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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
2章

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新精霊加入!①

「すまない。通してくれ」


「すいません。失礼しますっ」


 近くにできていた人だかりを掻き分け、その中心へと向かう。

周囲から聞こえてくる声は、思っていたほどは恐ろしげじゃ無かった。

困惑や驚きも聞こえてくる。


「む……」


「まぁ……」


 やがて壁を通り抜けると、騒ぎの中心、つまり事件の犯人が誰か分かった。


「ふむ……」


「かッ……。かわッ……」


「セレスティーヌ。抑えて」


「あ、はい……」


 艶やかでどこか色気のある緑の鱗に、ドラゴンのような厳めしい顔つきをした大型のトカゲ、グリーンイグアナだ。

かなりのサイズだった。

もちろんオロバリス様ほどではないんだけどね。全長は150センチぐらいだろうか。

とはいえ尻尾がそのうちの3分の2ほどを占めるので、胴体だけ見ればあんまり……。

いや、それでもだいぶ大きいな。大型のトカゲと分類されるだけはある。


 鮮やかな色合いがとっても美しい。

ただ緊張しているのか、身体を低くしてじっと固まっている。

長い尻尾も素早く振り回され、威嚇してきているのが分かった。


「あれって……」


「ドラ、ゴン……?」


「ドラゴン!?」


 背中からお尻にかけて並んだ突起など攻撃的な見た目からか、やがてどこからかおとぎ話の生き物であるドラゴンを想起する声が聞こえる。


 それは、神聖な存在であると同時に恐怖の対象でもあった。

誠実な人間に対し知恵や宝物を授けたという話のほか、あるいはただ人間を滅ぼしたという話も残っている。

次第に周囲へは興味と、しかし恐怖の方が強く伝播していく。


「ギ、ギルバート、様……」


「あぁ。皆、下がっていてくれ。私たちがなんとかしよう」


「は、はいっ」


「みんな!ここはギルバート様に任せましょう!」


 ギルバートはそんな彼らを下がらせた。

彼らも命じられるとすぐ、ゆっくりと距離を取っていく。


 う~んさっきは怖がっちゃったけど、やっぱり素直で良い人たちだなぁ。

パニックを起こさないのもありがたかった。

領主様の人望が為せる技かもね。


「セレスティーヌ」


「えぇ」


 むしろ怖がっているようなのは、トカゲちゃんの方だ。

トルニトルスくんほどではないにしろクイクイと忙しなく頭を動かし、周囲の様子を窺う。


 でも大勢の人々と距離が離れるにつれて、少しずつ落ち着きを取り戻していた。

そして、じっと私の方を見つめてくる。


「あの子、恐らく精霊です」


「やはりそうですか」


 すると、なんとなくだけど分かった。あの子は精霊なのだろう。

私の力が気になって、森から出てきてしまったのかもしれない。好奇心旺盛なのかな。

しかしいざ森を出てきてみたら、外の全然違う景色にびっくりしちゃったのかも。かわいっ。


 なんてのは置いといて、だとすれば一刻も早く落ち着かせてあげないとだ。

愛し子の力があるから、近づいて、触れたりすれば多少良くなるかもしれない。

私は少しずつ、警戒されないよう歩み寄っていく。


「セレスティーヌ。私も」


「えぇ」


 旦那様も同行してくれるらしい。さっきから右手は繋いだままだ。

ただ、恐怖心はもう全く伝わってこない。

むしろちょっとワクワクしている気がする。

相変わらず動物好きだなぁ。同行してくれるのも、実は単に近くで見たいからだったり?なんて。


 怖い相手へと領主たちが近づいていくからか、その間背後からはいくつか声が聞こえてきていた。


「怖くないよ~……。おいで~……」


 1メートルほどという所まで来る。

その場でしゃがみ、ゆっくりと手を伸ばす。

意思に任せるため、そのまま向こうから来てくれるのを待つ。


「わっ」


 すると、グリーンイグアナちゃんはダバダバと足を、身体の側面で弧を描くようにバタつかせながら近寄ってきた。

突進でもするかのような、あまりにも勢いの良い動きだ。

結構な速度も出る。


 可愛すぎる!可愛すぎるよそれ!

彼らの歩き方って、優雅な見た目に反して必死感ありすぎて良いんだよね。

地面と平行気味に脚が生えてるから、体の下で動かす犬や猫等とは全然違うのだ。

体の真横で、手を振るみたいにして移動してくる。


「はっ……。あぁ~っ……」


 そしてついに、頭を私の手のひらへと触れさせてくれた。


 身体の上側は、見た目通りのざらざらして硬い感触だ。

トルニトルスくんやマルガレーテちゃんとは違う、また、触れたいとずっと願っていた感触だった。


 しばらく日に当たっていたからか仄かに暖かい。

なんだか頼り甲斐を感じます。

だけど目を細めて気持ちよさそうにしててとっても可愛い。

たぶん私も同じ顔になってる。私たち似た者同士だねっ。


「近くで見ると中々……」


「かわいい、ですか?」


「えぇ。遠くからだとかなり厳めしい雰囲気でした」


「ふふ。そうですね」


 どうやら同じことを、ギルバートも思っているようだ。

似た者同士っていうアホな方じゃなくて、可愛いって方ね。

横顔は落ち着き払い、幸せそうな微笑みを浮かべている。すっごく優しげ。


 ふと、パパになったら子供にもこんな顔をしそうだな、なんて思う。


 ……って何考えてるの私!?

い、いや。べ、別に変じゃないか。

ママがどうとかそういう話じゃないしね。別に私たちの子供とか考えたわけじゃない。

ただ単純に、やっぱりこの人は愛情深いよなと再確認しただけ。そのはず――。


「いてっ」


「大丈夫ですか?」


「えぇ」


 そうして考えていると、イグアナちゃんに指を甘嚙みされてしまった。

別に痛くはないんだけど、とっても抗議の意味合いを感じる。撫でます撫でます。


 首を持ち上げたので、今度はお腹側に触れる。

背中の方と比べて鱗が薄く、皮膚と直接当たるからか結構柔らかい。

たぷたぷもちもちしていてギャップだ。


 気持ちよくて手を動かしていると、相手もうっとりしてくれる。

信頼してくれたのか、頭だけでなく前足も乗せてくる。

撫でられに前のめりなの可愛すぎる。


 ただ甘えん坊というよりは、撫でさせられているという雰囲気があった。

顔つきでどことなく威厳が漂うからか、この子のペースに巻き込まれている気分だ。

う~んそれはそれで良いね。なんだか爬虫類っぽさもあって。


「ところでセレスティーヌ」

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