2章プロローグ
私がアイゼンハルト家に嫁いできてから、1週間ほどが経った。
生活は順調だ。
日々穏やかに過ごせている。
マルガレーテちゃんのお世話にも段々と慣れてきた。
あと、やっぱり貴族の生活は豪華だ。
身支度は侍女さんたちに任せていれば何もしないでも終わる。
着せてもらえるドレスは持ってきたものとこっちにあったもの半々なんだけど、どれもゴージャスで可愛い。
待っていればご飯が出てくるのも最高です。
しかもおいしい。
ただ、そんなダメにされてしまいそうな生活の中で、私は一応仕事と言えるかもしれないことをしていた。
「ふぅ……。セレスティーヌ嬢、政務のためとはいえ、度々お訪ねしてすみません。お邪魔では無いですか?」
「いえ。そんなことありませんわ」
私の部屋へ来るギルバートの相手だ。
正確には休憩と称してマルガレーテちゃんと交流しにくる彼を、ただ迎え入れることだった。
喋るのはプラスアルファに過ぎない。
どうやら以前彼女と触れ合った日、以降の仕事が格段に早く終わったそうだ。
だから効率化を図るため、1日に1度、政務の合間にこの時間がとられていた。
本当はマルガレーテちゃんとただ会いたいだけかもしれないけど。
どうやら旦那様は、相当動物好きみたいだ。
もしかしたら私よりも。いや、負けないけどね!
「それに私は、一応あなたの妻ですから、存分に頼って頂いて構いません。この家にとっても良くしてもらってもいますしね」
「そう言って頂けると助かります」
とはいえ、これが仕事と言えるかはやっぱり怪しい。
だって、楽しすぎる。
まず上司が非常に優しい。
こうして休憩を取るようになったとはいえ、彼はまだ慢性的に疲れ気味のようだ。
でも、それで苛立ったりはしない。
むしろアニマルセラピーみたいな効果があるのか、とっても穏やかに接してくれる。
好意的でなんだか甘い笑顔を向けてくれる。
美青年と動物が触れ合っている姿も眼福だ。
マルガレーテちゃんは早くも旦那様にベタ慣れで、率先して手に巻き付いていく。
大きな手でうねり、ぶらさがり、遊ぶ。
そして双方じっと見つめ合う。
たまに顔を寄せあったりとかしてる。
するとギルバートは緩んだ優しい微笑みを浮かべるのだ。
なんだかとても尊いものを見ている気分。画家を呼んで!
「とはいえ、何かお礼をしなければと考えています」
「へっ?じゃ、じゃあっ……」
お礼と聞いて咄嗟に思っていたことを口にしかけるが、すんでのところで止めた。
流石にそれは、ちょっと怖がられそうじゃないか?お礼って何か買おうかってことだろうし。
あとそうだ。
描き上がるまでに多分相当な時間を取らせちゃうからね。
疲れさせちゃダメだよね。
いくらこの瞬間を永遠に保存したいとはいえ。
「あぁいえ、なんでもありません」
「……?そうですか?遠慮せずとも大丈夫ですよ。貴女と彼女のおかげで、随分政務が進むようになりましたから」
「そんなに、なのですか?」
「えぇ。それこそお礼しなければと考えるぐらいには。それに、こちらへ嫁いできてからあまりお金を使っていないと聞いています」
「……えぇ、まぁ、そうですね」
ただ、彼の態度からは相当な感謝が伝わってきた。
それこそ絵ぐらい描かせてもらえそうなほどに。
やっぱり相当動物好きだなこの人。
あと仕事が進んで嬉しいってことは、家族とか領民も同じくらい大好きだったり?愛情深くて素敵だ。
眩しいね。
でもなぁ……。正直気が引ける。
だって前世の金銭感覚が抜けてないから。
今身に着けてるドレスとかジュエリーとか、一体いくらするんだろう。
すごく綺麗で感動は感動なんだけど、同時に怖い。
あと今あるもので結構満足なんだよね。
というか、汚したり壊さないようにかなり気を付けちゃうぐらい。
むしろ安い服が恋しいとすら思う。
「む、もしや体調でも優れないのですか……?」
「あぁいえっ。元気、元気です!とっても!毎日マルガレーテと触れ合えて、お世話させてもらっていますからね!」
「なるほど。それなら確かに、体調を崩すなどありえませんね」
「あはは……。はい」
好きにマルガレーテちゃんと触れ合えて、たまにトルニトルスくんが訪ねてきてくれもする。
不満は全然ない。
それどころか私のぶんを彼らに使って欲しいぐらい……って。
「ん……?」
「もしや、何か思いつきましたか?」
「はい」
そこまで考えて、買いたいものが決まった。
(やっぱり毎日ちょこちょこ更新していこうと思います。また、投稿時間も色々試し中です。ただ平日は朝、土日祝は夜という感じの予定となっております)




