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【コミカライズ】【電子書籍化】【ゲーム化】左遷された悪役令嬢、前世がvtuberだったので田舎でスローライフします〜婚約破棄×パーティ追放×左遷ですが、めげずにざまぁします〜  作者: ムポゥ神父
三章 乙女ゲームのヒロインに転生したけど、悪役令嬢が不在なせいでイベントが起きません!〜魔王討伐譚〜

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兄と妹


「ここは100年前の勇者パーティ2人のペアと魔王と勇者のペアに分断した方が綺麗じゃなくて?」


レオンは答えず、ただ彼女の瞳を見つめる。

その奥に、戦意とは別の“何か”が渦巻いているのを感じた。


「君……泣いてるのか」

「は?なにを……」

「何十年、何百年、ずっと泣いてるんだろ?」

「泣いてないっ!」


マーサは叫ぶ。だが頬を伝う一筋の涙が、彼女自身を裏切る。

レオンはゆっくりと一歩踏み出した。マーサは反射的に魔力を構えるが、レオンは剣を投げ捨てるように床へ落とした。金属音が響く。


「戦う気はない。君を殺す理由も、殺したい理由も……俺にはない」

「私は魔王の娘よ。あなたの敵でしょう」


マーサは自嘲気味に笑う。その笑みは、どこか壊れかけていた。レオンは首を振る。


「敵かどうかなんて、今はどうでもいい。君は……ずっと誰かを探してる顔をしていた」


——僕もずっと父親を探していたから。今も探しているから、分かる。

マーサの表情が凍る。


「……どうして、それを」

「さっき戦ってる間、ずっと感じてた。 君の攻撃は鋭いのに、どこか“迷ってる”。誰かを失った動きだ」


マーサの魔力が揺らぎ、指先から光が消える。


「私は……兄を探してる。数百年も。でも、見つからない。見つけられないのは、私が弱いから……」


声が途切れ、膝が崩れそうになる。レオンは慌てて駆け寄り、倒れ込む彼女を支えた。


「弱い? 違う」


レオンは静かに言う。


「数百年も探し続けられる人間が、弱いわけない」


マーサの瞳が揺れる。

その言葉は、彼女がずっと欲しかったものだった。


「でも……私はもう、どうしたらいいの……?兄を探して世界中を旅した。身を焦がしながら聖女の真似事をして神聖魔術まで会得した……でも、だめだった……」

「なら、俺が一緒に探す」


レオンは迷いなく言った。


「君が兄さんを見つけるまで、俺が隣にいる。戦うためじゃない。君が……ひとりで泣かなくていいように」


マーサは息を呑む。その胸の奥で、長い間凍りついていた何かが、音を立てて溶けていく。


「どうして……そこまで……」


レオンは少しだけ笑った。


「さっきまで戦ってた相手が、こんな顔で泣いてたら……放っておけるわけないだろ」


マーサは初めて、戦いの中では見せなかった表情をした。それは、救われたいと願う、人間の顔だった。


「……レオン。私を……助けてくれるの?」

「助けるよ。君が望むなら、何度でも」


その瞬間、マーサの魔力は完全に消えた。

戦いは終わり、彼女の心は初めて“救われる方”へと傾いた。


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