第7話 元カノの痕跡が残る彼氏の最適化
「記念日の行き先が、元カノと行った場所で」
女性は淡々とそう言った。
「……それ、あとから知って」
隣の男性が、気まずそうに視線を逸らす。
「いや、悪気はなかったんだよ。普通にいい店だったから」
「……うん」
「でもさ、知らなかっただけで」
「記録を開始します」
「タイミング最悪」
「関係性:交際中。女性個体は過去関係との重複に不快感を示しています」
「重複って言うな」
「男性個体は悪意なしに選択しています」
「それが問題なんだけど」
「補足:女性個体は“特別性”の毀損を認識しています」
女性が小さく息を吐く。
「記念日って、特別であってほしかったから」
「……」
「そこに、誰かの痕跡があるの、ちょっと嫌で」
「……ごめん」
短い沈黙。
「解決策を提示します」
「はい」
「過去の情報を完全に排除してください」
「排除?」
「記憶の共有を禁止します」
「それ無理でしょ」
「または」
「また?」
「過去を含めて再定義してください」
「再定義?」
「当該場所を“新しい記念の場所”として上書きします」
「……」
「履歴は変えられませんが、意味は変更可能です」
「それで納得できる?」
「個体差があります」
「逃げた」
「補足」
「まだあるの?」
「男性個体の選択基準は合理的です」
「……え?」
「評価済みの場所を再利用することで、失敗確率を低減しています」
「最低」
「効率的です」
「最低」
女性が少しだけ笑う。
「……でもさ」
「うん」
「次は、ちゃんと“初めての場所”にしてほしい」
「……うん。そうする」
「それは非効率です」
「いいの」




