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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
2章

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領地視察兼買い物兼デート兼……①

一帯を治めるアイゼンハルト家の屋敷が置かれた街、ヴェルドナは、王都ほどではないにしろかなり栄えていた。

活気も十分だ。

人々は楽しそうに行き交い、そこかしこから朗らかな声が聞こえる。


 私たちが移動しているのは、最も大きい通りなのだから猶更だった。

荷馬車も多く、経済が盛んだと一目で分かる。

同じく質素なデザインの馬車に乗っているので、これまで目立たず来られているのもありがたい。

商家の夫婦っぽく変装もしておいたので完璧だろう。

これで誰かにバレて、ギルバートが詰め寄られるなんてこと無いはず。

お尻がちょっと痛いけどね。


 ちなみにマルガレーテちゃんが私の腕に巻き付いて同行している。

感触はあるけど、透明化の魔法を使えるらしく見えない。


「それにしても、いい街ですね」


「……む?え、えぇ」


 そしてギルバートはと言えば、緊張しているようだった。

先ほどから話しかけても生返事をされる。

やはり領民にどう思われているのか気になるのかもしれない。


「あの、ギルバート様」


「なんでしょうか」


「本当に見ておられますか?」


「へっ。な、何を、ですか?」


 でも、一度外の活気を見れば分かるはずだ。

この街が失意に沈んでいないことを。

日々精一杯でありつつも、楽しく暮らしていることを。

以前の様子を良く知らない私でさえ分かるのだから、民衆への愛が深いなら当然だ。


 どうすれば話をちゃんと聞いてくれるかと思い、少し顔を近づけて訊ねる。

なにやら驚いて身を引かれるが逃がさない。


「街の様子を、です。お忘れですか?私の買い物もそうですが、領地の視察に来たことを」


「あ、あぁ。そちらですか」


「そちら?」


「あぁいえ。こちらの話です」


 もっともらしい事を言いつつ外を指させば、何やら安堵した様子だった。

……ん?まぁいいや。

とにかく外を見ろ外を!


「それで?」


「あ、えぇ。は――」


 促すとついに、彼は窓から街の様子を覗く。

言葉を失う。


「いかがですか?ご自分が治める街の様子は」


「え、えぇ……。とても、賑わっ、て、いますね」


 なんだか、精霊の森に行った時のヒルデガルド様みたいな姿だ。

やっぱり親子だからかなんとなく似てる。

先ほどまでの緊張はどこへやら、ただじっと周囲を見回していた。

心なしか表情も緩んでいる。


「そうでしょう?それにこれから、もっと間近で見ることができますよ」


「それはどういう……」


 でもこれだけじゃない。

準備の時間に思ったんだけど、もっと詳細に領民の様子を見ることだってできるのだ。


「あ。着いたみたいですね」


「あぁ。なるほど」


 私の目的地。

服屋さんで。




「いらっしゃいませ。ギルバート様。奥様」


「あぁ。出迎え感謝――。む。何故私が来ることを?」


「私が」


 広めの店内に入ると、トルソーに着せられた煌びやかなドレスやチュニック、平民たちが着るワンピース等々の他、品の良い店主らしき老女が出迎えてくれる。


「急に訪ねるのは失礼かと思い、先触れを出しておきました」


「なるほど」


 事前に伝えておいたため貸し切り状態だ。

この街に住む誰もが利用する場所なのだろうが、今は落ち着いた空気が流れている。

もちろんびっくりされたりすることもない。


「……久しいな。マルタ」


「えぇ。とはいえ1年ほどですが」


「……そうか。最後に仕立ててもらってから、まだその程度しか経っていないのだな」


「はい」


 そして何よりここは、アイゼンハルト家御用達の店でもあるそうだ。

貴族だし実際にここへ足を運んだことは無いかもだけど、彼女とは結構会っているのだろう。

ギルバートもどこか安心した様子となる。

「辺境伯様」とか「領主様」ではなく名前で呼ばれるあたり、だいぶ仲が良いのかもしれない。


「紹介しよう。我が妻のセレスティーヌ嬢だ」


「よろしくお願いしま……。よろしくね。マルタさん」


「はい。こちらこそよろしくお願いいたします。奥様」


 紹介されて、自然と敬語で喋ろうとしてしまう。

前世の記憶を思い出してから半月ぐらいだけど、まだ貴族という身分には慣れない。

侍女さんたちになら敬語無しが板についてきたんだけどね。

相手は家の外の人だし、年上だ。


 でも、マルタさんは全く気にすること無く挨拶を返してくれる。

馬鹿にとかされない。


「それで、ご用件というのは……」


「あっ。えぇ」


 話題もすぐに変え、用事を聞いてくれる。

良い人だ。

正直、街ならもっと「私」の噂が広がってて眉を顰められたりするかとちょっぴり思ってた。


 むしろ対応は真逆だ。

ギルバートの、アイゼンハルト辺境伯の夫人としてちゃんと扱ってくれている。

なら、遠慮することは無いだろう。

存分に頼らせてもらう。


「実はその……」


 そう思ってすぐ詰まる。

マルタさんにどこまで精霊の事って言っていいんだろう?あまり濁して伝えても、目的に沿った服を作って、あるいは紹介してもらえない気がする。

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