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ラスボス令嬢はエキゾチックアニマルと女嫌いの辺境伯様に溺愛される~今世ではもふもふつるざらに囲まれます~  作者: 田中飛鳥
1章

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精霊の愛し子②

 そこから少し歩けば、段々と精霊の森中心地にあるらしい一本の巨木が見えてくる。

長老が居るのはその根元、大きなウロの中だ。

重たくて動きづらいドレスで何とか移動すると、ようやくたどり着く。

中に入れるのはアイゼンハルト家のみということで、私とヒルデガルド様、あとトルニトルスくんだけが入る。


『おぉ。よく来たな、ヒルデガルド。それにトルニトルス』


「はい。ご無沙汰しております。オロバリス様」


「オロバリス様。ゴキゲンヨウッ」


『うむ。そしてそなたもだ。精霊の愛し子よ』


 そうして私たちは精霊の森の長老、艶やかな緑色の、胴体の直径が成人女性一人分ぐらいはありそうな大きい大きい蛇と対面した。


 ……いや、実際に見ると本当に大きいな。

元となっているのは確かアオダイショウだっただろうか。

少し気圧されるものの、よく見れば意外と目がぱっちりしていて可愛らしい。

度々舌を出して振り回すのもキュートだ。

あと、ぬるりとした質感の体表がなんとなくセクシーである。

正直触りたい。見るからにつるつるだし。


「へ、は、はい。はじめ、まして?」


『あぁ。出会えたことを嬉しく思うぞ』


「……えぇ。私も、お会いできて光栄です」


 そんな存在が、テレパシーのような魔法で語りかけてくる。

脳内に直接、人のモノと言われても信じられるほど流暢な発音が響く。

なんだか慣れない感覚で思わず驚いてしまった。

でも、低くて渋くてすっごくいいお声だ。

原作ではほぼエピローグぐらいでしか出てこないのだが、そのお声からファンが多かった。

そんな美声に反して可愛げたっぷりに描かれているギャップも相まって。


『実は近く使いを出そうと思っていたのだが、まさかそちらから来てくれるとはな。感謝する』


「へ?」


「使い、とは?」


『あぁ。その者は先ほども言った通り「精霊の愛し子」でな。その力がここからでも感じられたよ。だから一度会って話をするべきだと思ったのだ』


「なるほど」


 彼(?)の言葉で気づく。

きっと原作でセレスがここへ来たのは、その「使い」のおかげだろう。

アイゼンハルト家で紆余曲折あり冷遇されていた彼女は、長老から呼ばれたことでここへ辿り着いた。


 そしてその後自らの力を理解し、行使し、密かに精霊の森やアイゼンハルト領を手中に収めたのだろう。

セレスが王都を攻め始める前からギルバートは被害に遭っていたと語られていた。

でも、想像以上に行動は早かったらしい。


『しかしよもやそれが、ヒルデガルド、お主と共に来るとは思わなんだ』


「……そういえば」


『む?』


「申し訳ございませんオロバリス様。彼女の紹介を忘れていました。こちらは私たちアイゼンハルト家に嫁いできた、セレスティーヌ・フォン・ローゼンバーグという者です」


「よろしくお願い致します」


 しかし、今回はそうならなかった。

私は今、ヒルデガルド様に連れられてここへと辿り着いている。

なんなら彼女から紹介までしてもらっている。


 これで分かった。恐らくだけど、原作のストーリーは変えられるのだろう。

つまり私がこのまま平和に暮らせば、精霊ちゃんたちやこの国の人々、何よりアイゼンハルト家は、少なくともセレスによって不幸へ突き落されることは無い。


 もしかしたらこれから何か、所謂「強制力」みたいなのが働く可能性はあるけどね。

でも、当面は大丈夫なんじゃないだろうか。

少し感動を覚えつつ、お辞儀をする。


『ほぉ……。ということはギルバートの?』


「えぇ。……しかし息子は先の戦いの後処理によって忙しく、今回は彼女だけの訪問となってしまった事をお詫びします」


『よいよい。話は聞いておるぞ。あやつは元気でやっているか?』


「……はい」


『ふむ。まぁ、我が会いたがっていたと伝えてくれ。そして、夫婦で挨拶に来るのはいつでもいいともな』


 ただ少し、そうなってくるとギルバートについてある考えがよぎる。

彼は既に、少し前の戦争で不幸を経験している。

その傷が癒されるのは、本来ヒロインに出会ってからだ。

これまでとこれからのことが一緒に、3年後ようやく癒される。


 しかしこのまま私が平和に暮らし続けると、もしかしたらあの子と出会うきっかけは無いんじゃないだろうか。

だとしたら誰がギルバートの傷を癒せるのだろうか。


 そしてその責任はもしかすると、運命を変えた私にあると、言えなくもないんじゃないか。

もちろん原作の方の私が何かしたからまた運命が変わった、例えば家族によって癒されるはずだった傷が癒されなくなったという可能性もあるけど。


「それでオロバリス様。その、精霊の愛し子というのは?」


『あぁ、うむ。そうだったな。先にそれを説明すべきであった。いやなに、長く生きているとはいえ我も会うのは久々でな。少し舞い上がってしまったようだ』


 気になりながらも、私と会ってテンションが上がっちゃってるオロバリス様の可愛さにやられる。

視線の先の大蛇はどこか口角を上げてるみたいに見えた。目も笑ってる気がする。

この方はこういうお茶目な部分があるんだよね。

実は基本ずっとここに居るから暇、とかってあるのかな。

定期的に会いに来たら喜んでくれたりするかもしれない。


『精霊の愛し子というのは、時折人の間に生まれる者でな。その者を前にすると我らは、どうにも好意を覚えてしまうのだ』

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