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真夜中のただなか  作者: 藍沢紗夜


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本の話 2021/3/20

 小学生の頃、図書館で何冊か本を借りて、それを家で貪るように読むのが好きだった。

 ほとんど毎日本を読んでいたし、ランドセルには常に一、二冊の文庫本が入っていた。図書室の本を制覇する野望まであった(結局、それは叶うことがなかったけれど)。

 一番本を読むのを楽しめていたのは、この頃だった。あのくらいの熱量で本が読めたら、どんなに幸せかなと考える。


 中学に上がってから、本を読むことで勉強に集中できなくなってしまうこともあり、貪るほど読むことは出来なくなった。

 それでも読書は好きだったし、この頃読んだ本は私の一番、核の部分に食い込んでいる。この頃になると同じ本を大切に繰り返し読むことも多かったように思う。それが私の小説にも影響を与えているかもしれない。


 高校に入ると、勉強に集中するため、自ら規制を課した。好きなシリーズと作家さん以外の本は、基本的に読まないように決めたのだ。

 しかし、そうしているうちに私は体調を崩し始め、高三になると文章が全く頭に入らない状態になった。


 地獄だった。もともと活字中毒で、勉強でそれを補っていたのに、その勉強も手につかなくなり、文章自体がまるで学び始めの外国語みたいに難しく、読もうとすれば頭に鈍い痛みが走る。

 理解できていたはずの教科書の文も、読み慣れていた本も、そのどれもが私から背を向け、頑なに心を閉ざしてしまったようだった。


 幸い、私には書く趣味があった。自分の頭の中の言葉を放出する分には、さほど負担がかからないらしく、私はこの頃から物書きにのめり込むようになった。自分の言葉だけが、自分の心を満たしてくれた。


 そこから本が多少読めるようになるまで、一年程度はかかったように思う。読めると言っても、易しい内容の作品だけで、それも一気に読むことは困難だった。それに、私はまた本が読めなくなるかもしれない、という恐怖でなかなか本に手をつけられなかった。本当は溺れるようにたくさんの本を、何遍も読みたいのに。


 読めない状態になってから三年ほどが過ぎた。未だにその恐怖は克服できていないし、本を読み始めるときは気道が締め付けられるような緊張に囚われる感覚もする。それでも、少しずつ回復しているのは感じている。調子さえ良ければ、小説一冊を一度に読んでしまえるようになったし、小説だけでなく参考書も、休み休みなら読めるようになった。

 読むのがこんなに苦しいのに、それでも本を読みたい、読み続けていたい、と心は叫び続ける。だから私は本を読む。いつかまた、純粋に本を楽しめる日が来るのだと信じながら。

2021/3/20にnoteにて公開したエッセイです。

ちなみに今は、健常だった頃までは戻っていませんが、気負わず日常的に読めるようになりました。

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