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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
1章

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精霊の愛し子④

「……へ?」


 啖呵を切る私に、長老様は大口を開ける。

どうやら笑っているみたい。

これってキレる前に笑うやつですか?

爬虫類は確かに可愛いんだけど、見ているとどことなく本能的な恐怖を覚えないでもない。

口内に生えそろった鋭い歯たちも相まって、ちょっと身体が固まる。


『ふむ。お主、セレスティーヌと言ったな?』


「は、はいっ」


『では、お主に預けたい者がいる』


 しかし、単に面白かっただけらしい。

やがて口を閉じると口角が上がっており、先ほどのような優しい顔が向けられた。

途端に緊張も解れる。

命を狙われていないと直感できたからだろう。


「え、わっ。わっ」


 気づけば、足元へ小さな蛇が這ってきていた。

アルビノらしき真っ白な、恐らくコーンスネークだろうか。

原作では見たことが無い。

屈み、手を近づければ巻き付いてくる。

緩く手首ぐらいまで簀巻きにされた。

嬉しい。大体全長50センチぐらいはある。

太さは指一本分ぐらいだ。


「か、かわいい……」


 オロバリス様と同じく目がくりくりとしておりとても愛らしい。

半透明の赤色が神秘的でもあって、体色と合わさればまさしく神の使いという雰囲気だった。

じっとこちらを見つめてくる視線もどこか知性を帯びている。


 あと、念願のつるつるだ。

仄かにひんやりもしていて、触れると非常に気持ちいい。

常に微かな身じろぎをしていて擦れるのもたまらない。

やっぱり生きてるんだと実感もする。


『その娘、マルガレーテは、我ら精霊とは違う。つまり普通の動物でな。だからお主が従わせることはできない』


「そうなのですね」


『うむ。しかしここで生まれ育ったため魔力には敏感だ。そして、我の「精霊の盟友」でもある。精霊の盟友とは――』


 そしてさらに、彼女、マルガレーテちゃんはなんと精霊ではなく「精霊の盟友」となった動物らしい。

それは、精霊と絆を結ぶことで彼らの力を一部借り受けたり、繋がりを持つことができる存在のことだ。

ギルバートもトルニトルスくんの盟友となれたことで、強大なセレスを打ち破るに至った。


 だとすると、もう普通の蛇、コーンスネークとは別物だと考えてもいいかもしれない。

本来爬虫類は人に懐く事すらしないそうだ。

人に慣れてもらうのがせいぜいで、ご飯を手で直接食べてもらったり触ってもらったりするのにも結構な時間が必要だと聞く。


 しかしこの子は出会った瞬間から私に巻き付いてきた。

さながらトルニトルスくんのようにじっとこちらを見つめさえしている。

恐らく本来の蛇ちゃんと違い、お腹が空いているならご飯をあげても食べてくれるだろう。


『それ故、その子の目を通して我はお主を監視することができる。そして、我から指示を出すこともな』


「……」


『そのため、お主がもし何か良からぬことを企んだらその時は……』


「……はい」


 同時に動物ではあって私の力は効かないだろうから、監視にもぴったりというわけですね。

テレパシーに応じて口を開き、威嚇してくる。

自分が何をするべきか、長老から何を命じられたか理解しているのだろう。

歯は筋肉に隠れて見えないから、怖いというより可愛いけど。


 ただ人ひとりどうにかする魔力は感じる。

ともあれこうして保険になってくれる存在がいるなら、より安心できた。

これで私が暴走したところで、誰かを傷つける可能性は低くなったと言っていいだろう。


『そして実は、その子は次の長老にしようとも思っていてな』


「へっ」


『だからぜひ、外の世界というものを見せてやって欲しいのだ。そして、人間とは何か、自分とは何かを学ばせてやって欲しい』


「え」


『それと、しっかり世話をしてやるように頼む。その子に適した環境は後で教えよう』


「……はい」


 ……でも、食事やうんちなどいくつかお世話しなくていい部分がある精霊ちゃんでないということはつまり、私がしっかりお世話しなければならないということだ。

しかも次期長老らしい。


 って、すごく責任重大じゃないですか?私が精霊の森の未来を担っていると言っても過言ではないかもしれない。

まだアイゼンハルト家に嫁いで二日目なのに。

動物ちゃんのお世話なんてしたことないのに!


『なに、心配するな。もしお主が上手く世話できぬようならその時は……』


「その時は……?」


『また我らの所に戻るだけだ。仮にも次期長老。むざむざ不幸になどせんよ』


「あっ、なるほど……」


『まぁ、それ以降お主と我らが関わることは無いだろうがな。はっはっはっ』


「……はい」


 一応ダメだったらダメで帰っていくらしい。

しかし、そうなったらもう私は精霊ちゃんたちと交流できないようだ。


『また、ヒルデガルドよ』


「はい」


『良ければだが、彼女に手を貸してやって欲しい。そなたの家で、その子が健やかに住めるよう、な』


「かしこまりました。微力ながら、お力添えさせて頂きます」


『うむ』


「……」


 あれよあれよといううちに話は進んでいく。

啖呵を切った手前、今更荷が重いとも言いづらい。


 マルガレーテちゃんも、よろしくね、あるいは「お前逃がさないからな」とばかりにこちらを見つめ続けている。

もちろんぱっちりおめめがめちゃくちゃ可愛いんだけど、大丈夫かな。

果たして飼育初心者の私に何とかできるだろうか。


 ……とはいえ、お願いされたのだからもうやるしかない。

っていうかミスったら今世でもエキゾチックアニマルちゃんを愛でられないわけだし!

覚悟を決めて、彼女を幸せにすることしかもう私にはできないのだ。

だから、くよくよするのはもう一旦やめる!そして精一杯頑張る!幸い時間とお金はあるわけだからね。


 それにやっぱり、マルガレーテちゃんはとっても美人さんで愛らしかった。

この子のお世話をさせて貰えると思ったら、段々とウキウキしてきた。


 よ~しやるぞ!えいえいお~!


 ……でも、とはいえイベント起きすぎじゃないですか?ちょっと疲れたので、また帰ったらお風呂にしよっと。

侍女さんたちの特上スパ付きで。


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