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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
1章

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精霊の愛し子③

「ふむ」


『もちろん、例えばそれで言う事を全て聞いてやりたい、とかはならぬがな。せいぜい聞くのもやぶさかではない、という程度だ。お主らで言う所の、人から好かれやすい人間のようなもの、と我はいつも説明しておる。纏う雰囲気がそうさせるのだな』


「なるほど」


 優しい声色で説明が始まる。


 でも、改めて影響を受ける側から聞くとやっぱり悩んだ。

この力ってズルいし、ちょっと怖くもある。

精霊たちの心を捻じ曲げているみたいだからだ。

なんなら悪影響を与えてしまうから、どこか遠くに居た方がいいのでは?とも考えてしまう。


『とはいえ、拒否したいと思えば拒否できる。何か不快な事をされれば嫌悪もする。ただなんとなく、共に居ると普通よりいくらか心地よいというだけだ。長年連れ添った……。例えばヒルデガルド』


「はい」


『お主とトルニトルスの仲には及ばんだろうな。そして、既に出来上がっている関係を壊すようなものではない』


「チガウッ!」


「ふふ。えぇ。ありがとうトール」


 ただ、どうやら思っていたほど万能な力ではないらしかった。

確かにと、気を揉んでいたからか思い出せなかった記憶が蘇ってくる。


 乙女ゲームの例に漏れず、「きみたて」には複数のエンディングがあった。

中には、所謂バッドエンドとされるものもだ。

そしてその一つが、増長した選択肢を選び過ぎたことにより精霊たちから見放される「傲慢エンド」である。

これによって、主人公が行う勝手は明確に咎められていた。

精霊の愛し子であっても非道は許されない、と戒めるように。


「ん……?」


『だからそこまで思い悩む必要は無いぞ。セレスティーヌ』


「へっ!?な、わ、私!?口に出てました!?それとも、オロバリス様は心が読めるとか……?」


『ふふ。心を読めるわけではない。だがこれまで、そう思う者が居なかったわけではなくてな。だから念のため言わせて貰った』


 その事を、オロバリス様は私を気遣って言ってくれたらしい。


 ……め、メロすぎる。

念のためって態度も最高です。

だからみんなから好かれてるんだよねこの方。

あわよくば一緒に暮らせないかな。

流石にこの巨体だと大変か。

ならやっぱり定期的にここへ来よう。

暇つぶしの相手になろう。


『ただ、どうやらそなたのそれは今までの者たちとは少し違うようだな』


「……」


『我らから好かれやすいだけでなく、その気になれば従わせることもできるだろう。意志に反することをやらせるのだってあるいは、な』


「なっ……」


「そう、なのですね」


 メロがっていると、唐突に一段声のトーンが下がる。

空気も変わる。

やはりセレスが持つ力は、原作主人公より強いらしい。

だから、彼女とは違い非道が許されてしまったのだろう。


 ただ、補足として告げられた言葉でまた一つ記憶が蘇る。


『先ほど言ったのと変わらず、恐らくヒルデガルドとトルニトルスのように深い仲であれば支配から解き放つこともできようがな』


「っ!」


 トルニトルスくんは、最初こそセレスの力の支配下にあった。

でも原作主人公の力をきっかけに、何よりギルバートとの思い出や既に育んでいた絆によって、やがては支配を脱し、彼女を討伐するため共に戦うこととなるのだ。


 というか主人公は、父と兄の事もあり嫌われていると思い込んでいたギルバートへ向き合うことを勧めたに過ぎない。

彼女の力は勇気を出すための言い訳でしかなかった。


 そして本心から呼びかけると、ついには支配を断ち切ることができたのだ。

力はどうあれそうすればよかったと、後に他でもないトルニトルスくん自身の口から語られている。


 しかも、それからはセレスの力だって効かなくなった。

つまり強制力はとても高いというわけではない。

もちろんそれだけの絆を作り上げなきゃいけないんだろうけどね。


『それを聞いて、お主はどうする?』


「……私は――」


 だから、いくら大層な名前がついているとはいえその程度なのだ。

あまり強く気を揉む必要は無いのかもしれない。

悪用しないと心に決め、気を付けてさえいれば。


「絶対にこの力を悪用しないと誓います」


『ふむ……』


「そして、もしその証明が欲しいというのならいくらでもおっしゃってください。そう言うだけじゃ信じられないことは、分かっているつもりです」


 だが、それだけでは不十分だと思った。

こんな力を持つ自分が、もし何かの間違いで原作みたいになってしまったら。

想像するだけで鳥肌が立つ。


 だから、歯止めとなるものが必要だという気がする。

前々からそう考えていた。

そして、長老様ならその方法を持っているかもしれない。


「お互いが安心して暮らしていくために、何も気にせず私に、例えば何か枷をつけてくださればと思います」


 真っすぐに目を見て告げる。


 正直、怖くはあった。

背中を冷たい汗が伝っていくほどだ。

相手は簡単に自分を丸呑みできてしまいそうなのだから猶更。

こんなことをせずとも、せっかく前世頑張ったんだし滅茶苦茶しちゃおうか。

どうせ、ゲームの中の世界だし、と少しも思わなかったわけではない。


 でも、やっぱり私はこの世界が、「きみたて」の世界が大好きなのだ。

精霊ちゃんたちだけでなく、登場人物たちも。

自分という存在によって、セレスティーヌによって壊されなかった未来が、せっかく転生したのだから見てみたい。


『ふふ。ふははっ。そうか。そうかっ』


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