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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
2章

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義妹様襲来①

「あぁ……。幸せ……」


 私は今ソファに座りながら、マルガレーテちゃんには相変わらず腕へ巻き付かれ、ファフニールくんには反対側の腕へ乗られていた。

ちなみにファフニールくんというのは、少し前迎えたグリーンイグアナのことだ。

一緒に暮らしていいというお達しが来たので、ギルバートに名前を付けてもらった。


 段々と彼もこの家、そして私の部屋に馴染みつつある。

最初はシェルターからあまり出てこなかったが、近頃は平気でこちらへ近づき、触らせたり乗ったりしてくれていた。

おかげさまで日々筋肉痛気味です。ありがとう。


「ん~っ。二人ともホントに可愛いねぇ~」


 さらに、二人はしっかりと互いを尊重してくれている。

本来ならこんな風に放し飼いしてたらほぼ確実にトラブルが起こるはずだけど、そんなことこれまで一度たりとも無かった。

異世界最高!


 たまにファフニールくんが、マルガレーテちゃんにやたら構われようとすることはあるけどね。

けど彼女が尻尾で薙ぎ払うと、一回で理解してくれるのだ。


 しかもその後ツンと優雅にする蛇の美しさと言ったら……。

美人過ぎて感動すらしちゃう。


 もう片方ももう片方で全く気にせずケロッとしてるし。

天才すぎるだろ我が家族たちは。

やっぱり人間より賢いね。


「ほらっ。ちゅ~っ。ちゅ~っ。……あ逃げないで逃げないで!」


 むしろ、私の方がアホかもしれないと思うことが多々ある。

今もこうやってちゅ~しようとしたらさっと逃げられてるし。

我ながら情けなすぎる。


 でもこうしてぞんざいに扱ってくれるのもまた、爬虫類っぽさを感じられてイイ。

それでいてちゃんと家族、少なくとも仲の良い同居人として扱ってくれる時もあるのがニクい。

もうセレスはメロメロです。


「……何してるんですの。あなた」


「へっ……?」


 そんなアホ面を晒していたら、いつの間にか部屋へ入ってきていた人物に気が付かなかった。


「はぁ……。全く。先が思いやられるわね……」


 ギルバートの妹、カタリナ様だ。

一体、何の用事だろうか。




「こうして顔を合わせるのは、あなたが我が家へ来た翌日以来ですわね」


「はい。……あっ。ろくにご挨拶もせず申し訳ありません」


「いえ。そういうことを言いたいわけではないわ。それに、全く気にしていません。わたくしがそのような小さい事を気にするような女に見えて?」


「あ、いえ、そんなことは……」


 少し長くなるだろうからということで、私の部屋にはお茶会の用意がなされた。

ローテーブルには、アフタヌーンティーでおなじみのケーキスタンドと茶器が並べられている。

いくつか頂いたけどとってもおいしかった。

甘いもの多めで、カタリナ様お気に入りのラインナップらしい。


 そんな可愛らしい机の上に反して、まずは挨拶が無かったことを詰められるのかと思ったけど違った。


「はぁ……。なんて、ごめんなさい」


「へ?」


「ほんとダメね、私は……」


 彼女は謝罪してくる。

相変わらずの黒いツインドリルを俯きながら揺らし、強気そうな顔を「やってしまった」という風にしかめる。

むしろ漂う印象は弱弱しい。


「キツい言い方で怖がらせてしまったわよね」


「い、いえ」


「それに、顔も怖かったでしょう?表情が硬くなるのが私の癖なの……。でもそんなつもりはなくってね?私はただ、あなたと話したい事があるだけ」


「話したい事?」


「えぇ」


 威圧してしまったのではないかと、私を気遣ってもきた。


 なんて優しい人なんだろう。

私は、彼女の大好きな兄を奪ったと思われても多少仕方ない相手だ。

ギルバートはカタリナ様の事、今は避けてるだろうし。

何よりこっちは二人で過ごしたり出かけたりしてるし。


「あ、というより、怖かったりなんてしていません!」


「へ?」


「むしろその、カタリナ様のお顔は、大変すばらしいというか、可愛らしいというか、ご家族に似て大変整っているというか……」


「ふぅん……」


 だというのに思いやってくれるのが嬉しくて、こちらもこちらでフォローをする。

あんまり上手い返しが思いつかなかったので、とにかく「顔が怖い」という部分を否定してみた。


 割とまんざらでもない様子だ。

家族も混ぜてみたからか、ひそめられていた眉間が緩む。

ちょっと嬉しそうにスンとする。


 いや、やっぱり可愛いなカタリナちゃん。


「まぁいいわ。それでねセレスティーヌさん。ここへは、頼みごとをしに来たの」


「へ。頼み事、ですか?」


「えぇ。お兄様の事についてね。だからあなたは、妻として堂々としていて」


「分かり、ました」


 しかもそんな彼女はどうやら、私を頼ってくれるらしい。

私よりずっと仲が良いだろう旦那様の事で。


 一体何だろう。

あんまり力になれるようなことは無い気がするけど。

けどせっかくの頼みだから、精一杯頑張らせて頂きます!


「じゃあ、さっそく本題に入るわね」


「はい。お願いします」


「ふぅ……。その、えっと、うん……。あなたにはね?私とお兄様の――を――て……」


 そう思った矢先、カタリナ様の声はびっくりするぐらい小さくなった。

小さな口をもごもごとさせ、視線も逸れる。

顔も段々と赤くなっていく。


 可愛らしいところ申し訳ないんだけど、本題は全く分からなかった。


「へ?すみませんカタリナ様。今なんとおっしゃいましたか?」


「えっと……。その……。私とお兄様の仲を――って頂きたくて……」


 聞き返しても変わらない。

恥ずかしがっているのか、肝心な部分だけひどく弱弱しい声色になる。


 え、ホントに何だろう。

なんだか重要なコトっぽいし、分からないまま頷いたら良くないことになりそうな予感。


 とはいえあんまり聞き返すと失礼かもしれない。

声が小さくなるって事はちょっと言いづらい事だろうからね。


「す、すみません。どうも私の耳の調子がおかしいようで、もう少し大きな声で仰っていただきたく……」


 ただ、分かってあげられないのが嫌で、最後にもう一度だけ尋ねる。

できる限り前のめりになり、どれだけ小声でも聞き漏らさないように。

機嫌を損ねてしまわないよう、できる限り下から下から、申し訳ないという雰囲気を全力で醸し出しながら。

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