第6話 貯金額を確認する彼女の最適化
「付き合って、まだ間もないんですけど」
男性は少し困ったように言った。
「結婚相談所で出会って、デートは三回目で」
「三回」
「はい。彼女、二歳年上なんですけど、見た目も好みで、すごく話しやすくて」
「そんなに言わなくていいでしょ」
女性が軽く笑う。
「ちゃんと気にかけてくれるし、いい人なんです」
「……うん」
男性は頷くが、少しだけ言葉を濁す。
「ただ、その……貯金額を、結構具体的に聞かれて」
「将来のこと考えたら、普通じゃない?」
「まあ、それはそうなんだけど」
「記録を開始します」
「ほんとに容赦ないね」
「関係性:初期選別段階。女性個体は経済的指標を確認しています」
「選別って言った?」
「婚姻前評価プロセスと一致します」
「言い方」
「男性個体は評価対象となっています」
「……対象って」
「解決策を提示します」
「はい」
「情報の開示範囲を制御してください」
「制御?」
「具体的な数値ではなく、傾向で回答します」
「傾向?」
「例:
・安定して貯蓄している
・大きな負債はない」
「ぼかすってこと?」
「情報非対称性を維持します」
「なんか嫌な言い方」
「補足:別解を提示します」
「なにそれ」
「完全開示」
「え」
「全資産、収入、将来予測を提示してください」
「いやいや」
「相手の評価精度は最大化されます」
「それ、こっちが査定されてるだけじゃない?」
「その通りです」
「開き直った」
女性が少し首を傾げる。
「でもさ、ちゃんと知っておきたいのは普通だよ?」
「……うん」
「結婚考えるなら、なおさら」
「……」
「補足」
「まだあるの?」
「女性個体の行動は合理的です」
「……」
「長期的関係において、経済的安定性は重要な指標です」
短い沈黙。
「……それでさ」
男性が少しだけ笑う。
「俺のこと、どう見てる?」
「……」
女性は少しだけ考えて、
「ちゃんとしてる人、かな」
「それだけ?」
「……それだけじゃないよ」
少しだけ視線を逸らす。
「それは非定量的です」
「いいの」




