領地視察兼買い物兼デート兼……②
「あぁ。大丈夫ですよ。彼女には、我が家の事情は伝えてあります」
「あ、そうなのですね。ありがとうございます」
ちらりとギルバートを見れば、すぐさま言いたい事を察してくれた。
へぇ。よく気が付いたね。
ただそういえば、原作でもかなり察しが良かった。
物語が進んで成長しきると、可愛げは残しつつもスパダリっぽくなっていくのだ。
「ではマルタさん。実は私、精霊、というか動物のお世話をしていてね?でもドレスを着ていると少し大変だから、違う服が欲しいの」
やっぱり剣術とかをやってると人の思考を読むのが上手くなったりするのかな、なんて思いつつ聞く。
「なるほど。……でしたら、侍女の方が着るものを元にしつつ、奥様が着てもおかしくないようなデザインにするのが良いかと。何かお好みのお色等はありますか」
「お~……。あ、えっと、そうですねぇ」
す、すごい。あっという間に答えが返ってきた。ちょっと別の事を考えてたから咄嗟に返事できない。なんならまた敬語が出ちゃう。
色?色かぁ。どんなのがいいかな。
前世の私に合いそうな色だったら分かるけど、セレスだとどうなんだろう?
とにかく派手なのを選んでたという記憶はあるけど、果たしてそれが似合ってたかというとちょっと自信が持てない。
ならまた聞いちゃおう。
「えと、マルタさんは私にどんなものが合うと思うかしら。少しそういうのには疎くてね。良ければ教えて欲しいのだけど……」
「でしたら……」
彼女の雰囲気が変わる。
今までは優しいおばあちゃんという感じだったけど、なんていうか開眼した。
私の事をじっと見つめてくる。
脳内では無数の服が試着されていっているのかもしれない。
なんだかかっこいいな。
これが長年アイゼンハルト家の服を作ってきた店の主か。
気迫が伝わってくる。思わず息を呑む。
「奥様は大変美しいお顔をしていらっしゃいますから、思いきって赤系統の派手な色でも良いかと思います。そちらの方が、汚れも目立ちませんからね」
「なるほどぉ」
「ですが大きめのエプロンをつければ、淡い色でもそれほど問題はないかと。もし汚れてしまったら、私たちの方で綺麗にさせて頂くこともできますので」
「おぉ」
「ですので、お世話が好きなようですから、きっと何も気にせず気に入ったものをお召しになる方が楽しいですよ」
「ん!確かに!そうですね!」
「ふふふ。えぇ」
そうして出てきたのは、素敵すぎる提案だった。
確かにそんなの、楽しすぎるかもしれない。
社畜時代はおしゃれなんて殆どできなかった。
仕事中に着られる服はほぼ決まってるようなものだったし、自分に時間をかける余裕なんてゼロに等しいのだ。
時間があるのなら、他の事に使ってしまっていた。
でも自分で選んだお気に入りの服で、一応今の仕事と言っていいかもしれないマルガレーテちゃんのお世話ができるなんて、想像しただけでワクワクする。
あと、なんだかんだセレスティーヌはすごい美人だ。
前世ではちょっと手が出なかったものに挑戦してみてもいいかもしれない。
せっかくだからね。
すごいな。流石は領主ご用達のお店の主だ。
「そうしましたら、お勧めしたいものをいくつか送らせて頂きますね」
「へ?」
「お帰りになった後ご自分で試して頂いて、気に入られたものがもしありましたら仰ってください。それを元に、誠心誠意作らせて頂きますので」
「あ、あぁ。なるほど。えぇ!」
しかもどうやら、ギルバートの事も気遣ってくれた。
確かに今からここで試着したら、どれだけ時間がかかるか分からない。
彼は忙しい身だ。そんなことで待たせるわけにはいかないよね。
恋人って感じの、気の置けない関係でもないし。
う~んとっても良い人。あとかなり優秀では。
私の服だけじゃなくて、お裁縫で何か必要そうなものがあったら色々頼んでみようかな。
「何から何までありがとう。マルタさん」
「いえ。奥様。本日はご足労いただきありがとうございました」
「えぇ。また来ます!」
感謝を告げて、あまり時間が経っていないとはいえ待ってくれた旦那様へ向き直る。
「む。もう良いのですか?私はもう少し時間がかかっても構いませんが」
「いえ。お待たせしてすみません」
「大丈夫ですよ。では――」
やっぱり優しいなぁこの人。
暇だったろうに笑顔で応じてくれる。眩しい。顔が良い。
「ギルバート様。少し……」
「ん?分かった。セレスティーヌ嬢。あなたは先に馬車へ戻っていてください」
「分かりました」
どうやらそんな彼に、マルタさんは少し用事があるようだ。
言われた通り先に出ることにする。乗る時のエスコートは御者の方にしてもらおうね。
「おぉっ!出てきたぞ!」
「まぁ!綺麗な方!」
ということで扉を開け、外へと踏み出した時だ。
「え?」
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