"国家"VS"世界"
「オマエが何者か知らないけど、ボクの邪魔をするなら消えてもらうよ」
分陰、夥しい数の魔法が飛んでくる。コギトエルゴスムの効果で無傷とはいえ、問題は誰がそれを放ったかだ。その答えは、宮廷魔術師全員だった。——もちろん、ザレンを除く、だが。
「君の無敵にも制約があるんだろう?」
強力な能力には悉くそれが付きまとう。能力を数千、数万、数億年も前から陶冶してきたジュリニールがそれを知らないはずがなかった。
「それだけじゃないよ」
気づいている。なんらかの認識阻害により気づかなかったが、家の周囲には王国騎士団が戦闘体制をとって構えていた。
「国の中枢には君の思っている以上にフローレの血が紛れているんだよ……ボクはそれを操る。——つまり」
「君の敵は国家だ」
いくら上位存在とはいえ、国家、それも大国である王国相手では分が悪い。——無論、吾以外であればの話である。
「コギトエルゴスム」
その二つ目の効果。自己と他者の境界を定めることが出来るのならば、定めないこともできる。それを利用した自己増殖。
兵士達が、"吾"になっていく。
動物も、植物も、自然も、被造物でさえも。"吾"に塗りつぶされていく。
「吾の敵は"国家"だと云うのならば……其の敵は"世界"だ」
黒幕が、初めてその張り付いた洪笑を崩した。




