2章プロローグ②
「この子のお世話をする時の服が欲しくて」
「あぁ。なるほど」
欲しいのは、お世話用の服だ。
ドレスでもまぁいいっちゃいいんだけど流石にちょっと動きづらいからね。
例えば侍女さんたちが着ているようなものが欲しい。
それでいて辺境伯夫人が来ていても大丈夫そうなのがいいかな。
それに高~い服を汚したりしたら怖い。
気にしすぎて色々支障が出そうだし。
せっかく動物ちゃんたちに触れるんだから、そんな心配しなくてもいいようにしたい。
「あとは他にも雑貨とか色々」
「いいですね」
また、お礼してもらえるなら、他にもあったら喜んでくれそうな物を探したかった。
広い部屋の一角に寝床兼居場所として使える場所を作ってはいるんだけど、たくさん遊び場も欲しい。
というかスペースが余りに余ってるので、なんなら部屋中に作ったっていいのだ。
「精霊の盟友」だから、放し飼いにしても襲ってくる心配がないので。
本当ならケージに入れないとなんだけどね。
ありがとう異世界。
これで彼女が遊んでる姿をたくさん、間近で見られます。
「それと、なのですが……」
「えぇなんでしょう。まだなんでも仰ってください」
あともう一つ思う事があった。
こうして休憩をとるようにこそなったが、ギルバートはまだまだ疲れているように見える。
実際この時間だって紅茶一杯分ほどでしかない。
足りているようには到底感じられなかった。
だから、もっと息抜きできる時間が必要な気がする。
少なくとも仕事から離れて、もっと何か一息つけるような時間が。
「買い物には私が直接向かおうと思っています。オロバリス様からマルガレーテの暮らし方について聞いたのは私なので」
「なるほど」
「それで……。もしよろしければ、ギルバート様が街を案内してくれませんか?」
「ふむ?」
私はそうして、買い物に付いてきてもらうことを考えついた。
彼の現在の仕事は書類仕事、つまりデスクワークが大半らしいので、相当神経をすり減らしているはずだ。
外出すれば体は多少疲れるかもしれないけど、精神的にはだいぶ休まるんじゃないだろうか。
それに愛する領民たちと会えば、彼はもっと癒されてくれるかもしれない。
先日精霊の森へ往復した道中、私たちの馬車へ向かって人々が笑顔で手を振る光景にたくさん出会った。
そんな彼らの様子を目にすればきっと、心が回復することだろう。
聞くところによるともうしばらく屋敷から出ていないようだから、猶更。
「……何故、私が共に行く必要が?」
しかし、反応は思ったより芳しくなかった。
途端に表情が少し苦々しいものとなる。
理由として思いつくのは、やっぱり父と兄を死なせてしまったことだ。
二人は領民たちとの交流も頻繁に行い、かなり愛されていたらしい。
剣である自分が守れなかったから、恨まれているとでも思っているんじゃなかろうか。
大きな勘違いだ。
だとすればこの前の様子にはならないだろう。
もっと複雑な感情をぶつけられるはず。
「それは……。一度、私たちの姿を領民たちに見てもらう必要があるかと思ったからです。戦争が終わった今、ギルバート様が妻と共に居る所を見れば彼らも安心するでしょう」
「む……」
「それと買い物も一緒に済ませられるとなれば、一石二鳥ではありませんか?」
「なるほど。一理ありますね」
分かってもらうためにも、引かずに反論する。
真面目な彼の事だから、それが領民のためになると分かってもらえれば受けてくれるかもしれない。
……ちょっとズルいかな?でも、こうでもしないと休んでくれそうにないからね。
ちょっとズルいくらいがちょうどいいでしょ。
「もしくは、変装してでも構いません」
「というと?」
「ギルバート様は、しばらく領地へ出ていないと聞いております。なので一度くらいは、とにかく実際に彼らの姿を見に行くのがいいかと思いまして」
「ふむ……」
あとは頑固なところもあるんだけど、意外と押しに弱かったりもするのだ。
負けずに攻め続ければいつか根負けしてくれないかな、と思いつつ言葉を並べ立てる。
若干前のめりになって力説していく。
「分かりました」
「っ!では!」
「えぇ。不肖ながら、私がご案内させて頂きます」
「ふふ。ありがとうございます。光栄です。ギルバート様」
「いえ。こちらこそ」
すると、思ったよりあっさりと折れてくれた。
やっぱり領民さんたちを使っての説得が功を奏したんだろう。
利用しちゃって悪いね。
でも、みなさんの好きな領主様のためだからってことでここはひとつ。
これが彼のトラウマ克服の第一歩になったりしないかな。
なってくれるといいな。
これをきっかけにして、例えばカタリナ様やヒルデガルド様、何よりトルニトルスくんとの関係も元に戻ってくれればいいんだけど。
というわけで私は、超絶イケメンのギルバートとデートすることになったのでした。
前世じゃそんなこと、全く縁が無かったのに。
この時は関係改善とか過労防止とかに必死でそんなこと頭に無かったんだけどね。




