドキしてしまう。


「似合っています、ね。そのドレス……」


「へッ……!」


 しかしその先に待っていたのは、ちょっとどころではないときめきだった。


 彼がちらりちらりと視線を彷徨わせつつも、褒めてきたのだ。


「機能性もあるようで、精霊や動物好きのあなたにぴったり、かと……」


「あ、え、あ、ありがとう、ございま、す?」


「あ、え、えぇ……。いえ……」


 しかも、たぶん選び方のセンスまで。

恐らく、私自身まで。

最後には、しっかりと目を見つめてきながらだ。

まるで、口説いているみたいに。


「あ、あはは……。ちょ、ちょっと今日はなんだか暑い、ですわね~……」


「は、はい……」


 ななななんのおつもりですか!?

一体どういう考えでそんなこと口走ったの!?

意味わかんない!


 現実逃避しそうになるけど、照れてる姿とかから大体の意味は想像できた。


 もしかすると、純粋に良いと思ってくれたのだろう。

そしてそこには、ひょっとしたら、ことによると、恋愛的な好意も乗っかっていた。

ような気が、ほんの少しだけ、万に一つはする。


 ホントに、定かではないんだけどね。


「……」


「……」


 というかそうなるとさらに考えちゃうことがある。

いつの間にか、以前のきっかけからお互いを呼び捨てし続けてるけど、その意味ってなんなんだろう。

単純に心の距離が近づいただけ、と言ってしまえば終わりなんだけど、どこかそれ以上を期待してしまう自分がいる。


 例えば、もっと距離を縮めたい、とか。


 そもそも私はなんでずっとギルバートって呼んでるんだっけ?

やっぱり、彼の事を――。


 なんて時間が過ぎていってると、視線の先、廊下へ出るためのドアが音も無く開いた。


「あっ……」


「む?セレスティーヌ?どうかしましたか?」


「あっ、いえっ。なんでもありません」


「そうですか?なら良いのですが」


 そして密かにひょっこりと顔を出したのは、カタリナ様だった。

きっといつまで経っても作戦決行の合図が無い事に業を煮やしたのだろう。

目だけで「早くしろ」と訴えかけてくる。


 すぐに部屋の中へ流れる空気をうっすら察したようで、ジトっとした視線を向けてもくる。


 ……ほんとすみません。

でも彼がぁ!急に褒めてくるからぁ!


「でも……」


「でも?」


「マルガレーテちゃん!ファフニールくん!やっちゃえ!」


 心の中で言い訳をしつつ、ついに計画を前へと進める。


「何を――。なっ。マルガレーテさんっ。ファフニールっ。ちょっ。うごけなっ……」


 マルガレーテちゃんとファフニールくんに、ギルバートを拘束してもらうのだ。

肩とか頭に乗ってもらうだけなんだけどね。


 しかし彼は、その場で固まる。

自分がバランスを崩せば二人が危ないと分かっているからだろう。

まぁもしそんなことになっても全然受け身とか余裕で取れるみたいだけど。


「カタリナ様!」


「へっ……」


「はぁ……。やっとですのね」


 そうして目標が逃げられない状態でようやく、カタリナ様が部屋へ入ってくる。


「お兄様。わたくしとお話、してくださいますね?」


「む……。……あぁ。分かった。分かったから彼らを降ろしてください。セレスティーヌ」


「えぇ」


 ついに、アイゼンハルト家の兄妹が対面した。


 でもこれって、ちょっと無理矢理すぎたかな?

重苦しい空気を発する旦那様の姿に思う。

家族思いの彼がわざわざ避けてるわけだし、想定していたよりももっとしっかりとその理由を捉えるべきだったかもしれない。


 とはいえ、原作知識から照らし合わせるとたぶん大丈夫なはずだ。

だってギルバートが彼女を避けてたのって、父と兄を守れなかったために嫌われたかもしれない。それが怖いっていうのが理由だから。

もちろんそんなことは微塵も無いわけで、であれば一歩踏み出す勇気さえあれば、二人の関係は絶対に元に戻るはずなのだ。


 というわけで私は、自分から行動を起こしたカタリナ様もだけど、サプライズ気味にこの状況となったギルバートのフォローを何より忘れないようにしよう。

そうすればきっと、きっと大丈夫。

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