新精霊加入!②
「はい」
「そろそろ、この子をどうするか決めましょうか」
「へっ。あっ、そうですね」
やがてギルバートの言葉で、今はそれほど悠長にしている場合ではないことを思い出す。
幸せすぎて領民さんたちが見ているのをすっかり忘れていた。
このままスキンシップしてたいけど、何が起きてるのか彼らに説明しなければ。
何かしら答えを出して、安心してもらわないとだ。
元から心は、ほぼ決まっているようなものなんだけどね。
「ギルバート」
「はい」
「この子、一度連れ帰っても大丈夫、ですか?というか、私の部屋で一緒に暮らしても……?」
この場を治めるため一度連れ帰り、その後オロバリス様と話すのだ。
そしてあわよくば、マルガレーテちゃんと同じように我が家へ迎えさせてもらいたい。
だって、可愛いので。念願のざらざらなので。
もちろんアイゼンハルト家に迎えるのは、トルニトルスくん、マルガレーテちゃんと続いて3頭目だ。
さらに精霊としては2頭目でもある。
許してもらえるかは分からないけど、しかしだとしても一緒に暮らしたかった。
マルガレーテちゃんのお世話には余裕が出てきたし、侍女さんたちにいざという時手伝って貰う体制も作って頂いてある。
しかもこの子はお世話が幾分楽な精霊だ。まず間違いなく大丈夫だろう。
何より、森に戻してまた街中へ出てきてしまったら、お互いに困りあってしまうからね。
なんだかちょっと抜けてる雰囲気も、この子から感じるのだ。
「えぇ。もちろん」
「え、あ、いいのですか?」
流石に家主には嫌な顔をされるか?とちょっと思ったけど杞憂だった。
彼は何の引っ掛かりも無く真っすぐ了承してくれる。
色々と考えた理由を説明する必要すら無かった。
やっぱり相当動物好きだからかな。相変わらず良い趣味だ。
あと、私と好きなものが合うね。
これなら、もしもっと仲良くなって、恋人みたいな関係になっても、なんてふと思ってしまった。
まずいまずい。さっきから妄想が暴走してる。
勝手にこんなこと想像するなんて失礼だろうから抑えないと。
「はい。もちろんオロバリス様にお伺いを立てる必要はあると思いますが、了承頂けたら私は大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます」
「いえ。何より、私がまたこの子と会いたい、というところもありますからね」
「あはは。そうなんですね」
でもやっぱり、真面目だけどユーモラスなところもあって、素敵な男性だとはとても強く感じた。
どことなく、惹かれてしまう。
普通に話をしつつも、付き合えたらどうなるんだろうなんて考えてしまう。
顔もかっこいいし、何より家族思いだし。
果たしてこの思いの強さが、恋人に向けられたら。
原作のデレかつスパダリな記憶が蘇り、ドキドキしてしまう。
「では、皆に少し事情を説明してから戻りましょうか」
「あ。そうですね。分かりました。……ちなみに、どこまで話していいんでしょうか?」
「私が話すので、あなたはただ隣に立っていてくだされば大丈夫ですよ。あとは、その子を抱きかかえていてくだされば」
「はい」
頼れる所も大いにあるし!
どうやらこの場は彼が治めてくれるみたいだ。
やっぱりまだちょっと人前に立って喋るとか苦手意識があるので助かる。
……でもギルバートは大丈夫なんだろうか?もう領民たちの事、怖くないんだろうか。
「……大丈夫、ですか?」
「えぇ。もう大丈夫です。おかげさまで」
尋ねれば、にこやかに答えてくれた。本当に心配ないのだと分かる。
きっと元から信頼関係があったからだろうな。
お互いに愛情があったから、さっきの一回でもう以前までの調子を取り戻すことができたのだろう。
ちょっとだけ羨ましい。そうして人と信頼を築けることが。
嫉妬してるわけじゃ、たぶんなくてね。
「それじゃあ。えっと、私の腕に乗ってくれる?……わっ」
言われた通りイグアナちゃんにお伺いを立て、左腕に乗ってもらう。素直に応じてくれた。
でも結構な重量だ。ちょっと頑張って持ち上げる。
「あ、すみません。重たくは無いですか?」
「えぇ。これくらいなら大丈夫ですよ」
「ふふ。頼もしいですね」
「へっ」
「では、行きましょうか」
「あ、はいっ」
そうして私たちは、背後で様子を見守る領民さんたちの方へと向かった。
話は、想像していたよりずっと簡単に収まった。
ちなみに、さっきドラゴンじゃないかっていう話が彼らの中で出たからか、以降私にはある噂が出来上がってしまったらしい。
「ギルバートの妻は、ドラゴンを手懐けた」って。
しかもうまく否定できなかったので、その結果噂は真実味を増し、随分評判が良くなったみたい。
どうやら凄い人が嫁いできたらしいぞって。
本当はドラゴンじゃないんだけどね。
でもいつか、このファンタジーな世界に存在するならちょっと会ってみたいかもなぁ、なんて思うのでした。




